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姉、弟に会いに行く


いつもの様に朝の勉強に工房の仕事の後ミランダのアパートメントへ行きお喋りなどを楽しみ、夕刻に屋敷へ帰ってきた。


いつもはテアさん達に勉強を教えて貰うのだが、最近は本屋の店主さんから借りた本を元にライ麦とじゃが芋のパンをクックと共に材料の配合を変える作っていた。


何度も作っていたがようやくライ麦の酸っぱさとじゃが芋の甘さとのもっちりとした食感が出せる様になり、試食をしてくれている本屋の店主さんにも頷いてもらえ。


お祖父様、お祖母様にも色よい返事を貰えたので、完成としクックにレシピを渡し時折食事に時に出してもらえる様にお願いをし、自室に戻りベットに潜り込み微睡に身を任せていると、


「ディランやフレディにも食べて貰いたいなぁ」


浮かんだ気持ちに作り持っていく事を決めた。


勿論皆の都合もあるので急には無理で、朝の勉強を終えた後にクックにキッチンを借りたい旨を話し許可を取り、朝の工房の仕事もこなしミランダとミラには用事があり来れない旨を伝える。


帰ってからは、手早く下拵えをし、翌日、工房までの仕事を終えた後、キッチンに駆け込み、パンを焼き、茹でていたじゃが芋を潰しコロッケとポテトサラダを作り、スライスしたじゃが芋はグラタンとチップスを作り、


出来立てを2つのカゴに訳て入れ、ハンサさんが


「何があるか分かりませんので、こちらをご準備いたしました」


そんな言葉と共に用意してくれた乗馬服に着替える、髪を高い位置でまとめ終わると


部屋の真ん中で、両手に籠を持ちディランを思い浮かべる。


ゆっくりとズレてゆく視界、自分の部屋から違う光景が見え愛おしい背中が見えた。


もっと近くで見たいな。


そう思いゆっくりと近づくとぼやけていた背中がはっきりと見える出すと、いてもたっても居られず持っていた籠を落としのも気が付かないほど勢い良く抱きしめ、


「でぃ、だーれだ!」


ディランの頭に両腕で抱き込みながら声をかけると、驚いだのか体を大きく揺らした。


「久しぶりだね、ディラン。会いたかったぁ」


後頭部に頬擦りながら告げていると、視線を感じるのでフレディかと思い顔を上げれば、


ほのかに香る紅茶の匂いに、視界の端には色とりどりのティーフード


円卓を囲むように5人の子供がおり、どの子も1度顔を見た事がある子の中に


「おんなのこ?」


ディランの正面に座る初めてみる女の子に驚き言葉をこぼすと、にっこりと微笑まれ


「可愛い!」


勢い良くでた本音と共に、


「ディラン。とても可愛い女の子がいるわ」


女の子に手を伸ばしかけた所、ディランが急に立ち上がり


「御前、失礼いたします」


慌て身を翻し動き出したので咄嗟に風魔法を発動させ体を宙に浮かせ着いて行くと少し離れた場所で立ち止まり、


「姉様」


後ろに引っ付いている自分を呼び声に、緩めていた腕の力を入れ


「久しぶりだね、ディラン。元気だった?」


後ろから抱きしめ聞けば


「はい。元気に過ごしておりました」


聞き慣れたディランの声に嬉しくなり笑いながらディランを堪能していると


「姉様。お顔を拝見したいです」


小さく呟かれた言葉に、腕を離し正面へと移動をと思ったがフッと思い付いた事に悪戯心が疼き、ディランの両肩に手を置き、飛び跳ねると同時に風魔法を発動させ、ディランを軸に一回転をすれば、


驚いた表情の後に受け止めてくれた様で自分の背中にはディランの両手が回されていた。


両足は地面に着いている物の、ディランの行動と思いやりに嬉しくなり微笑んでいると、重い息が吐き出され


「姉様」


疲れたような声で呼ぶので顔を下に向ければ、数秒目を閉じた後ゆっくりと瞼を開き


「姉様。危険ですので上からではなく歩いて横から来ていただけると嬉しいです」


真剣な表情と少し硬い声で告げられた言葉に


「そうね。気をつけるわ」


頷き、返事を伝えるも、記憶より少し下にあるディランの顔に違和感を感じながらディランの頭に手を伸ばし撫ぜると、恥ずかしそに視線を逸らしながらも受け入れてくれ、思わず抱きしめてしまうと苦しかったのかくぐもった声が聞こえるのでさらに力を込め抱き締めれば


「エスメ様。そろそろ離してあげてください」


聞き慣れたフレディの声に、


「久しぶりね。いくらフレディのお願いだけど、ディランを堪能できてない今は無理だわ」


ディランから視線を離し上にあるフレディの顔を見ると、困ったように眉を下げる表情に腕の力を少し緩めるとあっという間にディランが腕の中から出てしまい、


もう少し堪能したかったのに。


残念に思いながらディランの乱れた髪を治すフレディを見ていると、


「エスメ様、こちらを落とされましたよ」


いつの間にか落としていた2つのカゴをフレディから告げられ、来た目的を思い出す。


「そうだったわ。ディランとフレディに新しく作った料理を食べて貰おうと持ってきたの」


受け取ったカゴの中身を見せると、まだ暖かいようでグラタンとパンからは湯気が立っており、


「沢山持ってきたから、良かったらディランのお友達と食べて」


少し離れた所で楽しそうにしている子達に視線を向けながら伝えば、


「ありがとございます。ですが1度手から離れたものですので僕とフレディでいただきますね」


それもそうだと思い頷く。


本当はもっとディランとフレディと話をしたいけれど、お友達がいるし帰ろうかと思案していれば、視界の端に懐かしい人物か目に入り


「エスメ様」


「久しぶりだね。マルチダ」


近くまで来てくれた自分付きのメイドに挨拶をすると


「お久しゅうございます。身長が伸びましたね」


微笑みながらの言葉に


「本当?なら嬉しいな」


自分では気が付かない変化に気づいてくれた事に嬉しく思っていれば


「奥様から、一緒にお茶をしましょう。と、言付けを預かっております」


マルチダから告げられた言葉に、母の怒りの感情を悟り


「えっと、その。時間はそんなに、ない?から、その、帰ろうかなぁ」


しどろもどろで、口をもごもごと動かし帰る事を伝えるが


「姉様。帰ってしまうのですか?」


ディランの寂しそうな声と言葉に


「帰らないよ!」


瞬時に返事をすも、自分の失態に気づき帰る事を口にする前に


「では、奥様の元へ参りましょう」


マルチダの絶妙な言葉に、返事を取り消すことができなくなり肩の力を落とし返事をすると


「お母様の後で良いので、僕との時間も作っていただけませんか?」


問われた言葉にすぐさま頷き、


「楽しみに待ってるわね」


思い当たる節は無いのでフレディに問う様に視線を送るも苦笑いが返って来たので、何かいけない事をしたのだと覚悟を決めディランの頭をひと撫ぜし勇気を貰い、離れた所にいるディランのお友達に軽く手を振り、いつの間にか2つカゴを持っているマルチダを前にお母様の元へ歩き出した。


第228話


日差しが気持ち良くなってきましたね。外に遊びに行きたくてうずうずしています。


ブッマークや評価、いいねボタンをいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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