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母は想い祈る

子供達の声が風に乗って聞こえ微笑ましくなり思いながら手に持つ羽根ペンを動かし、礼状を書いて進めていく。


遠くから聞こえてきた声が近くに感じ顔を上げ窓を見ればエスメとディランが箒に跨り空を飛んでいる。


話を聞き、魔法省で初めてその姿を見た時あまりの事に気が遠のきそうになったが見慣れれば


今日も我が子達は楽しそうで良かった。


あの子達が楽しそうに笑ってくれるなら旦那様と学んだ愛情を持って育てるという事が出来ている事だ。


この思いが幸せな日々だと思えた。


それもエスメの専属メイドであるマルチダが顔色悪く震えながら姿を見せるまでだった。



手に持っていた羽根ペンが転がり落ち、震える出す体を抑える為に全身に力を入れ


「申し訳ないのだけどもう一度話してくれるかしら」


「エスメ様ご自身が外へ出、一緒に居た平民と思われる男性の肩に担がれて連れて行かれました」


2度同じ事を聞きようやく理解ができた。


震える足を叱咤し旦那様が居る執務室へたどり着けば顔色悪くした旦那様と報告に来た息子は今にも倒れそうな程の雰囲気と己の失態と後悔に問わられながらも貴族らしく次期当主らしく現状報告をしてくれた。


いてもたっても要られず息子を抱きしめ持てる愛情を注ぎ、最後は少しでも元気に慣ればと娘の真似をし


「ディランは憂いな表情をしていても可愛いわね」


告げた言葉に、驚いた後、照れ臭そうにでも恥ずかそうにする息子に、しっかりしているけどこの子もまだ10歳だったのだと実感する。


あの子は本当にディランのことは大好きなね。


親なのに、あの子を産んだ母親なのに初めて見る表情にため息が出てしまった。


ディランを見送り、自分の然るべき事をする為に自室へ戻りソファーへ腰掛けた。


旦那様がお帰りになあるのは深夜になるだろうから胃薬の準備が必要ね。


後、晩餐過ぎにディランの様子を見に行き明日の予定をすり合わせして、


明日の伯爵夫人のお茶会に手土産の確認とドレスコードの確認もしないと。


先ほど書いていた礼状も届ける様に手配も忘れずにメイドに伝えなければ。


頭の中で思い付く限りのことを思い出し予定を立てていくものの、

エスメの心配を心を締め気を抜けばぼんやりし泣き出してしまいそうになるのを堪える。


必死に体を動かし、礼状を書き上げ足のお茶会のドレスと手土産の確認を行い、

無理やり飲み込んだ晩餐の後にディランへ様子伺いへ向かえば、少し気分が落ち着いていたのか明日の予定を決めていたようで、家庭教師と武術の稽古を行い空いた時間は姉の部屋へ行き本を読んで過ごすと言う。


毎日繰り返して来た事を変える事なく行うのだと言う。


しっかりしている息子にもっと年相応で甘えてくれても良いのではと勝手な事を思うも、貴族としては褒められる態度にもどかしくなりゆっくりとディランを抱きしめれば、恐る恐る腕が回され


「お母様、明日もお忙しいのですよね。あまり無理をしないでくださいね」


告げられた労りと優しい言葉に思わす涙ぐみ


「ありがとう。ディランも無理をせずに過ごすのよ」


抱きしめる力を強めると恥ずかしそうに身動いだ。


可愛い私達の息子。愛おしい娘。


どうか何事もなくすごやかに過ごせますように。


切なる願いを込めディランの額にキスを送り、自室へと戻った。


ソファーに座ると額に手を当て真っ赤顔をしたディランを思い出し、帰ってきたエスメに聴かせれば大層口惜しがるに違いないと小さく笑い、メイドが気を利かせてくれた紅茶一口飲めば、全身から力が抜けた。


無意識に気を張っていたのね。私も女主としてまだまだだわ。


はしたなくソファーに背を預ける大きく息を吐き出せば、静まり返った部屋に目を閉じ身を任せる。


エスメは大丈夫だろうか?

