姉、役人と会う
早朝に起き、キッチンに行き釜に火を入れれば暑さで汗が滲む様になり、移動の水を触ると冷たさに頬を綻ばせる。
邪魔にならな様に周りを見ながら、頭をフルに動かし使い終わったキッチンツールを洗い場に集め洗い終われば、
ランドリーまでの時間は休憩時間となる。
体が鈍い、というより重い感じかする。
朝食のパンとスープを受け取り席に付きこっそりと息を吐きながら、普段と違う体の動きにため息を吐き
3日間寝てたのだから、当たり前といえば当たり前なんだけど。
頭の中は寝込む前に記憶がある為に初動の遅ささに心が乱されつつも、豆のスープを口に入れれば美味しさに心が落ち着きをとりも出した。
焼きたてのパンは柔らかく、豆のスープ何処か懐かしい味がしゆっくりと噛み締め、英気を養い、心を整え、ランドリーへと赴けば、
湯気と湿気が多いのか一段と熱く感じ周りを見るが働いている皆はいつの通りの表情と動きに自分だとなのだと理解し、
しっかりしなきゃ。
気合いを入れ直し、自分の服を手に洗い場へと向かった。
「お疲れ様です」
終わり、手を止まるのを待ってくれていたメイド長の言葉に、苦笑いしながら
「お疲れ様です」
挨拶を返すと、
「先程、先触れ来まして間も無く魔術省の役人方がご到着されるとのことです」
ご準備を。
お祖母様から聞いていた方々の到着に頷き、
「ありがとうございます。着替えて来ますね」
お礼を伝え、ランドリーメイドの人達に挨拶をし足早に自室へと戻れば、ハンナさんとテアさんが出迎えてくれ、
「湯浴みの準備ができております」
と、息つく暇もなく湯浴みに連れて行かれ、用意された洋服にワンピースに着替え、髪を整え、化粧してもらい、
「エスメ様、魔術省から役人の方がお見えです」
イルさんからの扉越しの言葉に
「ありがとうございます。行ってきます」
ハンナさんとテアさんにお礼を告げ、扉を開けてくれたイルさんと共に応接室へと向かい、イルさんの到着を知らせるノックと許可を出すお祖父様の声に、大きく息を吸い、
部屋へと足を進め、
「遠路はるばるお足を運んできただきありがとうございます。ルーズヴェルト家、長女エスメと申します」
マルチダとお祖母様から教えて貰ったカテーシーをしながら挨拶をすると、
「お顔をお上げください。お会いできて光栄です。私は事情があり名を名乗れませんが魔術省の役人をしております」
本日はよろしくお願いします。
聞き覚えのある声に顔を上げながら、挨拶をくれた魔術省の方の顔を見ると記憶にある人物と一致し、その事を告げたくて口を動かすも、魔術省の方の微笑みが深くなり
話ては駄目ということ?
動かしていた口を閉じ、首を傾げると
「エスメ。こちらに座りなさい」
お祖父様立ち上がりながらの言葉に頷き、お祖母様とお祖父様の間に腰を下ろせば、
「早急で申し訳ないのだけれども、事の状況を説明をいただいてもよろしいですか?」
雑談無しで始まった本題に、
お忙しい中に来てくれたんだ。
なんとなく魔術省の役人さんの雰囲気を感じとり、頷き、
あの日のできごとを話た。
「些細な事でも構いません。移動前後に何か感じた事はありませんか?」
祖父母と共に真剣な表情で聞いてくれた役人さんの言葉に、あの日の事を今一度思い出す。
「特には」
毎日、よく似た日常を過ごしていた。
これと言った違和感は無く、突然のことだった。
首を振り、告げた言葉に
「そうですか。後日、何か気づく事がありましたらお知らせいただけますか?」
頷きと共に返された言葉に、短い返事で答えると、
「このような事の事例はございませんか?」
お祖母様の言葉に
「お話を聞き、すぐに書物を探したのですか記入はありませんでした」
首を小さく振りながらの役人さんの言葉に表情が固くなる。
お祖父様の眉間に皺を寄せた表情と役人さんの硬い雰囲気に
なんと無く、大変な事をしてしまったのではとじんわりと焦りの波がやってくる。
だが、何がどうしてこうなったのか自分も解らないので、どうすることもできず、
申し訳ない気持ちが身体中に広がり、顔を下げてしまう。
「突然の事でご本人もさぞ驚かれた事でしょう。戸惑うお気持ちは理解できます」
役人さんの優しく柔らかい音の言葉に顔を上げると、微笑んでおり
「ご報告を下さったお父様も大変ご心配されており、娘をよろしく頼むとお手紙をくださいました」
告げられた言葉に、息を呑めば、
「許してあげて下さいとは言いません。が、何か反応は返してあげって下さい」
苦笑いしながらの言葉に、家族に手紙が返せないでいる気持ちを知っているような言葉に戸惑いながら頷くと
「息子がご迷惑をおかけし、申し訳ございません」
お祖母様の言葉に、
「いいえ。ご協力いただき感謝しております」
苦笑いのままの役人さんの言葉を聞きながら、封を切っていない手紙を思い出し心の中でため息を落とし祖父母と役人さんの会話を聞くも、
「今日と明日、ぬくもり亭と言う宿に滞在をいたします。何かございましたらお知らせください」
終わりの言葉に、お祖父様とお祖母様が立ち上がるのを少し遅れ立ち上がり、3人で見送りをする中、
「そうでした。こちらをお渡しするのを忘れておりました」
役人さんから差し出された箱に視線を向けた後、お祖母様とお祖父様にお伺いをするために顔を向けると頷きがあり、
「ありがとうございます」
受け取り箱を上げると、幼い頃身に付けていたブレスレットと同じ物が入っており、
「もし、心が揺らぐことがあればこちらをお付けください」
添えられた言葉に頷き返せば、役人さんは馬車に乗り込り屋敷を後にした。
第178話
この話を読み終わりましたら水分をお飲みいただけると嬉しいです。暑い日が続きますご自愛くださいませ。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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