姉、新しい出会い
活動報告に現状を書かせていただきました。ご一読いただければと存じます。
久しぶりに来た街は祭りの時とは違う雰囲気だけど、通りが穏やかで大きな荷物を背負い真剣な表情で歩いている人達や子供達が笑いながらかけており、ご婦人達が会話に花を咲かせたり、店で買い物をしたりと見る風景がとても新鮮で、首を左右に動かし見ていると、
「エスメ様、参りましょうか」
微笑ましそうに告げられた後、エスコートされたままだった手は握ぎられゆっくりと歩き出す。
街の中心にある大通りを歩き、時折荷物を積んでいる荷馬車き視線を取られながら、左右の店を見ながら歩くと
「エスメ様、申し訳ございませんが、こちらの店に立ち寄らせていただきたいのです」
キャメル色の扉の前で申し訳なさそうに告げられた言葉に、
「大丈夫です。どんなお店でもついて行きます」
にっこりと笑い扉を開けようと手を伸ばすも、先にイルさんが開けてしまい、手を引かれるままに中に入って行くと、
思わず声を漏らしてしまいそうになり慌て口を手で塞ぎ、改めて店の中を見渡す。
壁一面、本が置かれており興味を惹かれ1歩近寄ると、
「イルさん、お久しぶりですね」
穏やかな声に釣られ本棚から声の聞こえた方へ顔を向けると、お祭りの時に屋台を出していた男性が見え、
「屋台の店主さん」
思わず、声に出すと
「祭りの時はご購入いただきありがとうございました。本達はお役に立てておりますでしょうか?」
穏やかに微笑みながらの言葉に、
「はい。何度も何度も読み返しております」
頷き、返事を返すと、
「ようございます。本達も喜んでいることでしょう」
不思議な言葉に首を傾げると、何事もなかったかの様に、
「イルさん。今日はどの内容の本をお求めで?」
隣に居るイルさんとの会話が始り、
「魔法関係の書物と、薬草など野草の事が書かれている物があれば」
「なるほど」
淡々と交わされる会話を首を傾げねがら聞いていると、
「お嬢様。何か興味が惹かれる本がございましたら、お読みいただいてもよろしいですよ」
店主さんの言葉に頷きかけるが、イルさんの顔を見ると、
「この店から出ないとお約束いただけるのでしたら、お好きに過ごしていただいても大丈夫ですよ」
頷けれた後に告げられた言葉に頷き、イルさんの手を離し、
「お言葉に甘え、拝見します」
店主さんに目礼と共に告げ、最初に本を手に取りその場で読み始た。
時折聞こえてくるイルさんと店主さんの小さな声での会話を聞きながらも文字を目で追って行くとあっと言う間に本の世界に引き込まれててゆく。
隣国の吟遊詩人が歌い語った物語が多く載っており、
身分違いの貴族男性と平民女性との恋物語や
騎士の活躍を綴った詩
神々の物語
時折、平民のご婦人達に人気だった商品の話や貴族女性が夫婦間での悩みに復讐劇など俗世の話も盛り込まれており、
フッと前世の記憶で聞いた事がある嫁姑の話や夫婦間や子育ての話は、どの世界でも似た様な悩みで心が冷え表情が消えながら読んでいると、
「これはまた面白い本をお読みで」
すぐ近くで聞こえた声に意識を本から離し、顔を上げれば、
「嫁姑、夫婦、子育て問題は永遠に解決のない争いだけど、人の心の動きが良くわかる」
取扱説明書として読むのもまた一興。
聞こえてきた、言葉にどう返事をすれば良いのか分からず戸惑っていれば、
「また、変わった事を言って。お嬢様が困っているだろう」
初めてきたイルさんの言葉に目を大きく開き驚いていると、
「この男を街に住まわせたのは、私なのです」
想像も出来ない言葉に驚き、意味も無い短い驚きの声を上げると
「この者は知識が豊富な上、冒険者として多くに国を渡り歩き経験も豊富でございます。逃すのは痛手と思い、この店にて知識と経験を書かせて書物として販売をさせております」
お嬢様の買われた書籍もその1冊ですよ。
さらに告げられた事に、夢中になって読んだ冒険記を思い出す。
「その本も先日、書き上げたばかりで」
告げられ、店主さんの言葉が言い終わる前に
「買います」
食い気味に告げた言葉に、続くはずだった言葉が止まり
「買い上げありがとう」
出会い時にあった微笑みはなんだったのかと思う程に、どこかぼんやりとした雰囲気と声に
不思議な人だなぁ
この人が手に汗握る冒険記を書いたのかと思うと不思議に思うも、先程読んだ日常を表す表現を思い出すと、
のんびりとした、なんでも無い日常の一コマがとても大切な事なのだと。
同じ事は2度と起こらない。
そう、訴えてくる文章を書く人なのだと思えば、納得ができた。
作者が誰なのかを知れば手に持っている本にさらに愛着が湧きを抱き抱えていると、
「お嬢様。そちらの書物は屋敷に届けさせますのでお預かりいたします」
イルさんの言葉に、持ち歩けない事が寂しく思うも、まだ始まったばかりの街歩きを楽しむにはお願いした方が良いと思い直し、
「お願いします」
両手で丁寧に差し出し、イルさんに手渡した。
数冊の書籍の1番上に置かれた本を見つめ、屋敷に帰ったらすぐに読み直す事を心に刻み混んでいれば、
「大変お待たせし、申し訳ございません」
手続きが終わり、店を出る為に歩き出す。
「今日はありがとうございました」
新しい本と素敵な出会いに感謝を込めてお礼を告げると
「また、いつでもどうぞ」
微笑みはなかったけれど、やわらかな雰囲気で伝えてくれた言葉に頷き、イルさんと手を繋ぎ歩き出した。
第143話
暖かな日だと思うと夜になると寒くなり、服装をどうすれば良いのか悩み悩んでおります。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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