姉、重役を引き受ける
真っ白な雪に覆われ、身を切るような寒さが和らぎ出すと雪に覆われていた大地が顔を出し、雪と大地の間からは新しい命が芽吹き出す。
朝の授業を終え、自室へ向かう途中にイルさんと出会い、お祖父様の部屋へ入ればお祖母様も居りソファに座るように促され着席した後、
「そろそろ春の祭りの準備に入るのだがな」
一族の主としての言葉に短い返事と頷きで返すと、
「今年もエスメに奉納をして欲しいと要望が出ているんだ」
告げられた言葉に心の中で首を傾げれば
「去年はディランとの祭りは領民への顔見せが目的でしたが、今年は領民からの要望です。できれば叶えたいとは思っているわ」
お祖母様の言葉に耳を傾け、去年の祭りを思い出す。
初日はディランとフレディと街へ出て屋台巡りをし、
2日目は次期当主となるディランとの顔見せで街中を周り、領民の願いが込められたミモザを代表者として神殿に奉納する大役を仰せつかった。
それを1人でこなす事になる。
去年はディランを主体で補佐の様に動いていたが、今年は代表として動く事になる。
ディランの代理という事ね。
自分の中で答えを導き出し、心を決めていると
「勿論、断って貰って構わないわ。でも、できればエスメにお願いをしたの」
お祖母様の言葉に少し間を開けた後、
「未熟者ですがお受けしたいと思います」
真剣な表情で返事を返すと、お祖父様もお祖母様も嬉しそうに微笑み、2人からお礼の言葉を貰い
「では、エスメの神事の際に着用するドレスの作成をします」
続いたお祖母様の言葉にお祖父様な頷き許可を出すと
「明日のこの時間にデザインと生地などを決めます。私の部屋に来て頂戴」
視線を合わせ告げられた言葉に短い返事で返し、明日の予定を頭の中で組み直してゆく。
その後は少しの雑談をし、時間だとイルさんの言葉にお祖父様とお祖母様に断りを入れ自室へと戻り紺色のメイド服を脱ぎ生成色のワンピースに着替えをし噴水の広場でルイと出会いミランダのアパートメントへ向う。
出迎えてくれたミランダとミラに挨拶をし、いつもの様にテーブルを囲みお茶と会話を楽しむ。
会話の中心は、春の祭りだった。
ミランダにはとっては初めての春の祭りとあってルイもミラも身振り手振りで伝えるのを聴き役に徹していると、
「去年の初日に初めてエスメと出会ったのよ」
ミラの言葉に頷き返事をすると、
「ディランと一緒だったから、折角だしと声をかけたんだよ」
ルイの言葉に、去年の記憶を思い出し笑いながら頷き
「まさか、こんなに仲良くなれるとは思わなかった」
ルイとミラの言葉に、
「そうね。私もその時は毎日会えるとは思わなかったわ」
ルイが誘ってくれたのがきっかけだったが、当時は仲が深くなれるとは思っておらずしみじみと思い出すと、
「皆の出会いの祭りなのですね」
微笑ましそうに聞役になってくれていたミランダの言葉に、
「2日目は一緒に居られないけれど、初日は屋台巡りをして食べ歩きをしようね」
今朝告げられたお役目を伏せ告げれば、
「春の祭りは秋の祭りより外からの客や商人が少ないけど、街の商店が中心だから回りやすいかもな」
ルイの言葉に
「でも、お昼からはダメよ。私、他の友達とお菓子貰う約束してるから」
ミラが思い出したように告げ、
「私も神殿での仕事が終わったらすぐに来れる様にするわね」
少しでも4人でいられる時間を作れるように調整を心がける事を忘れない様に記憶し、話は盛り上がるものの
「話は尽きないけれど、そろそろお勉強をいたしませんとね」
ミランダの言葉に3人で頷き、各自それぞれが学びたい事に手をすすめた。
その日からは慌ただしく、お祖母様と共に2日間着る洋服のデザインや布を選びから始まり、街の雰囲気が少しづつ賑わいミモザ色が溢れ出す。
去年の経験もあるので余裕を持って心構えをしていると、あっという間に神殿での練習日になり、ルイ達に会えない日も出始め、慌ただしく過ごし
当日は去年同様に慌ただしく屋敷内を移動し、神殿へ行くためにハンサさんにテアさんボニーさんを中心に身の清めと身支度を整えてもらい、
「エスメ様のウエストは絞らずとも細いのですが、ドレスを型崩れ防止為に着用いただきたいです」
久しぶりのコルセットにハンナさんと呼吸を合わせ絞りウエストを作って貰う。
去年より成長している体に喜びを感じつつ、顎を引き視線を下に抜ければお腹より先に胸が視界に入り、
子供から大人に成長しているのね。
自分の事だがどこか他人の様に感じてしまうも、
お祖母様もお母様も出る所はきちんと出ていたもの、私も大丈夫なはず。
心の中で頷き、改めてドレスを着た自分を写し出す。
去年とは違うライムライトとカナリア色の黄色を主とし色の薄さと濃さで陰影を表しふんわりと作られ、宝石はお祖母様からいただいとネックレスとイヤリングのみを着用した。
神様に感謝告げる神事を考えシンプルにデザインし髪型も化粧も同じ様にして貰った。
普段着ないドレスに背筋を伸ばし、ゆっくりと玄関ホールむ向かえばお祖父様とお祖母様が待っており
「お待たせし申し訳ありません」
淑女の振る舞いをすると、お祖母様は満足そうに微笑み頷いてくれ
「変わるものだな」
お祖父様の言葉に苦笑しながらも心の中で深く頷いていると、お祖母様は扇を広げ呆れた様に息を吐き
「そろそろお時間でございます」
イルさんの言葉に、全員で馬車に乗り込み神殿へ向かった。
第212話
台風の進みが遅いのが気になります。これからの地域の方々十分に警戒してください。
早めの行動をお願いいたします。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
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