姉、令嬢らしく自己紹介をする
22/12/21 誤字修正をいたしました。教えてくださった方ありがとうございます
普段と変わらない表情なのにどこか困とは雰囲気を出しているルイに
身を小さくし警戒する態度と恐怖心を隠そうとしている白銀の女性と
その女性を背中に守り表情を硬らせながらも敵対する態度を表すキャラメルブラウンの女性。
ルイの困っているというのは間違いでは無いのだろうが、ここは街の外れに近い場所。
魔獣がいつ出てもおかしくないとディランとフレディから地図を見ながら注意するように言われた場所に、ルイもだけど女性が2人だけでいるの事が不思議で、
「ルイ。どうしてここにいるの?」
まずは知った関係であるルイに疑問を問い掛ければ
「毎日、この辺りを走って鍛えてるんだ。そしたら」
告げられる事が分かっていたのかルイはさらりと返事を返した後に続いた言葉が言い淀む。
走り込んでいたら、普段見ない人で女性だけだったから困り事かと声をかけたら
怖がられた。
尻窄みになってしまったルイの言葉を想像し、視線を向けると、キャラメルブラウンの女性の警戒する雰囲気か強くなり、
どうすればと思案するも、いつまでも同じ場所にいるのも危ないと判断し、
「私はエスメと申します。こちらの少年は街に住んでいる騎士の息子でルイと言います」
お祖母様から教わった箒を持っている為に空いている右手でスカートを少し摘み上げカテーシーをすると、息を飲む音が聞こえるも、
「訳あって家名は名乗れない事をお許し下さい。ですが、私もルイも怪しい者ではありません」
2つの息を呑む音を聞こえないフリをし挨拶を最後まで言い切り、ゆっくりと曲げていた膝を伸ばし、淑女らしく微笑むと、
頭の先から爪先までじっくりと見られるも、微笑んだまま表情動かさずにいるが、ルイの怒りを含んだ空気を出しだし、
「おい、失礼だろうが」
声を低くし告げた言葉に
「ルイ、ありがとう。大丈夫よ」
苦笑し返すと、
「大変申し訳ございませんでした。私、ミランダと申します。同じく訳があり家名は名乗れませんがお許しください」
背に庇われていた白銀の髪の女性が優雅にカテーシーをする姿に見惚れていると、キャラメルブラウンの髪の女性からの強い視線に気づき、
「ご挨拶ありがとうございます」
内心慌てるも、表情と態度に出さないように気を付け告げれば
ゆっくりと体を起こす姿とさらりと肩から背中へ流れる白銀の髪に気品と神々しさを感じ、ミランダが貴族だと解ったがあえて言葉にする事はせず、
「会えたのも何かの縁でございましょう。私はこの後街へ行くのですがご一緒にいかがですか」
ゆっくり穏やかに聞こえる様に喉に意識を集中させ告げると、
「お気遣いありがとうございます。よろしくお願いいたします」
同じく淑女の微笑みと鈴が鳴るような声での返事に、頷き視線で歩く事を伝えると、微笑み小さく頷いてくれた。
1歩半前を歩くルイの後を3人並んで歩いて行く。
「エスメ。イルさんはどうしたんだよ?」
後ろを見ないように気を遣いながら、それでも雰囲気が悪くならない様にと気を回してくれるルイの言葉に、
「急に閃いた事があって、1人で出てきたの」
いつもの様にルイの返事を返すと
「ちゃんと出掛けること言ってきたのか?」
子供達のまとめ役を行なっているルイにとってはいつのも事で当たり前の言葉なのだろうが、今世で初めて言われた言葉に、嬉しく思いながら
「心使いありがとう。ボニーさんと廊下で出会った皆さんにちゃんと言ってきたから大丈夫よ」
きちんと伝えてきた事を告げれば、
「1人で出て来て怒られてもしらねぇからな」
照れ隠しの様に呟かれた言葉に、小さく笑っていると
「お二人は仲が宜しいのですね」
キャラメルブラウンの髪の女性、ミランダさんの侍女でコナーさんを挟んで聞こえた言葉に、
「ありがとうございます。ルイには街に行くと声をかけて貰って助けて貰っているのです」
