姉、友達を作る
街の入り口にあり来るのは祭りの日以来で宿の中には初めて入る
ぬくもり亭
名前の通り旅人の疲れを癒し、疲れた体に美味しいご飯を提供する人気の宿。
前の人生で馴染んだ名前なので街にあるお店の中で1番最初に覚たので買って親しみを持っていたが、中々くること叶わずいたけれど、
人助け
大人の女性と少女と大人の間の女性2人だけなら、安全に場所はここ以外思い浮かばなかった。
幸い、長期滞在もできる為、数ヶ月や年で部屋を取っても大丈夫な場所。
「こんにちは。女将さんいらっしゃいますか?」
ルイが開けてくれた扉を通り少し大きな声で挨拶と呼びかけをすると、紺色の暖簾から黒色の髪を1つに纏め上げた細身の女性が姿を見せてくれ、
「お嬢様。お久しぶりでございます」
にっこりと微笑んでくれたので、ルイと顔を見合わせた後
「女将さん。実はこちらの女性を泊めたいのですが部屋は空いていますか?」
後ろの居る女性を言葉だけで指すと、女将さんは笑みを深め
「ええ。1番上の角部屋が空いておりますよ」
1つの言葉と返事で、自分達に背を向け、部屋の端にある階段へ歩き出し登り出した。
「さ、行きましょう」
首だけで振り返し移動を促すと戸惑いながらもついて来てくれ、1番後ろにルイが数段開けて登った。
最上階1番角部屋は上位の方を泊める特別な部屋の様で、想像していたより広く寝室とリビングと水回りがある3部屋を女将さんが口頭で案内してくれ、
「まずは身を清めた方が落ち着くと思いますので、こちらをお使いください」
水回りがある部屋の扉を開けると、ミランダとコナーさんが顔を見合わせた後、
「では、お言葉に甘えて」
コナーさんの言葉の後、2人共水回りがある部屋へ入っていった。
「エスメ様、ご説明いただけますか?」
真剣な表情の女将さんの言葉に頷き、
「工房の帰りに空を飛んでいたら上空からルイが困っている様に見えたので声をかけました」
ここまでの経過を掻い摘みながら説明を続ける、
「色々会話をして気が付いたのだけど、故郷の話をするととても辛そうな表情をされるから、極力聞かない様にお願いします」
同じく真剣な表情で伝えると、おかみさんは頷いてくれ、
「畏まりました。長期滞在として皆に伝えておきます」
宿の予定も聞かずお願いしてしまった事に心苦しく思いながらも、ホッと安堵の息を吐くも、1番伝えなければならない事を思い出し、
「それと、男性が怖い様ですので極力女性の方に対応をお願いしたいです」
ミランダのルイを見ている姿と態度は怖さと怯えを見せており、コナーはルイの行動の1つ1つに警戒を強めていた。
何かあった事は明白であり、原因は男性であることも分かった。
新天地、安心して生活ができる場所を求め自領に来てくれたなら、とても嬉しい。
故郷の事を忘れたい程なら、自領の色に染めて仕舞えばいい。
ここは楽しいだのだと。
ここは安全な場所なのだと。
ここに住まいを持ち、永住しても良いと思って貰えるように。
「頑張ります」
左手で握り拳を作り決意を込めて告げれば、
「ご協力いたしますわ」
女将さんの言葉に頷き
「何考えてるかさっぱり分かんねぇけど、まぁ協力はするぜ」
ルイの心強い言葉に、
「ミランダとコニーさんを、この領色に染め上げよう作戦をここに開始します」
高らかに宣言をすし、
「女将さん。ミランダとコニーさんに美味しい食べ物の用意をお願いします」
視線を合わせ力強くお願いをすると
「畏まりました。消化の良い物をご準備いたしますね」
微笑ましそうに笑いながら頷きドアを大きく開けたまま部屋を出てゆくと、
「なんで、食べ物なんだよ。貴族ならお菓子じゃ無いのかよ?」
不思議そうに首を傾げるルイににゃりと笑い
「まずは、胃袋から掴むのよ!」
返事を返すと、理解できないとばかりの表情に、
「国によって味付けは違うわ。味が受け入れられないと苦痛を大きく感じるの。だからまずは味覚から慣れて貰うの」
噛み砕いて伝えたつもりでもルイには理解ができなかった様で、
「大丈夫よ。任せて頂戴」
胸を叩き、無理矢理ルイを納得させ、
「ルイ、申し訳ないのだけど、ミランダ達が出てくると思うから女将さんに知らせて来て欲しいの」
それとなく退出を促すと、
「分かった。行ってくる」
快く引き受けてくれ、部屋を出て行く背中を見送ればタイミングを測っていたようでミランダ達が水回りのある部屋から出てきて
