父、主と親の判断の違い
こんなに綺麗なカーテシーができる様になったのか。
伯爵様と呼ばれた事にショックを受けるなか、
スカートを摘み上げ、足を引き体を揺らす事なく礼をとった娘の姿に呆然としながら見つめていると、
淡く光りに包まれながら娘の姿が薄くなり、後ろにある壁の柄が透けて見えるおり、
自分の目の前で起こっている事が頭の中で上手く理解できないでいた。
「エスメ待って頂戴」
自分の背中から聞こえてきた妻の焦った声と共に前に出ようとする動きに
「リリー待つんだ」
慌て引き留め、肩を抱く様にして動きを止めると勢い良く顔を上げ
「わたくしが自分で産んだ子供がわからないとお思いですか!?」
目に涙を溜め、怒りを露わに出している妻に驚き戸惑い返事を返せずにいると
「姉様」
フレディの背に守られる様に庇われていたディランの呼びかけにも反応を見せず居る娘に声をかけようとするも、ゆっくりと姿勢を正した娘の表情は、微笑みながらも今にも泣き出しそうな表情をしており、
自分が娘を傷つけた事を自覚した。
「エスメ、行かないで」
更に姿が透け薄くなる娘に懇願する様に手を伸ばし告げ、
「姉様」
フレディの背中で現状が見えていないディランが不思議そうに顔だけを出し娘に呼びかけるが、透け続けていた娘はついに光に包まれ姿を消した。
「エスメ、さま」
呆然と呟いたフレディの言葉に我に返ると、肩を出していた妻が膝から崩れ落ち声を上げず泣き、
「リリー」
膝を曲げ、妻の背中を撫ぜ現状の把握する為に部屋を見渡した。
久しぶりに家族が揃っての娘の報告会という名の団欒に中に、急に姿を現した娘に驚きと喜びと懐かしさの中に警戒心が沸き起こり、
戸惑いながらも名乗った娘に
「君が娘だという証拠はあるかな?」
家長として問うと、戸惑う表情に
いつも元気で笑顔の表情しか見ていなかったが、こんな表情もできるんだな
心の片隅みで考えながら、自分の娘である事は解っていたが疑いを捨てることは出来なかった。
自国だけではなく周辺国からも注目と警戒されている娘。
悪い事は考えれば考える程、止め処なくに思い付く。
何か目的があり我が家の入り込りたい。
領地にいる娘に何かあり、何者かが姿を変え悟られないよに送り込まれた。
困惑と戸惑いで眉を下げて居る表情を眺め、思い付く悪い事を1つ1つ潰してゆくが、
娘を傷をつけ悲しませてしまった。
いや、家族もか。
自分が発した言葉は失態だった事を痛い分かり、手を握り締めていると
「取り乱してしまい、申し訳ございませんでした」
涙をこぼしていた妻が顔を上げ、力強く告げた言葉に、視線を合わせると、
「旦那様は当主として父として、私達を守る為に立ってくださいました」
立ち上がる動きを見せたので、手を取り一緒に立ち上がると、
「わたくしがもっと上手く立ち回れれば、こんな事にはならなかったのです」
申し訳ございません。
自分の掌に乗っていた細く小さな手に優しく諌めるように握りられ告げられた言葉に返事を返せずに居ると、
「お義母様へ手紙を書きます。誰が馬の扱いが上手い者と足の速く体力のある馬の準備を」
優しく労わる様に微笑まれた後に女主人として凛と指示を出す妻を見つめていれば、
「お母様。僕の手紙もお願いしたいのですが、できますか?」
顔色の悪いフレディに手を繋ぎながら妻に話しかける息子に表情も妻とそっくりな表情をしており、
「勿論よ。だたし、あまり時間が無いわよ」
頷きながら告げた言葉に頷き、
「お父様、お母様、失礼します」
一礼をし、フレディの手を引き部屋から出て行く息子の背中を見送ると、
「旦那様」
先程とは違い、優しく柔らかな呼びかけに視線を合わせると
「大丈夫。大丈夫です」
背中に腕を回され、労わる様に撫ぜてくれる。
「今は互いの立場で食い違いがありましたが、必ず修繕ができます。いえ、わたくしとディランで修繕して見せます」
だから、ご自身を責めないでください。
背中から離された腕は、両頬を労わるように撫ぜると背伸びをし額を合わせながら呟かれた言葉に、目の奥が熱くなる。
「ありがとう」
すまない
本当は声に出した言葉とは違う言葉を告げたいが、今は言ってはいけない言葉。
娘にあった時に謝罪と詫びをしなければ。
妻の優しさと労りに少しだけ気持ちに余裕ができ、微笑み返すと、
「旦那様、王家へご報告へ行かねばなりませんわ。現状をまとめませんとね」
妻からの言葉に一気に血の気が引き、輝かんばかりの笑顔の妻に
妻としては理解弟子いるが、
母親として怒っているのだと理解でき、
娘との仲を早急に直そうと心に決めた。
第169話
蒸し暑い日が始まりましたね。水分塩分の補給を怠らぬようにお気をつけ下さい。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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