姉、疲れ果てる
毎日が朝起きて、イルさんからの書類を手渡され処理をしているとあっという間にアフタヌーンの時間になり、気が付くと夕食の時間となる日々は、あっという間に数ヶ月が過ぎ、
春から夏へ移動を終えていた。
王都より涼しく感じ、ついに太陽が夜の20時近くになっても沈まない日々が続くと、いつまでも太陽光が明るく書類が読めてしまうので、イルさんを中心にテアさん、ボニーさん、ハンナさんの声がかかるまで続けてしまい、
「体が重い」
朝の仕事をする為にベットから起き上がり身支度を整えるも、いつもより動きが鈍く感じ、重い足取りでキッチンへと向かう。
井戸の水ってこんなに重かったかしら?
毎日よく似た量を運んでいるのに今日はやけに重く感じ、いつもより手の動きが遅く、
「おはようございます。エスメ様」
キッチンメイドさん達から挨拶を貰うも、いつも終わっているはずの作業が終わっておらず、
「ごめんなさい。まだ、パンの発酵の確認とカトラリーの確認と磨きが終わっていなくて」
焦り謝りを入れると、
「では、手分けをして終わらせますね」
大丈夫だと笑い返してくれた姿に、嬉しくありがたく思う気持ちと申し訳なくて情けなくなる気持ちが混ざり、
「ありがとうございます。すみませんがよろしくお願いします」
言葉を返すと、微笑み返してくれ
「無理は禁物です。皆で協力して取り戻せばあっという間に終わりますからお気になさらず」
「いつも手伝っていただいてますからお気になさらず」
キッチンメイドさんだけではなくクック達からも言葉を貰い、何とかこなし朝食も食べる気にならずボアさんの話に相槌を打つに留まり、重く感じる体を引きずりランドリーへと移動し、
「おはようございます」
いつもより低い声での挨拶に驚いた表情を見せ、
「エスメ様、どうしたんだい?」
「ひどい疲れ顔だねぇ」
「ここ最近忙しいて皆、言ってたもんねぇ」
口早に告げられた言葉に愛想笑いをしつつ
「ご心配おかけしてすみません。大丈夫です」
返事を返し、自分の洗濯を持ち洗ってゆくがここでもいつもより作業が遅く、
「すみません」
いつも終わっているはずの量が終わらず、手伝って貰う
「気にしなくてもいいのよ」
「皆でやった方が早く終わるしね」
カラカラと笑いながら言葉と手助けして貰い終わらせ、
「ありがとうございます。本当にすみません」
恐縮しお礼を言えば、
「いいのよ。それより今日は休んだ方がいいよ」
眉を下げ言葉と同じく心配の色をした目を向けられ、
「ありがとうございます。そうします」
微笑み返し、ランドリーを後に自室に向かい、出会った使用人の人達と挨拶を交わし自室へ入れば、心配そうなボアさんと微笑んだイルさんに出迎えられ、
「エスメ様。紙刺繍の工房も軌道に乗りましたので、本日はこちらの書類をご覧いただいた後お休みになります」
鈍い頭でイルさんの言葉に頷き、椅子に座り机に向かい書類を手に取るとイルさんの説明が始まる。
が、聞こえはするが一向に理解が出来ず、ぼんやりと聞いていると
「お疲れ様でございます。本日はこれで終了です」
耳に入ってきた言葉に意識がはっきりし、慌て顔を上げるとイルさんが微笑んでおり
「本日、エスメ様宛に届いておりましたお手紙でございます」
5通の封筒手渡され、
「天気も良いですし、気分転換に外で過ごされるのも良いかもしれませんね」
背後にある窓に顔を向けながらの言葉に、体を捻り背後にある窓をみると雲が少なく綺麗な青空が広がっており、
「そうですね。行ってみます」
窓がらみえる空から視線を離さず返事をすると、
「私はこちらで失礼させていただきます」
胸に手を当て一礼をしたイルさんを見送り、
「イルさんもおっしゃっておりましたし、せっかくですので庭でピクニックでもいかがですか?」
近くに来ていたボアさんの言葉に頷き、
「いいですね。気持ち良さそう」
顔に力が入らないがなんとか微笑み、返事を返すと、
「テアさんが用意をしていますので、すぐにおこなえますよ」
促される様に誘われたので、椅子から立ち上がり庭へと向かうと木の影の下に布が引かれており、促されるまま腰を下ろせば、
バケットの中にはサンドイッチが入っており、
「朝食をお食べにならなかったとお聞きしたクックより手渡されました」
ぼんやりと見ていると、テアさんの言葉に
「ありがとうございます。クックにお礼を伝えてください」
ゆっくり手を伸ばし、一口食べると胡瓜の青さと甘さが口の中に人がり噛み締めると良い音が鳴った。
鈍く感じる味を噛み締め、手渡される紅茶を飲み、食べ終わると新しいサンドイッチに手を伸ばす。
ぼんやりとしながらもほんの少しだけ意識がはっきりしてきが気がして、最後のサンドイッチを食べ終え手渡された紅茶を飲み干すと、
「私達は離れた所におりますので、何かございましたらご遠慮なくお声がけください」
テアさんの言葉と共にボニーさんも離れていき、ぼんやりと空を流れる雲を眺めた後、膝の上にある手紙の存在を思い出し、1番上にあった手紙を出し読んでゆく。
お母様の手紙は季節の挨拶に始まり王都の様子、紙刺繍へのご婦人や淑女達の反応が書かれているのもの、
これから忙しくなると思うのでお祖母様によくよく相談し、周りを頼る様に。
少しでも多いと感したらイルに告げ手伝って貰いなさい。
決して1人で決めず、周りに相談をすること。
食事を抜かないように。しっかり寝なさい。
半分以上は自分の心配する言葉が書かれて嬉しく思いながらも心配をかけている事への申し訳なさを感じ手紙を封筒に入れ、
2通目に目を通すとお父様の手紙で、お母様同様に季節の挨拶から始まり王都での事は全部取り仕切るので心配しないように書かれており、紙刺繍の反応が良く今後の経営方針なとが書かれ、最後に
思い詰めないように。
何かあれば周りが助けてくれるので、すぐに相談しなさい
あまり無理をしないように。
体調管理に気を配るように書かれていた。
お父様の手紙を封筒に入れ直し、3通目を手紙を取り出すと
見慣れたディランの文字が目に入ると、鼻の奥がツンと痛くなり目の奥から涙が出てくるのを瞬きを繰り返す事で誤魔化すも、忙しさで忘れていた心の奥に仕舞い込んでいた感情が急速に心と思考を支配され、
文字を指先で撫ぜながら、空を見上げ
さみしい
あいたい
音の無い言葉が溢れ出てきた。
第72話
この話から暗い話になる予定です。なるべく短く終わらせる予定ですが未定なのもので
苦手な方はご容赦いただけるとありがたいです。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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