姉、突然の来訪者に驚く
ぬくもり亭から帰り、お祖母様からのお茶をした後自室に戻りテアさんに部屋を飛び出してしまった事を謝り、むくもり亭での出来事を話をした。
「確かにお話を伺うと、常に冷やす事ができる箱があれば便利かと思います」
ソファに対面に座り帰ってきた言葉に、
「そうですよね」
前の人生では大変お世話になり無いと生活できない冷蔵庫を思い出し頷き返す。
パンの発酵は火魔法で作ったから簡単にできたけれど、冷やすとなると難しい。
氷に風を当て箱の中に冷風を循環させる。
それだと氷が溶けて仕舞えば冷えはなくなってしまう。
何より、氷を作り出すか全くと言って案が浮かば無い。
水を冷やせば凍る原理は理解しているものの、冷やす方法が全く思い浮かばす
「エスメ様。そうご無理をするものではありませんわ」
テアさんの言葉に無意識に下げていた顔を上げれば、
「王都に魔術省には沢山の役人がおります。皆で知恵を出し合えば案も浮かびます」
にっこり微笑みながらの言葉に、
確かに。
そう思い頷ずくと、話題はルイの話へと変わり
「中々、良い返しをしましたね」
関心しながらのテアさんの言葉に
「さすがに私も苛立ちがあったのですがルイの言葉にスッキリしました」
互いに微笑み、ルイを褒め続け、
改めて、吟遊詩人が歌った歌は人によって取り止め方が違うのだと分かり、夕食の時間まで沢山話しそのまま就寝時を迎え、
翌日も同じ様にキッチンとランドリーで朝の勉強をこなし、自室で紙刺繍工房の状況報告を聞き書類に目を通し、イルさんから解説を貰い、
「では、むくもり亭に行ってきます」
動きやすい洋服に着替え、玄関ホールまで見送りに来てくれたボアさんに行き先を告げれば
「お気をつけて行ってらしゃいませ」
微笑みと共に言葉で見送られ、噴水の広場まで歩いて行く。
1人になると様々な事が頭をよぎり、机の上に置かれている王都からの手紙を見て見ぬふりをしている事を思い出し
多分、魔術省の役人さんが言っていたことは手紙の事なんだと思う。
読まなけれなら無いのは解っている。
けれど、書いてある内容がもし、王都のあの事の続きなのではと思うと怖くて開封できなかった。
1人でいるとどうしても考えこんでしまい足早に街へ行き、手土産を買い噴水の広場でルイと会い、差し出された手を握りむくもり亭へと歩いて行く。
今日もルイと共に勝手口からお邪魔し、女将さんに挨拶をしミランダの部屋の扉をノックすれば
「お久しぶりです」
コナーさんが出迎えてくれ、
「ご無沙汰しております」
微笑みながら挨拶を返すと、部屋へ招き入れて貰え
「ルイ、エスメさん。お久しぶりです」
立って出迎えてくれたミランダに
「久しぶりだね。中々来れなくてごめんね」
謝りを入れながら挨拶を交わすと
「いいえ。お元気そうで良かったですわ」
確信を外しながらも事情を察していると分かる言葉に、
「心配りをありがとう。もう元気だよ」
ミランダの気遣いがありがたく微笑み返し手土産を渡すとお礼を貰え、すっかり座り慣れた椅子にルイと共に座ると
「ミランダに聞いて欲しい事があるんだ」
コナーさんの紅茶用意を待たず告げたルイの言葉に、ミランダが微笑みながら頷くと
「昨日と一昨日に王都からの客にミランダの事を聞かれた」
雑談なしでの本題に驚きルイの顔を見れば、真剣な表情をしており
「そいつは色々聞きたかったみたいだけど、知らない、解らないで通した」
ルイの話を聞きながらミランダの表情を伺うも、微笑みのまま動いておらずどう感じているのかがわからなかった。
「さっき1階を見渡したけど、もう居ないようだったけど気をつけた方がいい。それと」
昨日、役人さんから友達とのお茶会にどうぞと手渡された紅茶の葉とティーフードを机の上に置き
「一緒にいた奴から、お友達と食べてくれと渡された」
ミランダに判断を任せるように置いた茶葉とお菓子に視線を向け、再びミランダに視線を向けると、
「ありがとうございます。ですが、もし危険と感じたら私達の事を話していただいても結構ですわ」
貴族の様な微笑みままの言葉に、返事を返そうと口を動かすも
「馬鹿にするなよ。好きな人を守れ無くてなにが男だ」
ルイの怒りに触れてしまっようで、先程より大きな声で告げられた言葉に思わずルイを見れば睨む様にミランダを見つめ、
「俺は父さんみたいな、街の人を守れる騎士になるんだ。子供だからと甘くみるな」
付け加えた言葉に、微笑ましく思いミランダへそっと視線を動かせば、
微笑んだままだけど、少し耳が赤い様に見えルイの気持ちは伝わっているのだと解り嬉しく思っていると、
背後から大きな音と共に扉が開けられ
「ルイ、エスメ。みつけたわよ!」
大きな声に驚き振り返れば、小さな体は怒りで溢れており、
「ミラ、どうしたの?落ち着いて」
慌て席を立ち、ミラの元へ近づき膝をつき視線を近づけると、
「2人でこそこそ出かけて。どうしてなかまはずれにするの!」
怒りが頂点に達していたようで、部屋中に響き渡る程の大きな声に
「コソコソなどしてないわ」
諌めるように声をかけるも、自分の横をすり抜け
「あなた、だれ」
勢いのままミランダに話しかけるミラを落ち着くように手を伸ばすも、ミランダは膝を折り
「私はミランダ、こちらはコナー。私の家族なの」
優しく柔らかな声でミラへと返事を返すミランダと
「コナーと言います」
同じくミランダの横で膝をついてミラと視線を合わせてくれてコナーさんに
「ルイのエスメもずるい。わたしもともだちになりたい」
落ち着きを取り戻したのか、普段と変わらない大きさの声になり告げた言葉に
「友達になってくれるの?嬉しいわ」
嬉しそうに微笑み告げるミランダに
「ええ。ともだちになってあげる」
嬉しそうに笑い告げたミラに
「おい、言い方」
ルイが注意を入れると、頬を膨らませ
「そもそも、ルイがコソコソしているのがわるいのよ」
先程まで自分が座っていた椅子によじ登り、腰を下ろし机の上にあるお菓子に手を伸ばし
「あまくておいしいおかし、わたしもたべたいもん」
一口齧り気に入ったのか次から次に手を伸ばし食べるミラノ姿にルイが呆れながらも止めようとするが
「お菓子ばかりでは喉に詰まってしまうわ」
立ち上がったミランダの言葉にコナーさんも同じように立ち上がり手早く紅茶と椅子を増やしてくれ、
「先程、エスメから貰ったお菓子もあるの。一緒に食べましょう」
愛おしそうに微笑みがらミラに話を振るミランダに、ルイは何も言えないようで、ため息をつきながらミラのおぼつかないカップの持ち方に手を添えており、
家族の休日の様な風景を眺め心が癒されていると
「エスメもむりして笑うぐらいならなかなおりして、いつもみたいにヘラヘラ笑いなさいよね」
ミラからの突然の言葉に意味と理解ができずにいると、ルイに大きなため息を落とされ、ミランダには苦笑され、コナーさんには呆れられ
「あー、うん。そうね」
曖昧で適当な返事しか返せなかった。
第181話
雨が続いております、気温の変化で体調を崩しやすくなっております。どうぞご自愛くださいませ。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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