姉、友達を愛でる
箒を扉近くに壁に立て掛け、お土産に持ってきたスコーンと女将さんにお願いして用意して貰ったティーセットをテーブルの上に用意し、3脚の椅子にそれぞれ腰を下ろし、
「改めまして、昨日はお助けいただきありがとうございました」
ミランダの淑女の微笑みと少し高く上品な音の言葉に、
「気にしないで。と、言っても助けたのはルイなのでその言葉はルイにお願いします」
同じ様に貴族の微笑みをし返事を返しルイに顔を向けると、どこかミランダに怒り睨んでいる様に見え、横目でミランダの様子を伺うと、
自分の態度でルイが怒っていると勘違いし申し訳なさそうに微笑んでおり、
これは、正さないと!
感情の取り間違いをしている2人とコナーさんの雰囲気が静かに揺らめき眉間に皺が深くなったのを見え焦り、
「ルイ。お礼を貰えて嬉しくて恥ずかしいからって黙っていたらミランダが勘違いをしてしまうわ」
何も考えずにルイの感情を言葉に出し、ミランダとコナーさんに誤解だと伝えつつ、
「ミランダ、ごめんなさい。ルイは年頃の男の子だから心情の出したが時折、複雑になってしまうの」
困った様に微笑むミランダとどこか納得した空気を出すコナーさんを見つつ
「決して怒っている訳ではなくて、嬉しいけれど表情に出すのは恥ずかしく、何も思っていない様に振る舞っている最中なの」
だから誤解しないであげて。
自分の中にある複数の感情を表に出し、言葉で伝える事ができないルイを見守りつつ、ミランダの様子を伺うと、どこか戸惑いながらも頷いてくれ、
「ルイさん、昨日は助けていただきありがとうございます」
改めてミランダがルイにお礼を伝えると、
「べつに。困ってそうだかがら助けただけだし」
ぶっきらぼうに視線を合わせず伝えるルイに、微笑ましく見ていると突然
「何より。ルイさんてなんだよ、むず痒いんだよ。呼び捨てにすれば良いだろ」
顔を上げ、大きな声と勢い良く告げられた言葉にミランダが目を見開き驚いた表情に気づいたルイが、
「ごめん。でも、聞き慣れないから呼び捨てにしてくれよ」
急激に勢いを無くし、今度はボソボソと呟く様に
「申し訳ありませんでした。名前だけで呼ばせていただきますわ」
ルイの感情表現を好ましく思ってくれたのか、どこか微笑ましい色を含んだ視線を表情にミランダの中になった誤解が解けたことがわかりホッと息を吐き、
「仲直りもできたし。せっかくなので温かい内に食べましょう」
焼きたてのスコーンが乗った平皿を言葉で刺し、コナーさんが淹れてくれた紅茶を一口飲むと、ミランダが取った後、ルイも手を伸ばしそのまま大きく口を開け一口齧る姿に、
「ルイ。よろしければ次はこのクリームとジャムを付けて食べてみてください」
ミランダが微笑みながらクロッテッドクリームと木苺のジャムが乗っている皿を指先で押しルイに進めると、ルイは頷きと共に手を伸ばし、スコーンを手に取ると
「上下半分に割っていただき、その上にクリームとジャムを乗せて食べてください」
ミランダの言われるままスコーンを手で上下に割り、たっぷりとクリームとジャムをのせ大きな口を開け口の中に入れた。
まさか大きなスコーンを一口で食べるとは思わなず、驚きミランダを見れば目を少しだけ大きく開けたが直ぐ様、微笑ましそうにしており横目でルイを見れば
リスが口いっぱいにどんぐりを入れ食べている姿と良く似たルイがおり、
可愛い。
ミランダの微笑ましく思う気持ちよく分かる。
心の中で何度も深く頷き、もう半分も同じ様に食べていたルイに、そっと自分のスコーンを差し出すと、口に合ったのか、視線は嬉しそうにしてにしているものの、
「いいのか?エスメの分だろう?」
遠慮がちに告げてくるルイに、
「大丈夫よ。多めに持って来たから食べてくれると嬉しいわ」
微笑み返すと、2度程スコーンとの視線の往復が行われた後、ゆっくりと手を伸ばしスコーンを手に取り食べ始めた。
微笑みを深くしながらルイを見ているミランダを眺めつつ、
明日のクックにお願いして、お土産はお肉がたっぷりのサンドイッチ持ってこよう。
ルイが喜んでくれるようなお土産を思い浮かべつつ、ルイが食べ終わるのを見計らい、
「ミランダ。よければ近日中に街へ行きましょう」
チラリとルイに視線を動かし伝えると、察してくれた様で、
「ええ。是非」
すんなり頷いてくれたミランダに思わず、
可愛いは世界を救うって本当なんだ。
頭の片隅で思うも、遠慮がちだったミランダが頷いてくれた事に嬉しくなり、
「ルイも一緒に行くでしょう」
半ば強制的にルイも入れ込み、
「行くなら、噴水広場で演者さんが居る時がいいよね」
1人で計画を立てて行く。
女の子が好きなお店はどこかな?
本屋に行きたいけどミランダは興味あるかしら?
街の事を説明しているルイと相槌を打ち時に質問をしているミランダの会話に耳を傾けながら自分の記憶を頼りにお店を思い浮かべていく。
時折話を振られるので言葉を返し、ミランダの雰囲気を見ていると初めて会った時より強張りが取れており、怖がっていたルイにはも穏やかに微笑み会話をする姿に心の中に安堵の息を落とす。
何も考えずにお祖母様のお気に入りのスコーンした自分を褒め称えるわ。
ルイのスコーンを食べる姿を見てからミランダの雰囲気か柔らかくなったし、ルイの警戒心も無くなった。
もしかするとミランダは男性が怖いのではなく貴族の男性が怖い?
貴族なら上下に割り、クリームとジャムを乗せて食べるのは当たり前でありマナーでも幼い頃から教えられるので当たり前である。
けれど、ルイはスコーンを割る事なくそのまま大きな口を開け一口で食べた。
貴族のマナーに反した食べ方。
色々思い浮かべると、自分が出した答えが当たりの様に思えてきたが、
ミランダ本人から聞いた訳ではないもの。
勝手な私の推測で判断してはダメね。
行き着いた考えを捨て、楽しそうに笑うミランダとルイの姿を目一杯愛でる事にした。
第164話
次々と梅雨入りの報が賑わっておりますね。雨に映える花々を見る機会が多くなる季節。
今咲き誇る花々を見るのも楽しいです。
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また、誤字脱字を教えていただき本当にありがとうございます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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