姉、秋は食欲の秋
朝夕の寒暖差が出始め、街の街路樹は色付き始め時折服かぜがひんやりとする中、
「採れたてのじゃが芋だよ」
いつもの様に噴水広場の屋台を覗いていると、声を掛けられ足を止めた。
折角なのでと声をかけてくれたじゃが芋を見ると、自分の握り拳よりも大きく
「今年は豊作で質も良いんだ」
どこか自慢げに話す店主さんが微笑ましく思え、
「では、5つください」
夕飯の材料にする為に購入を伝えれば、快活に笑いながら
「とびきり良いじゃが芋を選んでやるよ」
店主さんの厳選したじゃが芋をカゴに入れ、さらに足を進めれば
「出来立てのバターはどうですか?」
再び声をかけられ、先程と同じ様に足を止め眺めれば、
美味しいじゃが芋があるのならば、じゃがバタが食べたいな。
前の人生の記憶で食べた記憶が蘇り、バターも多めに購入すれば少しおまけしてくれ、
「焼きたてのパンだよ」
良い匂いと元気な声に釣られて足を止めるも、昨日買ったライ麦パンが余っており
「ごめんなさい。明日、買いに来るわね」
パンの良い匂いに釣られ買いたくなる衝動を抑えつつ断りを入れれば、
「お待ちしておりますね」
笑いながら返事を返してくれた。
それからも色々な店で声をかけてくれ、購入をしたら断りを入れたりとしながら買い物を終えミランダのアパートメントへ向かい、
「さっき屋台で美味しそうな採れたてジャガイモを買ったのよ」
出迎えを受けた後、ミランダが入れてくれた紅茶をミラと共に飲みながら先程の出来事を話せば、
「もう、収穫が始まっているのですね」
ミランダも微笑みながら返事を返してくれ、
「いつも食べているじゃが芋が、エスメの手にかかると初めて食べる物になるから不思議ね」
ミラの首を傾げながらの言葉に
「ええ。エスメさんの作る料理は見慣れない物もありますがとても美味しくて驚かされますわ」
小さく笑ながらの言葉に、嬉しく思いながらも
「今日も、初めて食べる料理だから楽しみにしていてね」
普段、パンとスープが主食のミラと母国では一流のクックが作ってくれた数多くの食事やティーフードを食べていたミランダとの食事の違いがあるが、
ミラもミランダも同様に喜んでくれるのを見ていると前の人生で作った料理を作って良かったと思うし、
まだまだ食べたい料理があるから頑張ろう。
前の人生はただの主婦で料理人ではなかったけれど、美味しいと言ってくれた家族を信じて作って良かったなぁ。
紅茶を飲みながら思い出し笑いをしていると、
「作る料理は、何か思い出のある料理ですか?」
ミランダの言葉に、意識を戻し、
「見た目がちょっとね」
苦笑いをしながら伝えれば、ミランダもミラも不思議そうに首を傾げるので
「お楽しみという事で」
言葉を濁し会話を切れば、紅茶も飲み終わり雑談を切り上げ勉強の時間へと入っていった。
習った語学は辿々しいながらも長文で話す事ができる様になり、文字は戸惑う事なく書ける様になったので、
国の歴史を改めて覚え直す事になり、
「名前が覚えられない」
年号よりも長い名前が覚えきれず、さらに1世2世と次ぐくとさらに難しく、
「見て読むだけでは覚えられないのでしたら、書いてみてはいかがかしら?」
眉間に皺を寄せ本を睨んでいた自分を見兼ね、ミランダからのアドバイスに
「そうしてみる」
返事を返し、紙と羽ペンにインクを準備し、歴代王の名前を本に記載されている順に書いてゆく。
誤字がない様に気をつけ書いてゆけば、1人だけ女性らしく名前があり
つい動かしていた手を止め、まじまじと見つめていれば、
「こちらのからは唯一の女王ですわね」
自分の行動に気がついてくれたミランダの言葉に顔を上げれば、
「先代の王の時代に国同士の争いが起こり、鎮めた方でもありますわ」
貴族の微笑みと共に告げらた言葉に、改めて名前を見ると、どの歴代の王より名前も短く
「他国の私がお教えするより、学園で学んだ方がよろしいお方ですのでこれ以上は差し控えますわ」
次に聞こえてきた言葉に、何か会った人物なのだと悟り
「分かったわ。ありがとう」
名前だけでも覚えておこうと再び羽ペンを持ち、歴代の王の名前を書き続けた。
その間ミラは刺繍を教えて貰ってる様で、真剣な表情でミランダの指示に従い針と糸を操っており、時折楽しそうに笑い合う声が耳に届いた。
集中していたらしく、
「エスメ。そろそろ終わりそう?」
ミラの言葉に顔を上げれば、室内が少し暗くなっておりランプに火が灯されており、
「もうそんな時間なのね。区切りの良い所で止めるわね」
残り数人まで書けば現王の名前まで書き終え、
「待ってくれてありがとう。すぐに夕食を作りからね」
手早く片付けをし、キッチンに立っていればコナーさんが帰宅し、
「遅くなり申し訳ありません」
すぐさまキッチンに来てくれたが
「お仕事お疲れ様です。今日はライ麦パンと野菜のスープにじゃがバターです」
いつのも様にメニューを告げれば、最後の言葉に不思議そうに首を傾げるので、
「料理という程ではないのですが、じゃが芋を蒸して、バターをたっぷりつけて食べるます」
前の人生でお腹を空かせた子供達がレンジを駆使して作りおやつがわりに食べていたのを思い出し小さく笑っていると、
「それは楽しみですね」
釣られるようにコナーさんも微笑んでくれたので気を良くしじゃが芋を少しの水で蒸し煮をし、十字に刃を入れ、その間にたっぷりのバターを入れる。
「これは、また」
皮付きのままだからか、渋い顔をしたコナーさんに
「大丈夫です。皮は食べません」
笑顔で押し切り食卓に並べると、ミラとミランダは驚きの表情を見せた後、無言で見つめてくるので
「論より証拠よ。まずは食べてみて」
自信満々で強引に押せば、恐る恐る食べる3人の表情はみるみる笑顔になり
「ホクホクとしてとても美味しく。また、バターの塩見がとても合って美味しいですわ」
「本当に。見た目はどうかと思ったのですが美味しく食べれますね」
ミランダとコナーさんの感想を聞きながら、そうだろうと頷きミラを見れば黙々と食べており
口に合ったようで良かったわ。
自分も湯気が出ている熱々のじゃが芋にフォークを入れたっぷりのバターをつけ食べれば、
懐かしくも幸せな気分になり、ライ麦パンとスープで口直しをし何度もじゃがバターを食べてゆく中、
あ!この前のホワイトソースにバターを入れるの忘れてた。
何気なく思い出した事に頭を抱えたくなったが、
次作った時に忘れないようにしよう。
心に誓い、残りのじゃがバターを食べた。
第225話
最後の一言が書きたかったのです。じゃがバターた食べたくなる季節ですね
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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