父、方々へ報告に行く
普段人が絶えず居る建物の月が陰り星々の光が宝石の様に煌めく時間
最奥である1つの部屋には重苦しい空気が流れていた。
「以上が現段階で解っている事です」
抑揚が無く淡々と語られた事にそれぞれがため息を付き反応を見せるも、
「人助けをしてくる。その言葉に間違えありませんか?」
正面から問いかけれくる人物と視線を合わせ、
「間違いありません」
自信を持って深く頷き返す。
「連れ去った人物は平民で間違えありませんか?」
「身なりは平民だったと」
「確証はないのですね」
「申し訳ありません」
この質問だけは確信も無いので頭を下げ謝る。
現段階ではここまでの情報なのだが、陛下も側近の方々も先んじて報告が入っていた様だった。
宰相様方の質問に答える中、
「王都の住民ならそう問題も大きくならないが、誰の領地だった場合はどうするかだな」
宰相様の隣に座る騎士団長の言葉にゆっくりと頷く。
上から順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の爵位にはなっている。
我が家は公爵家。
だからといって権力があるかと言われれば頷くそれは侯爵以下の爵位の家ならで、公爵も上位貴族には歯が立たない。
歴史だけあり中立を保って来たからここまで残れただけだ。
もしエスメが我が家以上の公爵家が管理する所へ連れて行かれていれば対応が変わってくるが、侯爵以下ならば連れ去りは無かった事にできる。
下手に波風を立てず、お互いが話し合いで解決する方法になるが普通とは違う娘なので何も無かった事にするのが諸外国との関係も穏便に済ませられる。
できるだけ早く、ことが起こる前に、エスメが魔法を使う前に探し出し保護をしなければなら無い。
「人助けと聞いて最初に浮かんだのは飢饉問題です。調べてみましたが近年で不作で税が収められない。税収を下げている領地はどこにもありませんでした」
宰相様の言葉に内心仕事の速さに慄きながらも頷き返し、
「そうなると、収穫物は下がっているが税率を下げないが領地か」
相槌を打ちながら返事を返す騎士団長は腕を組み考え込むように視線を下げる。
「ええ。どこにでもある些細な問題と言えます」
領民あっての貴族とは最初に教えられるもその教えを守るも守らないも上に立つ人物次第。
上位貴族であっても様々だ。日々屋敷の中に居る跡取りであるディランは教えているが貴族ではないがエスメにもきっちり教え込んでいる。
日々、食事ができ、服が買え、使用人が居てくれるのは領民が頑張ってくれているからだと。
何度も繰り返し教えてきたが、今思えばこの教えも仇になったのかも知れない。
どうすれば良かったのだろうか。
当たり前のことのを当たり前に教えてきただけだ。
だからこそエスメは困っている平民に手を差し伸べた。
貴族として、人間として良い事をした。
平民の娘なら褒められるが、貴族の娘では褒められることでは無い。
他人の運営に勝手に手を出して良いはずない。
もし魔法を使ってしまえば。
その先の事を思うと下腹部がギリギリと痛み出すので小さく息を吐き思考の海から現実へ意識を戻す。
「暫くすれば分かるであろう」
今まで聞き側だった陛下の言葉に息を呑み驚くもすぐさま気持ちを切り替え頷き返し
「いつでも準備はできております」
腰を動かし正面へ向き真っ直ぐと告げれば頷き返される。
国がエスメ付けている陰から情報が貰えるのならすぐに保護できるだろう。
大きく前進できる兆しが見え安堵の息を吐くも、問題は山積みなのには変わりなく、
「膠着状態になれば仕方がない手は打つがそうならぬよう努めよ」
一同頷き是と返しこの場は1度解散となった。
陛下退出後、残った側近の方々に
「この度はこちらの不注意で皆様にご迷惑をおかけいたし申し訳ありません」
改めて詫びを入れれば、
「起こってしまった事はどうしょうもないがな次は気を付けてくれ」
騎士団長の言葉に返事を返せば、
「これで少しでもお転婆な所が治ることを期待しています」
宰相様の言葉に
「そうのように言い聞かせませす」
切に願いを込め返事を返し、魔術長である人物へ顔を向けるも眉間に皺を寄せている姿に怒りで言葉も出ない程なのかと慄き恐る恐る声をかけようとするも、自分より先に宰相様から声をかけると
「いや、追跡ができないかと思い意識をしてみたが無理だった」
苦笑と共に告げられた言葉に疑問に思い誰もが視線で問いかければ、
「以前、色があると言われてな。特徴があるなら追えるのではないかと思ったのだが無理だった」
かの人の様に思い付きで上手くは行かないな。すまなかった。
申し訳なさそうに謝ってくる魔術長に首を振り
「お手を煩わせてしまい申し訳ありません」
今一度詫びを入れ、一同に部屋から出てそれぞれが用意している馬車へと足を進める。
「次で終わる事を期待しています」
宰相様がご自身の馬車へ乗る前に告げられた言葉に返事を返し見送り、騎士団長、魔術長と見送り自身も馬車へ乗り屋敷へと帰る。
従者へと
「遅くまで付き合って貰い悪いな」
声をかければ、なんでもないかの様に
「いつかこうなる予感はしておりました」
告げられた言葉に苦笑し
「そうか。俺の従者は先読みの目があるようだ」
茶化した言葉で返すと普段動かない表情に怒りを見せ咎められるが、
「貸してくださると言ってくれた。ありがたいことだ」
主語なく告げた言葉に従者の肩から力を抜け
「それは良かったです」
先程とは変わり柔らかくなった表情と言葉に頷き返した。
屋敷に帰ったら騎士団長と執事に声をかけ、いつでも行ける人数の選抜と馬車の準備をするように指示を出さねば。
自然と沈黙になった馬車内でこれからのことを考える。
怪我など無く、怖い思いをしてないと良い。
無事で帰って来てくれればそれで良い。
どうか無事で。
第17話
遅れてしまい申し訳ありませんでした。書き上がりませんでした。
難しい事は書かない方向でいきたいものですが無理でした。すみません。
評価にブックマークそして⭐︎を押していただきありがとうございます。
誤字脱字報告本当に感謝しかありません。ありがとうございます。
暦上は秋になりましたが、まだまだ暑い日が続きますがご自愛くださいませ。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/