何か怖い思いをしていないかしら?

帰って来たらしっかり反省をさせないと。


耳の奥から嬉しそうにお母様と呼ぶエスメの声を聞こえた様な気がした。


あのこが生まれた時から非日常が始まり、初めての子育てなのにさらに契約が重なりどうすれば良いのか分からずにいた。


女王様の生まれ変わりのなではと囁かれ、なぜただの公爵家に生まれたのか。

様々な事を想像され陰で言われる中、


本当は父親が違うのではないんかなど言われ悔しくて下を向いた時もそばには旦那様が居てくれ、

初めては勿論僕ですし、最後も僕以外ありえないですよ。もしかしたらうちの家系のご先祖さまに凄い方がいたのですかね。

笑顔で告げた言葉に、行った本人に加え聞き耳を立てていた周りの人々まで顔を赤くし、最後には侘びの言葉を告げてくれた。


貴族としての結婚だった。


でもエスメが生まれ、愛情を持って育てるという教育を行うことになり、勉強の為旦那様とエスメを抱いて街に出た時も、率先して案内してくれ広場で平民の夫婦や子連れを観察していればなぜか子供たちに囲まれてしまい少し戸惑いながらも挨拶をすれば、我先にと


「赤ちゃん可愛いね」


皆が同じことを良い、エスメを一目見ようとお包みの中を覗き込んでくるのをどう動けば良いのか分からずにいれば、


「私と奥さんの可愛い娘なんだ、皆、仲良くして欲しいな」


微笑んだ旦那様の言葉に一斉に


「こちらこそよろしくね」

「私お姉ちゃんだから仲良くできるよ」

「僕だって仲良くできるよ」


様々な音の声に頷き返せば、誰かの母親らしき人が近づき、


「ほら、あんた達赤ちゃんの困らせるんじゃないよ」


大きな声の注意にごめんなさいと謝りの言葉に大丈夫よ少し驚いただけよ。


微笑み返せば、


「普段は赤子を見ても近寄らないのに珍しいね」


不思議そうに首を傾げながら、腕の中にいるエスメを見た途端花が咲いた様な笑顔になり


「この子は誰からも愛される子になるよ」


何かを感じ取ったのか分からないが、夫人の笑顔と嘘偽りの無い言葉に自然と涙が溢れ

泣き出してしまうも


「初めてのことが多くて解らなくてどれが正解か解らなくて戸惑ってしまうけど、赤ちゃんも1人の人間なんだ。初めて同士なんだから解らなくて当たり前さ」


そう思い詰めなくても大丈夫さ。

言葉が分からないから泣いて教えてくれるんだ。何度だって聞き返せばいいさ。


その後も励ましてくれたけど、何よりも


「誰からも愛される子になる」


この言葉でどれだけ救われ心が軽くなっただろう。


貴族世界から疎まれて来たこの子がご婦人は愛される子になるという。


そうだあの子は貴族ではな

平民として暮らすのだから囚われる必要はない。


その子の好きな事をやりたい事をさせよう。


日々笑顔で居られるように育て守ろう。


ホロホロ流れる涙は様々な事を流し心が新たに彩り始めた。


エスメの笑う顔も声も

転けて泣いた顔も声も

驚き居た顔も声も


大事な大事な宝物

大切な娘


お母様


自分を呼ぶ声に応えるため手を伸ばす。


が、何も掴む事なく、寝ていたのかぼんやりとしていたのか部屋はいつの間にかランプが消え真っ暗になっていた。


「懐かしい」


こぼれ落ちた声に微笑み、窓を見れば月は見えず星々が瞬いていた。


どうか無事で。

第16話

「この子は誰からもあ愛される子になるよ」この一言が書きたかったのです。

もう少し家族のお話の後に主人公へと移ります。お付き合いいただけると嬉しいです。


雨が降ったら晴れたりと忙しない天候が続きますがどうぞご自愛くださいませ。


ブックマークや評価、⭐︎と押してくださりありがとうございます。

誤字脱字報告ありがたく思います。感謝しております。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。

よろしけれお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/






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