姉、流行りの真相を知る
秋祭りの話を聞き、楽しみに待つ日々の中、
「以前、食べたダリオルという名の菓子ですが、エスメ様のお話を聞き作ってみました」
キッチンとランドリーでの朝の勉強を終え自室にて工房の仕事をこなしていると、聞こえてきたノック音に返事をしボアさんに対応をお願いすると、
珍しくクック長が立っており、不思議に思い話を聞くと言葉と共に差し出された皿の上にはエッグタルトが乗っていた。
確かに、キッチンとランドリーの間に街で流行っているお菓子の話として盛り上がったのをクック長まで話が届いた様で、
「図々しくも、試食をしてご意見をいただければお思いお持ちいたしました」
少し居心地悪そうにし大きな体を縮めながらの言葉に、
「ありがとうございます」
持っていた羽ペンをインクを拭き取ってから置き、椅子から立ち上がるとソファに腰を下ろせば
クック長からダリオルがテーブルの上に置かれ、
「いただきます」
ダリオルを1つ手に取り、なるべく小さく口を開ける様に気をつけ一口食べると、
街で購入したダリオルとよく似た味をしており、ボアさんが淹れてくれた紅茶を飲み
「美味しいです。街で買ったダリオルとよく似た味です」
微笑みながら感想を告げると、
「それはようございました。沢山作りましたのでお友達とのティータイム様にお持ちください」
嬉しそうに微笑んでくれ、ルイ達へと手土産まで準備してくれた事にお礼を告げれば
「ダリオルはエスメ様のお友達の国のお菓子でございます。お友達も喜んでくれると思います」
告げられた言葉に、2個目のダリオルに伸ばした手を止め
「隣国のお菓子なのですか?」
思っても見なかった言葉に驚きクック長へ問い掛ければ
「さようでございます。最近、話題を集めているお菓子や食べ物は隣国の物が多いですね」
頷きと共に告げられて言葉に驚きつつも、
「そうなのですね。教えていただきありがとうございます」
お礼を告げ、2つ目のダリオルを口に入れ紅茶を楽しみつつ、自分の手で作りたい旨をクック長へ告げれば
「特別取り寄せをしなければならない材料は使用しておりませんので、お手隙の時にぜひお越しください」
先程同様な好きと共に返ってきた言葉にお礼を告げ、お茶受け話題として夕食の相談に乗って貰い、やってきた本屋の店主さんに
「クックからここ最近の流行りは隣国から入ってきたものが多いと聞きました」
ポツリと会話の間にこぼした言葉に、
「流行というのは稀に自然に発生もあるが大概は操作された物が多い」
返ってきた言葉に頷き返すと
「経済効果や、印象操作などを行いたい場合に流行りを作り広める事はどの国も当たり前で行っている」
有名なのはドレス形や刺繍のデザインや布の流行りだったり、飲食で好印象を与えるのもその手口で1つでもあるよ
ゆっくりと告げられた言葉にうなず返すこともできずにいると、
「今の所は問題は無は出ていない」
何より隣国の食べ物と認識すらされていないからね。
返事をしなかった事で心配をさせてしまったようで、大きな手の平でゆっくりと頭を撫ぜられ
「悪い事になる前に、領主である君の祖父母が動くはずだ。何か助けられる事があれば手を貸すといい」
いつもより少し優しい声で告げられた言葉に頷き返せば、
「ほら、そろそろ時間だ。行っておいで」
店の前まで見送りに出てくれ、別れの挨拶をすると噴水に向かい歩き出す。
秋祭りの準備が始まっているのかいつもより賑わう道を歩き、ルイと会いミランダの元へアパートメントへ行くと、
「エスメさん、ルイ。いらっしゃい」
ミランダが出迎えてくれ、いつも通りに挨拶を交わし
「今日はクック長がダリオルを作ってくれたの」
普段とわからないように微笑み告げると、
「とびきり美味しいお茶しないといけませんね」
普段と変わらないミランダの微笑みを見ながら、勉強やたわいもない話をしながら過ごすも
どうしても心の中からモヤモヤした物が取れず、屋敷に帰ってからも気分は晴れず
「店主も申した通り、そうそう悪い事は起こりませんのでご安心を」
思わずイルさんに心内と今日の出来事を話すと
返ってきた言葉の後に
「流行りと言うものは回転が速く、廃る物もあれば定着し本質を変えてゆく物もございます。様子を見るのが妥当かと思われます」
続け様に告げられた言葉に、確かにと納得すると少しモヤモヤした物が取れた。
前に行きた人生の中で新しく生まれた流行の中で残ったものは少なく、残っても我流が加えられ自分達の好みに変えていた。
そうね。この領の色に染めてしまえば良い。
必ずアレンジを加える人が出てくるはず。
今は無理でも明日かもしれないし1ヶ月もしくは来年かもしれない。
イルさんや店主さんの言う通り待てばいいのよ。
ようやく心の中のモヤモヤが取れ、ベットに入ればすっきりと気分で眠りにつく事ができた。
第194話
台風の動向が気になりますね。これ以上被害が大きくなりません様に。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
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