「お気遣いありがとうございます」
ミランダの言葉に首を振り、
「気にしないで。すぐに食事か来ますので」
自分座っている、食事用の椅子へ視線を向けるとミランダは頷き腰を下ろしてくれたが、コニーさんはミランダの斜め後ろに立ち待機する姿に、
「コナーさんの用意もしておりますのでどうぞ座ってく下さい」
ミランダの横に座るように促すも、
「いえ。私はこちらで」
拒否の言葉を告げるコナーにどうすれば座ってくれるのか思案するも
「コナー、一緒にいただきましょう」
ミランダの椅子に座るように告げる言葉に戸惑いながらも、渋々椅子に座ってくれ、しばらくすると女将さんとルイが食事を持って部屋へ入ってきた。
「ミルク粥です。うちのミルク粥は蜂蜜の入った甘めの粥なんですよ」
木の器に入ってミランダをコナーの前に置いた食事の説明をする女将さんに
「ありがとうございます」
ミランダが微笑み礼を言う姿は、気品があり動き1つ言葉1つが鮮麗され雰囲気で貴族である事が分かった。
木のスプーンを持ち、ゆっくりと手前から奥へ動かし、7分目ほど掬い上げると唇に木のスプーンを当て角度を付け口の中へ流し、飲み込んでゆく。
食事1つでこんなに目が離せなくなる程の動きに思わず、見惚れていると
「エスメ。そんな意味られると食べ難いわ」
困ったように微笑むミランダに、
「あ!ごめんなさい」
慌て謝りを入れ、コナーさんの様子を伺うと一定の速さで食べて行く姿に、頷き
「口に合ったみたいで良かった」
空になった器を見つつ微笑みと共に告げれば、
「胃袋から掴んで、この領色に染めてくれるのでしょう?楽しみにしているわ」
楽しそうに微笑む姿に、
「勿論よ。これから沢山の食べ物を持ってくるから楽しみにしていてね」
あえて隠す事なく普段の声で女将さんとルイで話していた事が聞こえていたと告げるミランダに
「私、ミランダと友達だと思っているわ」
これからよろしくね。
笑顔で返すと、瞬間驚いた表情の後、
「ええ。こちらこそよろしくお願いします」
淑女らしい微笑みと共に帰ってきた言葉に頷き、
「ミランダとコナーさんが元気になったら街の紹介をしたわ」
これからのミランダとやりたいことを告げると、
「楽しみしております」
淑女の笑みのままの返事に笑い返し、
「だから、今日はお暇します。明日のアフタヌーンの時間にお邪魔しますね」
お伺いではなく強制のある言葉で告げれば、
「はい。お待ちしておりますわ」
ミランダの頷きとコナーさんの目での頷きを貰い、席を立つとミランダとコナーさんも席から立ち上がってくれたのを視界の端で見つつ、壁際に立っていたルイ元へ行くと、
「ルイさん。助けていただいたのにお礼を告げるのが遅くなり申し訳ありません」
ミランダの言葉に足を止め振りむくと
「あの時、助けていただきありがとうございました」
淑女の微笑みという言葉では足らな程の、輝くような微笑みにと鈴を鳴らしたような愛おしさを感じる声にまじまじとミランダを見るが、いつまで立ってもルイの言葉が聞こえず振り向くと、
首まで赤く染め、口に手の甲を当て視線を斜め下にしているルイの驚き、慌てミランダを見ると、先ほどと変わらない微笑みでルイを見つめており、
解る!年下の男の子が照れている姿って微笑ましいよね。
そう思い、心の中で何度も頷くも、いつまで立ってもルイが声を聞けず、不思議に思いルイを見た後再びミランダを見る事を数度繰り返していると、
これは、もしかして?
思い付いた事に心が高揚し、思わず声を上げかけるもどこからか気配を感じ顔を向けると、女将さんが笑顔のまま自分を見つめているので、思わず
視線で現状確認をすると、
頷いてくれ、
両手を上げ、声をかげたけるも女将さんの笑顔の圧が強くなり動かしてしまった両手はお腹の前で合わせ、ほぅと息を出し高ぶる感情を落ち着かせ、コナーさんを横目で見ると、眉間に谷間のように深い皺を寄せルイを見つめており、
再び微笑んだままのミランダを見た後
耳まで赤くしたルイを見、
恋が芽吹く瞬間を見ました。
心の中で言葉を告げた。
第161話
今流行りの恋愛表現はできませんが自分なりに表現できる様に頑張ります。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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