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姉、自分の立ち位置を知る


失礼にならない様に左右に視線を向け店内に入っていくと、笑顔で出迎えを受け案内される席へと座ると、


「是非、お嬢様に食べていただきたい食事がござまして、私の我儘で先んじてお願いをしておりまいた」


申し訳なさそうに微笑みながらのイルさんの言葉に


「楽しみです」


メニュー表を見ていないのでどのような食事ができるのか予想もつかず、楽しみにしつつイルさんと会話を楽しみながら待っていると、


「失礼いたします」


店員さんからの一言の後、数人の店員から紅茶と数枚の皿が並べられ視線を向ければ、レモンが乗ったケーキに湯気が踊る焼きたてのスコーン。


クグロフにショートブレットも並び、ディランとお茶会の時の定番メニューに嬉しくなりイルさんの顔を見ると、微笑み返され、


「さ、紅茶が冷めぬうちにいただきましょう」


カップを手に持ち紅茶をいただくと、香りが鼻に抜けると少しの苦味が口に残るも口の中がすっきりし、サンドイッチに手を伸ばした。


焼いたお肉が挟まれており、噛み締めるとお肉の弾力に旨味が広がり美味しくいただいた後に再び紅茶を飲むと、苦味と香りが口の中を整え直し、もう1つサンドイッチに手を伸ばした。


「ディンブラでございますな」


目を閉じ香りと味を楽しんでいるイルさんの声に食べてた手を止めると、


「美味しい紅茶を知る基本の紅茶でございます」


いつもと変わらない微笑みのままに告げられた言葉にカップを持ち紅茶をゆっくり口の中に入れると、先程と変わらない香りと渋みに首を傾げると、


「正統派の華麗な王様と呼ばれている紅茶ですので、この味を覚えるのもお茶会の基本でございますよ」


穏やかだけどやんわりと圧を感じる言葉に頷き、もう一度口の中に含み、舌の上で味わい覚えるように何度も繰り返した。


あっという間にカップが空になると、すぐさま新しい紅茶が注がれ、言葉でのお礼の代わりに目を合わし微笑むと、小さく微笑み返して貰え嬉しくなり、サーブされた紅茶を飲み


「美味しい」


言葉をこぼすと、部屋の雰囲気が柔らかくなったのを感じた。


レモンケーキを食べると砂糖の甘さが控え見でレモンの爽やかさと少しの酸味を口に残った所で、紅茶を飲むと、レモンの爽やかさと酸味が加わり、同じ紅茶なのにまた違った味に、


紅茶を楽しむという意味が少しわかった様な気がした。


マフフィンと紅茶も紅茶を中心に考えれば今までの美味しさとは違う、紅茶の渋みを引き立たさせマフィンの甘みと知り、


ショートブレットのポロリと口の中に崩れは紅茶の香りを口の中に少し長く引き留めてくれる。


思い付きで作ったショートブレットはお祖母様が気に入ってくれた訳が分かり、少し誇らしく思えた。


今までティーフードを楽しむ為の紅茶だと思ったけれど視点を変えれば、紅茶を楽しむ為のフードだと分かり、


視点を変えるって面白い。


慣れたお茶会だとても新鮮で楽しく心が弾みだす。


いつもよりゆっくりと食し紅茶を楽しみ、


「とても美味しかったです」


少し紅茶を飲みすぎお腹が膨れすぎた様な気がするも、この後も歩く事を考えれば大丈夫だろうと思いイルさんの手を取り、店を後にした。


「では、この近くですと奥様御用達のデザイナーが在籍している店がございますのでそちらへ参りましょうか」


お茶をいただいている最中に次はどこ行こうかと問われ、刺繍がみれるお店に行きたいと告げイルさんが思案したお店に、自然とせず伸び緊張しながら足を進める。


お祖母様のご贔屓店は以前、みんなで街に出かけた時に買い物をしたお店だから、店主の女性の顔は覚えているが、


「まぁまぁエスメ様。ようこそお越しくださいました」


笑顔で全身で嬉しいと告げる言葉に驚きながらも


「お久しぶりです」


笑顔で返事を返せば、


「今回はどの様な御用向きでございましょう?」


「刺繍をしてある商品を見せていただきたくてお邪魔しました」


笑顔に押されながらの問いかけに、なんとか微笑みながら返すと、


「畏まりました」


言葉を残し、壁にかけているドレスを手を取り、


「こちらではいかがでしょう?布はアイボリーで全体に新芽を表すリーフをグリーンの糸で縫い、蕾のバラは赤の刺繍で縫われております」


全面に刺繍を施されたドレスを息を吐くのも抑え気味にし近くで見ると、刺繍糸で少し膨らんだバラの蕾が可愛くて、今にも咲き綻びそうに感じ可愛くて微笑む。


「とても素敵ですね」


店主さんの顔を見ながら感想を述べると、


「こちらは、植物模様を刺繍したドレスになります」


生成色の生地に様々な緑の糸で縫われた葉と枝を繋ぎ合わせリーフを表現された刺繍に、思わず、


図面ください。


と言いたくなったが、ぐっと堪え、


「素敵な刺繍ですね」


ドレスや布の上品さはわかるものの、どう表現すれはいいのか分からず、ありきたりの言葉であえすと、


「紙に刺繍をされるのでしたら、このような植物の刺繍がよろしいかと思いますわ」


店主としての微笑みで告げられた言葉に驚いていると


「我々、店主や職人は常に世の中の動向に気を配り、流行をいち早く取り入れなければなりません。その最先端たるエスメ様の行動は常に最新の情報が入る様にしておりますの」


大人の微笑み言われた言葉に、受け止めきれず返事を返せずにいれば


「生活魔法道具は今や流行の最先端でございます。それを発案したエスメ様を注目しないはずはございませんわ」


小さく笑う主人に、苦笑で返事を返せば、


「勿論。今の情報はこの街のギルトに所属している上の者しか知り得ませんのでご安心ください」


想像をしていなかった事を告げられ、理解ができないまま告げられた言葉に戸惑いながらも苦笑していると


「気にすることはございません。彼らが勝手にやっていることです」


後ろで見守ってくれていたイルさんの言葉に頷くことはできず、返事を返せずいると、


「今まで通りお過ごしいただければ、ディラン様もご安心して王都で過ごされます。気にすることはありません」


いつの間にか膝をおり、視線を合わせてくれたイルさんの言葉に頷き返すも心が鈍くなり、先程までも楽しさで弾んでいた心が動かなくなってしまった。



第146話


梅雨入りの話を聞きました。あっという間に春が終わり初夏へと向かっているのに少し肌寒いですね。


ブッマークや評価、いいねボタンをいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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