姉、結婚観を考える
朝起きてキッチンとランドリーの間に休憩といて働いている皆と話をしながら朝食を食べている。
昨日の出来事や、街で最近流行り出したお店など日常の出来事を中心に各所で盛り上がっている。
「殿下に婚約者が決まりましたし、学園卒業と共にご結婚とのこと。その時には王都を中心にお祝いの行事が行われるのですよ」
ボニーさんが宝石の様に瞳を輝かせ話してくれる話題に相槌をしていると、
「お隣の辺境伯に結婚報告のご挨拶にお見えになりますよ」
ハンナさんの言葉に不思議に思いながら頷いていると、
「辺境伯様は陛下の弟でございますので、殿下から見るとご親戚ですね」
テアさんの解説に疑問が解け頷く。
親戚への今後よろしくお願いしますのご挨拶ね。
どの立場も挨拶の中に様々な意味を含んでいるが割愛し、
「ウエディングドレスは綺麗でしょうね」
国の頂点に立つ人のお嫁さんならば、匠の技がふんだんに織り込まれたティアラや生地にデザインと刺繍に見えないだろうけど靴にも細部に渡っているはず。
前世で見た結婚式の特集雑誌の写真を朧げに思い出し3人に言葉を返すと、
「さようでございますね」
ハンナさんの微笑みと頷きの後、
「エスメ様のウエディングドレスもこの領民の技術者が集まりその技術を惜しみなく発揮した素敵なデザインのドレスが出来上がりますよ」
ボニーさんが頬を染めながら嬉しそうに教えてくれるが、
「それはありがたい事です。嬉しいです」
曖昧に笑って返すと
「ご結婚にご興味はありませんか?」
ハンナさんがどこか心配そうに尋ねてくれたので
「まずはディランがお嫁さんを貰って、その後フレディの結婚を見届けたらディランとお嫁さんの間に子供ができると思うんです」
表情を引き締め、真剣に告げると3人とも相槌の後、無言で次を促してくれたので
「ディランとお嫁さんの甥でも姪でも絶対可愛いと思うのです。そうこうしてたらフレディのお嫁さんも可愛い子供を産むと思うと、離れたくないなと思いまして」
さらに真剣味を出して話すと、3人3様違う反応をしていた。
テアさんがどこか嬉しそうに微笑みながら、
「それでは生涯この屋敷に止まらなければなりませんね」
頷いてくれ、ハンナさんが
「では、私達もエスメ様のお役に立てるように精進しなければなりませんね」
優しく見守る雰囲気と言葉の後に、
「エスメ様のウエディングドレス姿見たかったです」
残念そうに肩を落としながら告げるボニーさんに
「いつかできればとは思いますが、お相手が居ての事ですし」
苦笑いながら返事を返すと、
「確かにそうですね」
ボニーさんは顔をあげ微笑み返してくれ、
「殿下がご結婚となれば街はお祝いで盛り上がりますし、その時はお店はお祝い事だからと大盤振る舞いしてくれますので、エスメ様、ぜひご一緒に街へ行きましょうね」
更に数年後の楽しみな事を教えてくれたので、大きく頷き、
「是非、一緒に街へ行って美味しい物を沢山食べましょうね」
同じ様に微笑み返事を返すとランドリーに向かう時間となり、3人に断りを入れ席を立ち使用した食器を洗い足早にランドリーへと入り、挨拶を交わし自分の洋服を手に取り洗ってゆく。
手慣れてくると雑談にも花が咲き、
「殿下の婚約された方は、筆頭伯爵家のフェリシティ様でしょう。バラの様に気品が溢れ、知的で淑女としてのマナーも最高峰と書かれていたわね。見てみたいわぁ」
街にイルさんと出かけた時に見た新聞のそう書かれていた様な記憶があるが、流し読みをしてしまった為に記憶に確信が持てず頷くだけに止めると、
「なんでも宰相様のご令嬢で博識で他国の言葉も数カ国語が話せるんですって」
どこからとも無く聞こえた言葉に、感心しながら頷き、
「それは凄いですね」
返事を返すと、
「エスメ様の方がフェリシティ様より凄いわよ」
大きな笑と共に告げられた言葉に
「そんな事ないですよ」
曖昧に笑い手短に返事を返す。
