姉、前世と今世の思い出に浸る
今日は何を作ろう?
明日は何を作ろうかな?
手隙の時間があるとつい考えてしまう料理に事に、
これでは前世と同じで、どの時代も料理の事を考える時間ができ、献立に困った事、子供の離乳食を食べてくれなくて思い悩んだ思い出や、子供の好き嫌いの改善に必死だった事を懐かしい気持ちで1人小さく笑っていると、
「この本は懐かしそうに笑うような事が書いてあった?」
正面から問われた言葉に、顔を上げ、
「弟も食事の事で手を焼いたことがありまして、文章を読んでいると共感と懐かしい気持ちになりました」
記憶の中に居るディランのイヤイヤ期の食事の時間を思い出し、
「当時はどうすれば食べてくれるのかと頭を悩ましフレディと試行錯誤しました」
当時の思い出が笑い話のように語られている文章を指先で撫ぜ、
前世も今世もよく似たことに悩み、経験者だから対処できると思えば全く無く、
お腹が空いたら食べてくれるわ。
食べてくれないより、1口でも食べてくれたなら良し。
一緒に食べれば食べる時間だと分かり、食べてくれるだろう。
人によっては諦めたと言われるかもしれないけれど、前世の子供達もディランもすくすく育っているので問題無い。
教育方針なんて子供の性格が一人一人違うのだから全員一緒な訳無いのよね。
子供を産んで、育てて、悩み苦しみ、子供を1人の人だと理解できれば、子供我儘は個人の意見の主張だと考えが行きつき、言葉数を知らない子供の気持ちを気長に言葉にするのを待つ時間も、心は軽くなった。
が、苛立ちはどこからとも無く生まれるもので、
今思えば、今だから解る事で、子供には申し訳ない事をしたと思う事は数えきれない程ある。
それでも、その時は最良だと判断しての事。
子供が親の立場になって、あの時の親の気持ちが良く解る。
理不尽だと思ったけれど、自分達を守る為の反対だったと同じ親になって理解できた。
孫を連れ遊びに来てくれた時に言われた言葉に思わず、胸が一杯になった事を今世でも鮮明に思い出す事ができる。
それだけ嬉しくて微笑まして子供の成長が誇らしかったのだろう。
いつか、親となったディランにも同じ事を言われるのかな。
楽しみだなぁ。
前世の思い出に浸り昔の自分を微笑ましく追い返していると、ふんわりと頭を撫ぜられ
「時間だけど大丈夫?」
尋ねられた言葉に本から顔を上げ、
「もう、そんな時間なのですね」
あっという間に過ぎてしまう時間に残念な気持ちで溢してしまった言葉に
「明日も来るといい」
聞こえてきた言葉に顔を動かせば口端を少し上げ小さく微笑んでおり
「はい。明日も来ます」
読んでいた本を元にあった棚に戻し、お礼を告げ店を後にし噴水の広場へ歩いて行く途中、
献立を決めようと本を見ていたはずなのに、違う箇所を読んで終わってしまったことに気づき
心の中で苦笑し、道中で献立を考える。
ライ麦で作った黒パンとチーズに、村のご婦人に教えて貰った青豆のスープ。
ルイやミラにそれとなく聞いた食事メニューを作ってはいるが、私が食べている物が違う。
白いパンにお肉や魚料理は各2、3種類は毎食出ている。
多分、ミランダもコナーさんも食事は私と同じ量と種類を食べていたと想像できる。
ミランダもコナーさんも何も言わず、食べれる事に感謝をしていると言ってくれたが
「今日はお肉を使って何か作れればいいな」
頭の中で夕食の献立と共に明日の朝食に食べるライ麦パンの仕込みをすることも忘れないように考えていれば、ルイと合流ができ、ミランダのアパートメントへ向かった。
今日もコナーさんは紙刺繍工房で働いているらしく、ミランダの入れてくれた紅茶を楽しみ
「ミランダ。今日の晩御飯にお肉を使いたいんだけど、予算は大丈夫かな?」
「ええ。あまり高いようならば買えないけれど、買い物に行く時に価格を見て判断したいわ」
平民の洋服を着こなし、アパートメントの暮らしにも慣れたようで、4人で買い物に行く日も増えてきた。
コナーさんが外で働き、ミランダが家の中かの仕事をこなす。
互いに得意な分野をこなしているのだと、夕食を共に作っていたコナーさんに教えて貰った。
私も、屋敷ではできない料理の練習ができるので大変ありがたくキッチンに立たせて貰っている。
最近では
「エスメさんが作ってくれる青豆のスープはとても美味しくて好きです」
ミランダに料理の事をほめらる様になり俄然やる気になり、
「今日も楽しみにしていてね」
やる気に満ち溢れながら告げれば、もし訳なさそな表情をしながらもどこか嬉しそうに
「ありがとうございます。楽しみにしております」
ミランダとの毎日の同じやり取りに、ルイとミラが呆れながら見ていた。
第188話
熱中症警戒アラートが日々続いておりますね。水分を1口でも多く取るよに心がけて過ごしております。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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