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姉、思考の海に沈む


案内された部屋に入り、こちらへと五指で誘導された木の椅子に座り、正面に座るのは昨日に屋敷でお会いした魔術省の役人さん。


隣に座るルイの前には、先程、声をかけてくれた男性が紅茶とティーフードを手早く準備し椅子に腰掛けた。


初めてみる焼き菓子に興味を引かれるが、正面の役人さんが紅茶の口をつけたのを見て、同じように紅茶に口を付けると、視界の端にルイも同じく恐る恐る紅茶に口をつける姿が入った。


口の中で香りが広がり、鼻に抜ける爽やかな香りと少しの苦さが美味しくて、強張っていた心が解ける様に感じ、カップをソーサに戻すと、


「是非、お召し上がりください」


タイミング良く差し出されたお菓子に、


「ありがとうございます。いただきます」


お礼と一口程の大きさにカットされているお菓子手で摘み口の中に入れ噛むと柔らかくじんわりとオーツが割れ、さらに噛むと、ゴールデンシロップの甘さが口の中に広がった。


「噛めば噛む程、甘さが広がり美味しいです」


正面に座る役人さんに感想を告げれば、


「お口に合った様で。何よりです」


微笑まれ返って言葉に、


本題を聞いてルイだけでも早くミランダの所へ行かさなければ。


少し焦りを感じながらも、頷き返すと


「で、聞きたい話てのはなんだよ」


警戒心なのか苛立ちがあるのか、棘のある声を言葉に思わずルイの顔を見てしまい、


「ルイ」


諌めるように名前を呼ぶと、バツ悪そうな表情をするも、


「いえ、実はこの領での生活がどのような物なのかをお聞きしたかったのです」


ルイの正面に座る男性からの言葉に、


「そんなの、俺らじゃなくて女将さんにでも聞けばいいだろう」


先程と同じ様に棘のある言葉で返えすが、


「女将さんもお忙しい方です。お手を話ずらせるのも憚れます」


相手はルイの反応を楽しんでいる様で、微笑みの中に少し違和感をを感じ


「この領の何をお知りになりたいのですか?」


口を挟むと、2人の視線が自分に向けられ貴族の微笑みを向けると


「失礼いたしました。実は生活魔法道具の多くがこの領から発明されております、道具に馴染みのある領民はどのように生活が改善したのか、また、他に望む事はあるのかをお聞きしたいのです」


