姉、苦手を克服する
夜になってくると出てくる気持ちを朝日と共に奥底に隠し、毎日忙しなく過ごしてゆく。
春を迎えたといえ暖かい日もあれば、寒く1枚多く羽織る日もある。
日に長さもゆっくりとだけれども長くなり活動時間も長く取れるが、紙漉きの進行と紙刺繍のデザインなどこなさなければならないことが多く、バタバタを1日があっという間にすぎてゆく。
気が付けば、半月が終わり、
あっという間に1ヶ月が終わり新しい月に入る。
ディランとフレディからの手紙で王都に無事に到着し、お母様、お父様に会え、自領に来る前に行っていたお友達のお茶会も再会をしていると書かれていた。
久しぶりに友達と会え、沢山の話をし友情を育ててくれお姉ちゃんはとても嬉しい。
手紙には友達の名前は書かれていないので、多分あの子かな?この子かな?と想像しながら読み返事を返してゆくのも楽しい。
フレディも自領に居た時と変わらず過ごせているようで、ディランの日常を書いてくれてとても嬉しいしありがたい。
けれど、どうしてその場に自分が居ないのかと悔しくてならない。
つい、詳細を求むことを力一杯に何度も書いてしまったがフレディなら解ってくれるはず。
返事と共に街のお土産としてディラン、フレディと両親に贈りそろそろ着く頃だと思う。
神官さまの露店で買った飴はほんのり甘くてさっぱりとした味がとても美味しく、お土産にと手渡したお祖父様もお祖母様も喜んでくれたし、
約束だったけど一緒に街へ行けた事をへのお礼としてイルさんにも手渡せばとても喜んでくれた。
すごく嬉しかったし、
日頃お世話になっているキッチンとランドリーにもお土産として手渡すと、とても喜んでくれ、
「自分で稼いだお金で買い物ができるように頑張ろう」
ポツリとこぼすと、皆に苦笑されてしまった。
勿論、日頃手伝ってくれているテアさん、ボニーさん、ハンナさんにも手渡したが数が無いので自室に置いいつでも食べれるようにテーブルの上に置いてある。
紙漉きの進みはゆっくりながらも進んでおり、紙刺繍はまずは販売されている紙に刺繍をしてディランに贈ろうと方向が決まり、
必死に布と刺繍と向き合っている。
基本の針の刺し方と縫い方を何度も繰り返し、ようやく上達の兆しが見えてきたので簡単な花の刺繍をしてみようと、布に向き合っている。
お祖父様から、人を雇う提案と店舗展開の案を出されたので、そちらも同時進行で進めているが、1番最初に自分が紙刺繍を仕上げディランとフレディに送らなければ、雇用も店舗展開も進まないので、
追い立てられている状態でもある。
が、他所事を考えられない方が寂しさに心が囚われなくて有難かった。
そんなこんなで数ヶ月が過ぎ
夜も日が長くなり寝る時間も太陽が夕日として出ており、夏と呼ばれる季節へと移り変った頃
「できた?」
何度も繰り返し布で刺繍の練習をし、お祖母様方なんとか合格点を貰え紙へと刺繍を刺せるようになり、数えきれない程の刺繍をこなしてきた今日、
達成感から四隅にリーフチェーンをした紙刺繍を頭上に掲げたると、
「出来上がっておりますよ」
隣に座っていたハンナさんの言葉に
「素敵に出来上がっています」
ボニーさんの声を聞こえ、体に入れていた力を抜きまじまじと仕上げたばかりの刺繍を見つめた。
できれば下書きを書いて、針を通す穴を開け、そこに刺繍糸の通した針を入れればいいのだけれども、今世に鉛筆がなければ消しゴムも無い。
これ程に前世を羨んだことはないかもしれない程、日々羨ましく思ったが1周する頃には
無い物は無いのだから諦めが肝心。
と、自分に言い聞かせ、必死に頭の中で思い浮かべ、その通りに刺繍が刺せるように練習をこなした。
つい、ココをこうした方が良いかも。
と、違う方向に持って良いこうとすると失敗することも学べたので良かったという事にする。
アレね。料理本通りに作れば良いのに、違う調味料を入れて失敗するのと同じね。
前世で良くやったわ。
心の中で空笑しほんの少しだけ反省をし、出来上がった刺繍をお祖母様にお見せする為に訪問の許可を取りにボニーさんが退出をしている間に、もう1枚紙を手に取り、先程と違う色の刺繍糸を針に通し紙に刺してゆく。
成功した記憶のまま進めるのか成功させ続ける事ができる。
いつぞや読んだ本の1文を思い出し、実行してゆけば、1枚目よりほんの少し早めに終わり出来も良くなった気がしたので、続けて3枚目4枚目と刺してゆく。
微々たる物かもしれないけれど慣れて上達しているように感じれば刺繍をするのも楽しくなり、紙漉きにより力が入った。
お祖母様の判断は、家族内なら良いでしょう。
苦笑しながらも、貰えた許可に淑女らしくスカートを摘み礼をし退出をしたが、嬉しさのあまり廊下を走り自室へ戻れば、
机の上には羽ペンとインクに紙が用意されており、部屋で待機をしてくれていたボニーさんいお礼を告げ、
嬉しさの勢いのままディランとフレディにお母様とお父様へ手紙と紙刺繍にメッセージを書いていると、
イルさんの訪問に顔だけを上げ対応すると、
お祖母様の言付けをイルさんを通して怒られ、イルさんにも注意を受けたが、
些細な事。
「イルさん。封をお願いします」
そのまま自室にて蝋封をお願いし、手紙を託した。
第150話
参考にネットで様々な情報を得ているのですが、どこも奥深くつい魅入ってしまいます。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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