姉、自分が自分である証明を求められる
いつも過ごしていた自室でハンナさんとテアさんと話をしながら休憩を行っていた時に、
体が上下に動き揺れる体感に意識だけが横に引っ張り出される様に視界が左右に伸びた違和感に思わず身を固くし瞼に力を込め閉じた。
一瞬だった様な、もっと長かった様な。
自分の中の時間感覚が狂い出して居るのか、感覚が掴めずにいると周りの雰囲気が違う様に感じ、恐る恐る瞼を開けると、
「お母様、お父様?」
離れて過ごして居るはずの両親驚いた表情で目の前で居り、不思議に思い周りを見渡すと
「フレディ」
見慣れた弟の従者の驚いた姿が見え、嬉しくなり立ち上がり、
「あのね、フレディ。これを」
手に持っていたアクセサリーを差し出しながら1歩近寄ると、警戒するかのように半歩下がり顔を強張らせた動きに足を止め、
周りを見渡せば、
お父様は目尻を上げお母様を背に守る様にし立ち、警戒の色を強め、
お母様はどこか戸惑いながらも恐れを表情に出しており、
後ろにいるお母様のメイドさんやお父様の従者も驚きと恐れに警戒の色を強めており、
現状を把握すれば、自分が皆の恐れの対象として見られている事を理解し、伸ばした腕を引っ込め
何か言わなければど思い
「あの、エスメです」
声を震わせ中が自分の存在を示す名前を告げると、警戒の色が強くなり、
「君が娘だという証拠はあるかな?」
聞いた事の無い固く低い声でのお父様の問いかけに、
「しょうこ」
口の中で言葉を転がし、納得してもらえる答えを探しだす。
何を言えば、自分の事を認めてもらえるのだろう。
証拠は何か魔法を発動させればいいの?
でも、魔法道具の作成と緊急時以外の魔法発動はダメだとディランと約束をしたから発動できない。
お父様に自分が自分である事を示す証拠を言わないと。
必死に考えるも、考えが纏まるどころか何1つ思い浮かばず、口を閉じ視線を下げてしまう。
証拠。
自分がエスメだという証拠。
DMAを調べれば親子だということは証明されるだろうけど、今世にはそんな最新技術は無い。
何を持って証拠だと言えるのだろう。
証拠を出して違うと言われたら?
否定されたら私は私じゃくなる。
ぐるぐると頭の中に様々な考えが浮かぶもどれも解決策する答えでは無く、考えれば考える程に悪い方向へ答えが思い浮かんでくる。
もし違うと言われたら?
もし娘では無いと判断されたら?
爪先から視線が外せず、纏まらない考えが視界を暗くしている様に感じお腹の奥が蠢くような感覚に戸惑いう中、
「姉様」
どこからか自分を呼ぶディランの声が聞こえた様な気がしノロノロと顔を上げ視線を彷徨わすもディランの姿は見えず、何より体を動かしてしまった事で、空気がざわめいたことが分かり、
ここにいてはダメ
帰らなきゃ
でも、
どこに?
お祖父様はお祖母様に私ではないと判断されたら?
でも、ここを離れないと。
思い浮かぶ場所に心を馳せる。
あそこなら
強く思い浮かべ、さらに心を馳せてゆく。
ゆっくりと息を吸い、警戒心を強めに無い様に両手を動かしスカートを摘み片足を引き軽く膝を曲げ
「ルーズヴェルト公爵様、伯爵夫人。突然の事でご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした。」
自分がこの方達の娘だという証明は自分には持ってい無い。
証拠を出せない自分はここに居てはいけない。
瞼の奥が痛くなり、涙が溢れ出す。
瞬きを繰り返し、体制を崩さないように気をつけ深呼吸をし気持ちを落ち着けていると
「エスメ、待って頂戴」
慌てた夫人の声がし、
「待つんだ。リリー」
止めている公爵様の声に
「わたくしが自分の産んだ子供がわからないとお思いですか!?」
初めて聞く夫人の荒げる声を
「姉様」
戸惑い声をかけてくる愛おしい人物の声に、止めようとした涙が溢れかけ、
ここにいてはダメだ。
浮かんだ場所へ行けるように祈を馳せ
焦りを見せないように、ゆっくりと姿勢を戻し、顔を上げると慌てた表情の伯爵と夫人がおり
「エスメ、行かないで」
手を伸ばしてくれる夫人に微笑むと、伯爵様の背から出て駆け寄ってくる姿と
「姉様」
男性の背から顔を覗かせた愛おしい人物の顔をが視界の端に見えた。
第168話
気分が落ちてましたら、温かい飲み物が日光浴をお願いいたします。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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