父、娘と仲直りする
毎日忙しなく過ごす中、本日は魔術長ご夫妻に晩餐会へご招待を受け、夫婦で参加をしていた。
本来なら城で秘密裏で行われているが、公に出し他の貴族達に関係を示す意味もある。
この晩餐会のメンバーはディランの学園生活の交友関係にも関わってくる。
側近方の晩餐会の招待を始め、高位貴族だったり、商会を立ち上げている貴族だったりと舞踏会シーズンが終わっても領地に帰らず残る彼らの招待が多い。
届く招待状に全て応えるわけにはいかないので選別をしていても数日ごとに家を開けディランを1人にしていることが気なっていた。
緊張しながら、妻の手助けを貰いなんとか穏やかに会話を楽しみそろそろメインディシュへと進む時に
「ルーズヴェルト公爵」
何か耳打ちを受けた魔術長がにこやかな表情で呼びるので視線を向けると、
「ご息女が屋敷にお戻りになっているそうだよ」
ナイフとフォークを置き、貴族らしい微笑と共に告げられた言葉に驚き思わず立ち上がりかけるが、隣にいる妻に裾を引っ張られ、浮いた腰を下ろすと、
「あの子は弟であるディランを溺愛しておりまして。離れてから1年、寂しくなり会いたさが募ったのでございましょう」
冷静に返事を返す妻の声に慌て動いてしまった事に情けな無く思ってい手を握り込んでいると、そっと妻のてが添えられ、
「姉弟が水入らずで過ごす時間を、わたくし達夫婦が邪魔をする訳にはいきませんわ」
微笑みを崩す事なく冷静に対応し判断をしてくれた妻に感謝をし、微笑みだけで妻に同意なのだと示せば、
「ご息女が以前考案したプリンはとても美味しく、わたくし大好きなのよ」
魔術長の婦人からの言葉に、
「気に入っていただけて光栄ですわ」
妻がすかさず返すと、
「本日のデザートは以前、領に夫がお邪魔した際にいただいたというプリンをクックに作らせましたの」
品良く微笑みながらの魔術長の婦人の言葉に
「まぁ、お話を伺って1度食べてみたいと思っておりましたのよ」
嬉しそうに微笑み騎士団長の婦人の言葉に一気に甘味の話に花が咲き、ご婦人達の華やかな微笑みと言葉で先程の何処か緊張した雰囲気がなくなった。
プリンの上に焦がした砂糖が乗っているプリンにショートブレット。
エスメが美味しそうだからと発案したティーフードはご婦人達を始め各家でも造られ楽しんでいる姿を見て
心の中で安堵の息を落とす。
立場上、嫌われ嫌悪されても仕方が無いエスメを率先し受け入れて褒めてくださる側近の方々がいるからあの子は悪意に囲まれずここまで過ごすことができた。
方々には感謝しか無い。
妻の楽しそうに話をする姿を見つめながら時取り振られる話に返事を返すし、話に出たプリンが並べは、
皆で感想を言い合い、焦げ溶けて固くなった砂糖をスプーンの先で突き破り人匙掬い食べれば、柔らかなプリンの甘みの中で、硬さのある砂糖が食感を変え、ほのかな苦味が双方の味を引き立てる。
「これは、美味しいですね」
宰相の言葉に皆が頷き、それぞれの感想を口にする。
どれも好感触だったようで、ホッと息を漏らすと食事は終わりティータイムへ入る為に食堂から応接間へと移動すれば、用意させたワインとつまみをいただき談笑するもエスメの事が気に掛かり気そぞろで居ると
「申し訳ございませんがわたくし達はそろそろお暇させていただきたく思います」
席を離れ婦人達と紅茶を楽しんでいた妻の言葉に、
「ええ。子供が心配ですものね」
宰相の婦人の言葉に、妻は微笑みで返し立ち上がったので同じ様に
「申し訳ないのですが」
断りの言葉を告げると
「ああ。こちらの事は気にするな」
騎士団長の言葉に罪悪感が少し和らぎ、夫婦で退出すると、
「ご息女によろしくお伝えください」
見送りに来てくれた魔術長の言葉に頷き、
「本日はお忙しい中、来ていただきありがとう」
魔術長夫人からの言葉に
「こちらこそご招待頂いたのにも関わらず最後まで参加できず申し訳ございません」
妻の詫びの言葉に夫婦揃って頭を上げれば
「良いのよ。今度のお茶会でのお話を楽しみにしているわね」
微笑まれ、かけられた言葉に夫婦揃ってエスメの話を聞き報告するを告げられ微笑むことで是と返事をし馬車に乗り込み屋敷へと向かう中、
「申し訳ない」
正面に座る妻に告げれば、小さく首を振られ
「違う言葉の方が嬉しいですわ」
小さな声で呟かれた言葉に眉を下げ
「すまない。ありがとう、助かった」
妻の望む言葉を最初に言えなかった詫びと晩餐会での礼を告げれば、
「お役に立てて何よりですわ」
微笑みと共に返ってきた言葉に、自分に情けなくなってくるも
「夫婦なのですもの。お気になさらないで」
柔な笑みと優しい声で作られた慈愛の言葉に
「ありがとう。僕の元に来てくれてありがとう」
改めて礼を告げると、嬉しそうに笑ってくれた事に嬉しくなり先ほどまで沈んでいた心が持ち直す事、馬車は屋敷に到着し
「お帰りなさいませ」
出迎えてくれた家令に夫婦揃って挨拶を返せば、
「数時前からエスメ様がお見えになり、ディラン様の部屋でフレディを交え談笑されております」
どこか賑やかにな雰囲気な屋敷に、懐かしさを覚え
「ディランにお邪魔をしていいか尋ねてくれる?」
妻の言葉に、専属のメイドが素早く動くのを目の端で捉えると
「着替えを」
家令の言葉に頷き返事をし足早にそれぞれの自室へと戻り着替えを済ませば、
「ディラン様、エスメ様より是非にとお返事をいただきました」
身軽な姿になり、夫婦揃ってディランの部屋を訪れると
若草を思わせる色のドレスに髪を結い化粧をしたエスメの1瞬誰がわからずにいれば、ゆっくりと体を動かしカーテシーをする姿に思わず
「エスメ?」
腹の奥から嫌な予感と以前エスメにかけた言葉と自分の行動を思い出し、声をかけると
「ルーズヴェルト公爵様、夫人。お久しぶりでございます」
落ち着いた品のある声と挨拶に言葉を失っていると
「まぁ、カーティーが前より良くなっているわ。お友達の教えが良いみたいね」
隣から嬉しそうに告げるリリーの声に、視線を起こしたエスメが嬉しそうに笑い
「ミランダのおかげなの。お話聞いてくださる?」
屋敷にいた時とは違い大人びた話し方に、思わず
「エスメ、すまなかった」
エスメに抱きつき何時ぞやの謝りをすると、
「お父様。ただいま」
聞き慣れた1年前に聞いていたエスメの言葉に、抱きしめていた腕に力を込め
「お帰り。よく無事で返ってきてくれた」
迫り上がる涙を堪えるも震えた声は抑えきれずに返事返す。
暫くお互い無言で抱きしめているも、
「旦那様。そろそろ離してくださいな」
リリーの言葉に、自分ばかりエスメをかまっている事に気が付き、ディランの部屋だが案内なしに全員でソファに腰をかけ、エスメの話に耳を傾けた。
第216話
ようやく仲直りしました。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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