姉、念願を叶える。
知識は金であり武器でもある。
前世か今世か、はたまた何処かでで読んだのか、それとも聞いたのか頭の中に浮かんだ言葉に、
確かに。
と、力強く頷いた。
まさか、前世の記憶がこんなに役に立つなんて思いもしなかった。
お祖母様との面談の約束は予定が立て込んでいるという事で空いた時間を見つけ次第なった。
なれば、
「ありがとうございます。お祖母様にお会いできるまでに数枚、見本となる物を作りたいと思うのです」
仲良くなったメイドさん3人が、手伝うことがあればと部屋に来てくれので、お願いをすると、3人共笑顔で頷いてくれた。
昨日から手伝いには来てくれたメイドさんから引き継ぎがあったのか、言葉たらずの説明でも理解してくれ、全員でソファに座り、
「実は皆さんにお願いがありまして」
紙の作業を始めようとした所に言葉を挟んだため、動かしていた手を止め聞く体制に入ってくれたのが申しわく思うも、
「実は、名前でお呼び出来たらとずっと思っておりまして。図々しいお願いですが、皆さんの事をお名前で読んでも良いですか?」
初めて会った時にディランと共に自己紹介を受けており、その時から名前で呼べたらと思っていのだが、お祖父様とお祖母様のお屋敷のメイドさんに遠慮が出てしまい言えずにいた。
「勿論でございます。エスメ様のお好きなようにお呼びくださいませ」
正面に座っているメイドさんが許可をくれたので、視線を合わせ、
「ありがとうございます、テアさん、ボニーさん、ハンナさん。改めてよろしくお願いします」
正面に座るメイドさんは昨日も手伝いに来てくれたテアさん。
テアさんの右横に座るメイドさんはボニーさん。
自分の横に座っているメイドさんはハンナさん。
ここに来た時からずっとお世話になっているメイドさんの名前を呼べたことが嬉しく、つい、
「ハンナさんはどんな花が好きですか?」
数枚の灰色の紙をテーブルに並べ、どんな刺繍をしたら紙の色も好意的に捉えてもらえるかの話し合いの最中の会話の中でも、許可を貰えた事が嬉しくてつい名前を呼び話しかけるも、
「そうですね。スミレは小さくて可憐で好きですね」
紙の色と合わ無いのは残念ですが。
微笑みを深くし応えてくれるのでつい調子にのりかけると、フッと
姉様、落ち着いて下さい。
ディランの声が聞こえた様な気がして顔を上げ周りを見渡すも姿は見えるはずも無く壁にかけられているミモザのリースが目に入るだけだった。
「ミモザですか?灰色とも合う色です。刺繍の候補に上げてもよろしいかと思いますよ」
テアさんの言葉に、ぼんやりしていた意識を戻し顔を戻すと、灰色の紙の上の黄色の布が置かれており、言葉とおりどちらも馴染む色で、
「そうですね。1枚はミモザの刺繍にします」
雑談も交えながらの決定にかなりの時間を使ったものの、全ての紙にどの刺繍をするかが決まり、休憩を兼ねて紅茶を飲んでいると、聞こえたノックの音に首を傾げつつ返事をしソファから立ち上がり扉に向かいかけるも、ボニーさんの行動が早く、
「エスメ様、奥様がお呼びでございます」
振り向き告げられた言葉に
「すぐに行きます」
慌て、刺繍をした紙とデザインだけが決まった数枚の紙を手に持ち、お祖母様専属のメイドさんと一緒に向かい、部屋へ入れば、
「急に呼び出して申し訳なかったわ」
お祖母様の外出時に着るドレスのままの言葉に
「お忙しい中、ありがとうございます」
カーテシーをし告げた言葉に、顔を上げお祖母様を目を合わせると
「構わ無いわ。早速だけど見せて貰えるかしら?」
どこか満足そうに頷き、ソファに視線で誘導されながら告げられた言葉に、お祖母様が座ったのを確認してから差し出すと、
「素敵な発案ね」
眉間に皺をよせながらの言葉に、褒められているのか認められてい無いのか判断がつかず返事ができ無いでいると、
「エスメ。あなたにはもう1度、刺繍の基本から学び直して貰います」
ため息と共に告げられた言葉に驚き戸惑っていると
「リリーから手紙にて伝えられていたけれど、ここまで酷いとは思いませんでした。紙刺繍をするのならば必要な技術です。精進しなさい」
少し圧を感じる微笑みに、渋々頷き、お祖母様の手元にある刺繍をした紙を見る。
自分の中では過去1番のできだったのに。
心の中で息を吐き、お祖母様からの指示に従い
「はい。明日から練習いたします」
お母様との刺繍の練習を思い出し落ち込むも、
「とても素敵な発案よ。私も作りお友達に送りたいと思うのだけど、どうかしら?」
お祖母様の言葉に瞬時に心が浮上し、
「はい。是非、刺繍してください」
笑顔で頷き応えると、
「ありがとう。でも、エスメが送った後にしたいから連絡を頂戴」
「私の後ですか?」
微笑みお礼をくれたお祖母様の言葉に首を傾げれば、
「あら。ディランとフレディの驚いた手紙受け取りたいでしょう?」
可笑しそうに小さく笑いながらのお祖母様の言葉に、
「はい」
力強く頷き返事をすると
「姉様、刺繍が上手になりましたね。と、驚かせたいでしょう?」
さらに告げられた言葉に
「はい。驚かせたいです」
更に頷き応えると、
「驚いて貰える様に頑張りなさいね」
お祖母様の言葉に、頷き、
「明日から頑張ります」
決意を新たに告げ、お祖母様の部屋を後にした。




