姉、噂の真相を知り安堵する
じゃが芋の無限に近い可能性を感じ、前の人生で作った料理を再現していたが、
「もしかして、結構な量を使ってる、かも?」
今日もじゃが芋パンと芋チップスを作ろうと山程あったじゃが芋が半分程になっているのを目の当たりに、お祖母様に謝罪をしに行くと
「保存食にと言いましたが、全部使って貰っても構わないわ」
お祖母様からの意外な言葉に、
「じゃが芋は年2回収穫できるし、種芋は毎年ある一定量を保管しているのよ」
微笑み返事をくれた事に驚くと
「小麦の収穫量はその年によって違うもの。それを補う為に種芋用にじゃが芋の作っているの」
初めて知る知識に頷けば
「その辺りはイルが良く知っているから聞いてみるといいわ」
コロコロと笑うお祖母様の言葉に返事をし、全部の使用許可を貰えたので気兼ねなくじゃが芋を使う事に決め、自室へ向かうとボニーさんに出迎えられ、工房の日報を読み、ディランとフレディに手紙を書き、
「そろそろお時間です」
ボニーさんの言葉に顔を上げ、持っていた羽根ペンを置きいつものように外出用の洋服に着替え、
「行ってきます」
作ったパンが入っている籠を手にボニーさんに見送られ街へと歩き出す。
いつもの様に歩いているものの、昨日の話を思い出し少し早足で歩くも
「あら。おはようございます」
子供を連れたお母さんから挨拶をもらい
「おはようございます」
笑顔で挨拶を返したものの、頬が引き摺っている様な気がし小走りで近くにあった本屋へと心を整えるつもりで入店しると、
接客中だったらしく目を大きく見開き驚いた表情のお客さんと視線だけ向けた店主さんに頭を下げ驚かせてしまったお詫びをし、視界に入らない様に本棚の間へと移動した。
なるべく接客をしている声を聞かない様に注意しながらいつも座る席に腰を下ろし、1番上にあった本を手に取り文字を読んでゆく。
漁師夫婦の話らしく、1日の生活の行動からから始まる文章を読んでゆく。
どの世界にも夜は開け太陽が登り朝がくる。
眠りから起床し身支度を整える。
どうやら寒い地域らしく積雪をしている表現に興味が惹かれ読み進めてゆく。
「あれ?」
目に入った文字を想像し理解してゆくとなんだか馴染みの野菜の名前が書かれており、注意深く読んでゆくと
「ライ麦とじゃが芋のパンのレシピ?」
思わず出た声に慌て手で口を覆うも、改めてもう1度文字を読んでゆくもライ麦とじゃが芋のレシピに覚えるように読み込む。
ライ麦にじゃが芋。
後はパン作りと同じ様にすればいいのね。
あらかた覚えたので本を閉じ顔を上げれば、いつの間にか店主さんが前に座って本を読んでおり
「あの、この本をいただきたいのですか」
遠慮がちに声をかければ、
「売る事はできない」
初めて聞いた言葉に、戸惑い言葉を紡げずにいれば
「貸す事はできる」
告げられた言葉に、聞き間違えでは無いかと思い
「貸していただけるのですか?」
恐る恐る聞き返せば、
「要らない?」
淡々とした声で返された言葉に
「いります!」
淑女としてあるまじき大きな声で告げてしまい、恥ずかしくなり顔を伏せると、
「返してくれるなら持っていっていい」
ポンと軽く頭に手を置かれ、すぐさま離れた手が恋しくて釣られるように顔を上げれば、店主さんの視線は本に戻されており、邪魔をするわけでにはいかず本を読み、
「では、お借りします」
持ってきたじゃが芋パンを置き、汚さないように気をつけ本を借りミランダのアパートメントへ行く為に街を歩くと、
通りすがりに、集まっていたご婦人達に声をかけられ足を止め挨拶をすると、
「新しいじゃが芋の料理はいつ発表ですか?」
「お話ではとても簡単に作れ美味しいと聞いてます」
「子供達がとても楽しみにしているのですよ」
笑いながら雑談のように聞かれた事に、心の中で慄きつつ
「お祖母様におまかせをしておりますので、私からはなんとも」
曖昧に笑い誤魔化すも
「じゃが芋のレシピは特許を取らないと聞いてますが本当ですか?」
問われた言葉に、内心自分も知らない情報に驚きつつ
「小麦が収穫が少ない年にも対応できるようにとお祖父様もお祖母様もお考えですので」
どの世界の主婦は情報が早いのね。
困った様に微笑み返し、
「申し訳ありませんが、約束の時間がありますので」
これ以上聞かれても答える自信が無く、断りを入れると
「ミランダさんの所ですね。いってらっしゃい」
笑顔で見送ってくれ、安堵の息を吐きつつミランダのアパートに着き2人の顔を見た瞬間に大きな息が漏れ
「良かった。みんなの言う通りだった」
こぼれた言葉に2人は察してくれたようで、
「だから言ったでしょ」
呆れたように言うミラの言葉と
「知れて良かったですわね」
微笑ましそうに言ってくれたミランダの言葉に頷き、
「皆、楽しみにしてくれているて言ってくれたからお祖母様にお願いして早く情報解禁してもらう様にお願いするわ」
嬉しそうに話してくれたご婦人達の顔を思い出し、屋敷に帰ったらすぐにお願いすることを決めた。
第227話
朝、寒くなり布団から出にくくなってきました。冬になった時を思うと冬眠したい気分です。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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