揶揄していた事をさらりとなかった事にし、真剣な表情で告げられた言葉に小さく頷き、


「生活の向上は人それぞれ、道具を必要な人物または必要ではない人物によって変わりますので一概にお返事はできません」


ルイを揶揄ったことを怒っているのだと言葉の雰囲気に乗せ、意地悪な言い回しで返事を返すと


「確かにそうですね」


相手にも伝わったようで苦笑いをしながら返事を返してくれたので、鎮まらない心をひとまず外し、


「これから何か領主様に行って欲しい事はある?」


ルイに問い掛ければ


「良くしてもらってるからこれ以上に望む事なんてない」


視線を合わし、自分に向かって告げら言葉を視線で相手に伝えると、


「なるほど。わかりました」


納得してもらえたのか、そこから返ってくる言葉が無かった為、紅茶の飲み干し部屋を出る雰囲気を出すが、


「実はこちらを見ていただきたいのです」


なんの脈絡もなく出された言葉と資料に内心驚くが出された以上、目を通すしかなく心の中でため息をつき、なんとかルイだけでもミランダの所へと思い視線を向けるも、


首を振られ、


ならば早く終わらせようと


「拝見します」


資料を手に取り読み解いてゆく。


書かれているのは魔法道具の構図と道具の使用方法にが書かれており、さらりと説明を読み図案に目を通し自分の持っている知識と照らし合わせてゆく。


ああでもない。


こうでもない。


様々な角度から多数の答えを導き出し、どれが実用性がある方法かを考えてゆく。


そんな中、微かにルイと男性に


「ここ綴り間違ってるぞ。後、計算間違いもある」


「おや、気づきませんでした。ご指摘ありがとうございます」


何かを指摘する声に、返事を返す声が消えたものの気にする事ではなさそうだど考えに集中する。


冷やすにはどうしても冷風または氷が必要になってくるが、魔法で水から氷に変えた事はない。


確かに王都で、冷たい飲み物は数時間たっても冷たいままで飲める様な魔法道具は作ったけれど、長時間もしくは数年使用できる物は考えた事が無かった。


これ、あれだよね。


前の人生で使ってた冷蔵庫と同じ事だよね。


図案に書かれていた数字を元に想像すればとても大きく、


確かにキッチンにあれば便利だろうけれど、どれだけの魔法石と魔法が必要になるのだろう。


いくら考えても良い方法はが思い付かずにいると、


「流石の貴方でも無理そうですね」


正面からの言葉に意識を思考から切り離し、顔を向けると、


「不可能ではないと声が多くて、もしかすると貴方なら妙案が浮かぶのではと思ったのです」


微笑む中でも微かに納得しつつも落胆した雰囲気を感じ、首を傾げれば


「クックがあれば嬉しいと言うものですから、なんとかできればと思いまして」


いつの間にか手からなくなっていた資料が役人さんの元へあり、


「何か思ったことなどありましたら教えていただけると嬉しいのですが」


「では、お言葉に甘えて」


図案の紙を出して貰い、自分の考えを伝えると納得をいただけたようで


「ありがとうございます。囚われずに違う視点から考えるように伝えます」


どこか嬉しそうに微笑む役人さんにこちらまで嬉しくなり微笑んでいると、


「終わったなら行くぞ」


ルイの一気に意識が現実に慌て


「長いをしてしまい申し訳ありません」


詫びの言葉を告げ椅子から立ち上がればれば、


「いいえ。私は引き留めた様なもの。こちらこそ長い時間お付き合いいただきありがとうございます」


同じ様に椅子から立ち上がり、ドアまで見送りをしてくれ


「こちら、先程召し上がっていただいた紅茶とティーフードです。ご友人も気に入っていただけると思いますのでお召し上がりください」


言葉と共に差し出されたお土産はなぜかルイに手渡され、


「ありがとうございます」


礼を言いルイに引っ張られるように部屋を出て、なぜか宿の勝手口を抜け裏庭にやってきた。


「ルイ。どうしたの?」


ミランダに会いに行かないのかと言葉にしかけるが、


「あの役人がいなくなるまで会いに行かない」


力強く引っ張られ、街の大通りを歩き噴水の広場へ行き、設置されているベンチに腰をかけるように促され腰を下ろすと、


「エスメがアレコレ考えこんでいた時、俺も色々聞かれた」


眉を上げ、怒っている声と表情に頷きで返すと


「ミランダとの関係はどうだ?ミランダはどんな性格なのか?色々聞いてきたから腹が立って」


勢い良く話していた言葉を切ったと思うと


「偏屈でしか考えられない奴に言う事は無い」


大きな声と強い言葉で驚きルイの顔を見れば、相当怒っているらしく顔を赤くしたまま


「あいつ、ミランダの事を今流行りの本に出てくるような性格歪んだ悪女だと言ったんだ」


告げられた言葉に驚くものの、さすがに怒りを覚えるが


「だから、それはお前のことか?て行ったらアイツ真顔になったんだ」


微笑みからの表情を崩せたことがよほど嬉しかったようで笑いながらの言葉に渦巻いていた怒りが綺麗になくなり、


本当は注意をするべきだと思うも、自分もルイの気持ちも理解でき、怒りを消し去ってくれたので何も言わず見守ると、


「一応、ミランダにこれを届けるけど食べないと言えば持って帰る」


それで良いよな。


手渡された土産に視線を向け、確認されたことに頷くと


「そろそろ帰るか」


ルイも話したことでスッキリしたのか、にこやかく笑い手を繋ぎ屋敷へと帰れば、


「エスメ、話があります」


玄関ホールでお祖母様に声をかけられ、お婆様の私室へ入りソファに腰掛けると


「行き先は伝えるように言いましたが、返事を待たずに出て行くのはいただけません」


朝の行動の注意が入り、思い返すと自分の悪い行動が理解でき


「申し訳ありませんでした」


謝り、出された紅茶を飲んでいると


「本当にエスメは旦那様にそっくりなんだから」


重い息と共にこぼれ落ちた言葉に心の中で意味が分からず首を傾げながら、紅茶をもう1口飲んで聞こえなかったふりをした。




第72話


3連休中日ですね。生憎の天気で様々な情報を聞いております。


ブッマークや評価、いいねボタンをいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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