視線を向けるため少し体制を前にしミランダを見ると、微笑ましそうにでもどこか辛そうな表情をしており、
「ミランダさんは何か好きな食べ物はありますか?」
見てると心が締め付けられるので、ルイには申し訳ないが急遽話題を変更すると、
「そうですね。ビクトリアスポンジケーキが特に好きです」
無理矢理な話題変更だったにも関わらず、こちら側の意図を汲み取り、微笑みの表情のままさらりと答えられた初めて聞く言葉に
「ビクトリアスポンジケーキですか?」
想像ができず再び質問で返してしまうも、
「スポンジケーキの間に木苺のジャムやベリーのジャムを挟んだ、甘いケーキです」
ミランダの説明を聞いても想像がつか無いが
「美味しそう。作り方や材料は分かりますか?」
美味しい事だけは分かり、食べてみたい欲と見てみたい好奇心が目を覚まし、つい早口で聞くと、困ったように微笑んだ後、
「私が作り方は存じておりますが、作った事はありませんのでご容赦くださいませ」
少し硬いコナーさんの言葉に、
「はい。いつか教えていただけると嬉しいです」
ミランダが答え難い話題だったらしくコナーさんの言葉に頷き違う話題を振ろうと考え込むも、
「エスメ。ぬくもり亭に行けばいいんだろ?」
ルイからの言葉に、
「ええ。そのつもり」
頷き返事を返すと、2人の警戒心が強まった事が雰囲気で伝わり、
「ぬくもり亭は街の入り口に建っている宿です。御2人共お疲れでしょうからご飯を食べてゆっくり体を休めて頂ければと思います」
淑女の微笑みではない微笑みと共に返した言葉に、
「あの。私達は、その」
ミランダが言いにくそうにそれでも伝える事があるのか言葉を探しているが、
「困っている人を放っておく事はできません。何より、しっかり睡眠を取らないと良い考えは浮かびません」
拒否されないように言葉を強めて告げれば、申し訳なさそうにするミランダに
「後の事は、体を休めてから考えましょう」
ダメ押しとばかりに告げ、コナーさんを見上げれば
「ミランダ様、ご厚意に甘えましょう。これ以上無理をすれば体を壊してしまします」
こちらの意図とミランダへの心配が噛み合い、説得して暮れたことの安堵の息を出すと、
「エスメ様、ありがとうございます。ご厚意に甘えさせていただきます」
ミランダも納得してくれたようで、ぬくもり亭に向かって歩き出す中、
「ぬくもり亭のご飯は美味しいと評判なの。食べれるの楽しみ」
行きたいと思っていたが、ようやく行ける嬉しさに声を弾ませ告げれば、
「エスメって食べるの好きだよなぁ」
ルイのどこか呆れた声と言葉に
「食べることは生きる事。生きる事は食べる事。とても大切な事よ」
胸を張り告げれば、
「だからって、ショートブレットだっけ?流行らせるのはどうかと思うぞ」
ルイの言葉に
「いいじゃない。美味しい物や楽しい事は皆と共有すれば楽しい事も嬉しい事も喜びも倍になるのよ」
こんな楽しい事を広めないでどうするのよ。
唇を尖らせ、拗ねたように告げれば、
「まぁ。間違っちゃねぇけどさ」
呆れたと言わんばかりのルイの言葉に、
「ルイだって食べるの好きでしょ」
不貞腐れたように聞けば、
「考えたことねぇけど、そう言われると好きだなぁ」
神妙な顔をし頷き返してくれたので、
「そうでしょう」
頷きと言葉で返事をすれば、遠く目にぬくもり亭の看板が見え、そのことをミランダどコナーさんに伝えると、どこか安心した息を吐き出す姿に、
心の中で安堵の息を落とし、ほんの少し足速に歩き出した。
第160話
ここ数日、豪雨と言える雨の量に驚きつつ梅雨入りした事で対策に頭を悩ませております。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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