親友は友を心配し心を砕く
「今日もありがとう。また明日ね」
ミラと手を握り帰るエスメさんを見送りをアパートメント前で見送り、見苦しくない程の速さで自室へ戻り
ダイニングテーブルの椅子へと腰をかければ、紅茶が出され、
「コナー貴方も疲れたでしょう?座りなさい」
母国から一緒に着いてきてくれたコナーは仕事後という事もあり、椅子を薦めれば
「ありがとうございます。では失礼いたします」
遠慮がちに腰をかけて、対面になるも互いに紅茶を一口飲み
「ルイもそうだったけれど、ミラの吸収力は凄いわ」
教えれば教えるほど身につけてゆくミラを思い出し感想を漏らせば、
「興味と好奇心だと思います」
口端を上げ応えるコナーに
「そうね。嫌々だと拒否が強くて身に付かないものね」
誰かの影が頭の中をよぎったけれど気づかない振りをし、
「しかし、エスメさんを学園に行かせるだなんて、どうしてかしらね?」
年齢を考えれば、学園に行き卒業後に自領にくるのが当たり前だが、エスメさんの場合は違う。
適齢年齢になっていても学園には行かず、自領にいる。
かの女王を彷彿させる為に警戒心が強くなるのも分かる。
それでも、公爵家に生まれたのならば貴族籍がなくても年齢が来たら学園に入れるべきだったはず。
「遥か上の指示かと思われます」
コナーの言葉に王族からの指示ではと告げられる、
「そうでしょうね。領主様ご夫妻は大変エスメさんの事を大切に思ってらっしゃる様ですし」
助けられてからほぼ毎日会いに来ている事を許しているもの、街の屋台で買い物をさせるのもお考えあっての事だろうと思い、頬に手をつきながら息を落とせば、
「領民もエスメさんの評判は非常に良いですし、時折職場でエスメさんのお話が出る事もあります」
小さく笑ながら告げられた言葉に興味が惹かれ
「どんな話をするの?」
質問をすると、コナーは頷いた後
「ミラに怒られていた話が話題になっておりました」
告げられた言葉に
「ルイが来なくなった初日の事ね」
数日前の出来事を思い出し告げれば、
「ええ。目撃したご婦人がいまして、微笑ましそうに話しておりました」
あれではどちらが年上のなのか分からないわね。
揶揄するのではなく、微笑ましくて出た言葉に心の中で深く頷いたのだと告げるコナーの話を聞きつつ、
「ルイはエスメさんの護衛をさせる為でしょうね」
来れなくなったルイを思い出し、自分の考えをこぼせば、
「お考え通りだと思われます」
学園といえども小さな社会を作り出す空間。
貴族と平民が集まり学べば、街を凝縮していると言っていい。
ただでさえ、平民を見下す、自分が上位である事を示したがる人はどこにでも居る。
そんな人物にはエスメさんは狙われる事は解る。
タチが悪いのは言葉だけではなく手を上げてくる者もいる事。
その為にルイに武術を教えているのだと思い、体の中に小さくため息を落とすも
「父親は騎士だと言いますし、将来習うはずだった事が早くなっただけです」
コナーの言葉にそうだったと考えを改め、
「学園に行くのだと聞いてから、私なりの対策を考えて教えているのだけどその手の貴族はどんな些細な事を見つけていな仕掛けてくるわよね」
自分が通っていた学園の事を思い出し、ため息を落とすと
「さようでございますねぇ」
コナーも頬に手を当て困った様に眉を下げる。
行動や言葉1つに揚げ足を取り揶揄するものはどこにでもいる。
少しでもエスメさんの身を守るためにカーテシーや食事のマナーの細かな部分を手直しさせ、時期王妃となる為に覚えた事を教え身に付けて貰えたものの、
「心配が尽きないのはなぜかしら?」
次から次へと心配事が思いつき、底がないように思えてくる。
勉強面は公爵家の子供でもあり、工房の運営の勉強をしている事もあり同年代の高位貴族並にはこなせている。
語学も興味があるようで言葉では2カ国、読み書きのみでは3カ国はできる。
間も無くもう1カ国話せる様になる。
魔法は言うまでもない。
後、考えるのは貴族としても行動と言葉使い。
ただ、エスメさんも無意識かもしれないが、場所や対応する人物によって言葉や行動を変えている様に見受ける事がある。
自領だから少しの失敗も許されるし、何よりエスメさんの事を悪く言う人は居ない。
この街では私の事を見下す人も嫌悪する人も居ないのはエスメさんが私達の事を友人なのだ告げ、仲良くしてくれたから。
それに少しでも恩を返せればと思うも、公爵令嬢だった私と貴族であり上位メイドだったコナーでは知らない事が多く、エスメさんに助けてもらうばかり。
「それだけミランダ様の心を許し近しい人物となったという事です」
母国では友人と呼べる人物はいたが、時期王妃としての権力目的が多くまた派閥をまとめる立場でもあったので心から信頼できる人物は少なかった。
婚約破棄と共に信頼してきた親友もいなくなったが、今思えば上辺だけの付き合いだった事が良くわかる。
エスメさんと出会えて良かった。
あの時、自分の勘を信じて良かった。
出なければ、生きる為の生活ができ無い自分達は今どうなっていた。
言葉にしエスメさんに伝えれば
友達が困っているのを助けるのは当たり前の事よ
そう笑顔で言うのだろうけれど、当たり前だと言いきり行動できる人物が希少だと身に染みて知っている。
「少しでも学園生活が楽しく過ごせるように、勉強をしていただきますわ」
出会えた嬉しさを表現するのが恥ずかしく、つい出てしまった言葉に後悔するも
「微力ながらお手伝いいたします」
私の性格を知っているコナーは微笑ましかった様で微笑みながら理解している事を示してくれた。
第222話
三連休にグッと気温が下がり服装に冬服を取り入れました。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
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