弟は複雑な心境になる
姉様が領にある本宅に帰宅したのを見送り、お父様とお母様と食後のティータイムを過ごしてると、お父様は何やら考え込んでしまい、
「ディラン。今日は疲れたでしょう」
お父様の姿を横目に入れながらのお母様の言葉に
「そうですね。そろそろお暇させていただきます」
言葉の意味を読み取り、フレディを連れ自室へと戻りソファに腰をかけると急に体が重く感じ出し、思わず大きな息を出すと、
「お疲れ様です」
いつの間にか用意したハーブティを差し出され、一口飲むとほんのりとした蜂蜜の甘さの後にハーブ特有の独自の香りが広がった。
「フレディも今日もありがとう。疲れただろう」
正面のソファに座る様に促せば、
「ありがとうございます」
言葉と共に腰をかけ
「今日は思わむ出来事もありましたので、お疲れではございませんか?」
労わりをくれるフレディに
「そうだね。姉様が来てくれた事は嬉しかったけれど」
どうして今日であの時間だったのだろう。
言葉にしかけて、言っても意味のない事だと思い止めれば
「エスメ様が会いたくなった。もしくは、じゃが芋料理を食べて欲しかった。だと思います」
声に出さなかった言葉が伝わったらしく、フレディの返事に
「姉様の事。深いお考えはないだろうね」
なんせ、箒がそこにあったからという理由で跨り、空を飛んだ人だ。
いつもの思い付きだったのだろう。
嬉しそうに後ろから抱き着き名前を読んでくれた姉様を思い出すと、嬉しい反面、方々の前だった恥ずかしさもあり、
「方々には改めてお詫びをしないと」
姉様がマルチダと一緒に屋敷の中に入ったのを見送った後、すぐさまお茶会の席に戻り
「中座をしてしまい、申し訳ございませんでした」
謝りを告げれば、皆朗らかに気にしていないと許してくれた。
ありがたく思うものの、
「そういえば、ディランの領ではじゃが芋の料理が流行っていると聞いたけれど」
殿下の言葉と
「あら。じゃが芋は確か年2回収穫ができる貴重な食材。飢饉対策としても何度も議題に上がった野菜ですわね」
殿下の婚約者となられた令嬢の言葉に、
「はい。自領では料理方を変え定着をさせようと試みているところです」
すんなりと輪に入る事ができ、感謝をし会話をに入ると
「興味があるな」
微笑みながらの殿下の言葉と、
「なんでも、とても美味しいと聞き及んでおりますわ」
同じ様に微笑む殿下の婚約者の言葉と
「不思議な食感になる食べ方もあるのだとか」
「皮付きで蒸し食べるというのも気になるな」
「なんでも芋を洗った時に出た物を使った料理も気になりますね」
次々と告げらる言葉に、
「近々、ご準備させていただきます」
と言うしか無く、
これでお手打ちといった所だろうか。
お茶会の事を改めて思い出し心の中で安堵の息を落とした。
自領から戻り、学園で毎日のように顔を合わせ話をしていれば、自ずと話す事に慣れてくる。
初対面の時よりは緊張もせずに話せる程、互いに気を許せる距離にいるが
お茶会目的は姉様の行動把握だ。
それを考えれば今日のあの時に姉様が来てくれたのは良かったのかもしれない。
少し身長が伸びていたが、姉様本来の明るさと優しさは変わらずあった。
方々の前では恥ずかしいので止めて欲しかったが、姉様が変わらずいてくれて嬉しかった。
「エスメ様は、変わらずお元気そうで良かったですね」
考え事をしてしまい、フレディの声で顔を上げ
「そうだな」
短く返事を返すと
「相変わらずエスメ様はディラン様がお好きな様で安心しました」
揶揄するような雰囲気とおどけた口調に、視線を強めると
「おや。方々の前でしたから恥ずかしかったですか?」
図星で黙っていると
「思春期ですからね。素直に受け止めにくいでしょうねぇ」
さらに揶揄われ、睨むように視線を送れば
「おや?2人きりだったら良かったのに。なんて思ってますか?」
瞬間思い、慌て消し去った気持ちを言い当てられるも、これ以上揶揄われてなるかと
「フレディこそ。そう思っただろう」
反撃のつもり返事を返せば、
「ええ。恐れ多くも思いました」
あっさりと返事が返り、
「ですが、間も無く王都へお見えになりますので、その時にディラン様と共にお話しさせていただけたと思っております」
兄の様な表情で微笑むフレディに、敵うわけがなかったと負けを認め
「そうだな」
返事のみで返した。
間も無く姉様が王都の屋敷に来る。
そうなれば自領へ行く前の日々か戻っ来るのだ。
帰ってしまった姉様を寂しく思うも、これからの事を考えれば重かった体が軽くなり、鬱々としていた心も晴れやかになった。
「ディラン様。エスメ様の手料理は美味しかったですか?」
先程の揶揄う雰囲気がなくなったフレディの言葉に
「ああ。殿下達もご所望だったから次のお茶会にお出しする予定だよ」
嬉しそうにテーブルに並べ説明をしてくれた姉様を思い出していると、
「ディラン様。エスメ様が作った料理のみ食べられてましたね」
告げられた言葉に意味が理解できず首を傾げると
「バスケットからお出しした品だけを食べてらっしゃいましたよ」
フレディの言葉に食事の時の記憶を思い返すも、
「そんな事はないはずだが」
きちんと偏りなく食べていた記憶しかなく否定するも、にっこりと笑うフレディに思わず手で顔を覆うと
「ディラン様はエスメ様の事が本当に大好きなのだと改めて実感いたしました」
微笑ましそうに告げる言葉と
「奥様も気づいておられたご様子でした」
あ、後、我々あの場にいた使用人達もです。
更なる言葉にいた為れなくなり、
頷きたくとも表に出すのは恥ずかしく、
「疲れたので、今日はもう寝る」
フレディの視線から逃げるように告げるしかなかった。
第232話
朝の空気が冷たくなり布団から出にくくなってきました。今年の冬はどうなるのか戦々恐々しております。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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