ランドリーはキッチンに比べ平均年齢が高い為、雑談の内容に少し気を使うが気をつける部分さえ解ればとても楽しい。
あっちこっちに話が飛ぶも、フッした瞬間に再び婚約の話に戻り、
「エスメ様は気になる人は居ないんですか?」
なんとなく話の流れで聞かれるだろうなと予想していたので、
「ディランに夢中なので居ませんねぇ」
差し障りのない返事を返すと、
「確かに!エスメ様はディラン様意外に眼中には無かったわね」
「そうそう。ディラン様可愛いは口癖だもの」
「ディラン様が可愛いのは間違っていないもの。エスメ様の気持ち良く解るわぁ」
部屋の至る所から返事が返り、
「はい。ディランは可愛いです。この前も手紙をくれたのですが一緒に本を送ってくれ、その本がとても面白い冒険記だったのですぐに感想を書いてお礼と共に返事を書いて送ったので返事が楽しみです」
嬉々として話をすれば、
「ほら出た。エスメ様のディラン様の可愛い話」
カラカラ笑いながら嫌味ではなくさらりと出た言葉に、
「エスメ様の話すディラン様の行動を聞いてご本人に合うと、聞いているのと見ているのとでは違いが分かり微笑ましいのよね」
「本当に。ディラン様が跡取りとして頑張っていらしゃるのに、エスメ様から聞いているからか自分の子供の様に思えて微笑ましかったわ」
ディランの思い出話に花を咲かせるとあっという間にランドリーも終わってしまい、お礼を告げ自室へと戻ると、
「ディラン様とフレディさんから手紙が届いてますよ」
出迎えてくれたボニーさんの言葉に、驚きながらも封が切られた手紙を受け取り、読んでゆく。
季節の挨拶の後に無事に王都に着きお母様とお父様にご挨拶をした事。
友達との茶会の準備をしている事と自領で友達となった子が王都へ来ていた事。
来年に控えている学園への準備に入った事。
数枚に渡り、単的に書かれている文字をディランらしく愛おしく思い読み進めていると、
姉様は、以前も申しましたが手紙は単的に短く重要な部分だけをお書きください。
少し大きく書かれている文字が頭の中でディランの声で再生され思わず笑いが漏れる。
そこからは注意ごとが書かれており、ディランが心配しているのだと言う事が十二分に伝わり、
これは返事を書かなければ。
と、思い読み進めれば最後に
読んだ勢いで書かず、1日時間を置いてから書くことをお勧めします。
なんとも自分の行動を読まれた言葉に、ディランらしく
言われた通り明日書こうかな。
そう、思いフレディの手紙を読めば
ディランの行動と表情が事細かく書かれており、
さすがフレディだわ。私が見たかった表情が想像しやすいように書かれており、
何度も手紙を読む事を止め、想像を馳せる。
可愛さと、愛おしさが募り心が苦しくなり息を吐き出す。
読んでは止めを繰り返しようやく最後の文章にた取り付くと、
ディラン様の正装姿を拝見し万感の思いでございました。
と、締め括られ、思わず、
「正装姿!?」
立ち上がり驚きの声を出すとボニーさんが驚き目をこれでもかと見開いた姿とハンナさんの微笑ましそうに笑う姿が目に入ると急に恥ずかしくなり
「ごめんなさい。なんでもないです」
おずおずと座り直し、改めて最後の文を読み直し見間違いでは無い事を確認した後、
フレディ、どうして詳細を詳しく書いてくれないの!?
次回をお楽しみ。なんて雰囲気で閉めないで全部教えてよ。
先程までの感謝の気持ちがなくなり、
フレディ、覚えておきなさいよ!
心の中でフレディに闘志を燃やし、悟った顔のハンナさんから羽ペンと手紙一式を受け取り返事を書き始めた。
第154話
不安定な天気が続いていますね。間も無く梅雨入りでしょうか?
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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