姉、打開策が見つかる
今にも雨が降り出しそうな厚く灰色の雲が空一面に広かっているのをお祖母様の後ろにある窓から見え、
今日の紙漉きは中止かなぁ
暖かかった昨日とは変わり太陽が出てい無いからか肌寒さが感じ、乾燥させるには難しい天気となっている。
「確かに、紙だと言われればそうでしょうが」
厚さがまばらで灰色の紙を数枚見比べ、手に取りながらのお祖母様の言葉に頷き
「色があればと思い、糸を入れ漉いてみたのですが紙色からか合う色が見つかりませんでした」
技術面、デザイン面も補いきれず試作として提出した紙に評価は低かった。
最初だし、見た目も悪いから仕方ないか。
お忙しいお祖母様の時間を貰い、申し訳ない気持ちで
「もう少し、考えて試作を行ってみます」
少しでも早く退出をするために切り上げる言葉を告げるも、
「そうね。決して悪いわけではないわ。オークチュールと言う意味では紙の厚みも形も違ってとても良いと思うの。後はデザインね」
女主としての微笑か、それとも領主の妻としての微笑みか、初めてみる微笑みの後、
「灰色を生かせる色や絵柄など考えてみるといいわ。エスメ一人では手詰まりになるでしょうから、メイドに手伝いに行かせます」
どこか、勝ち気の雰囲気のお祖母様に心の中で首を捻れば
「後、お針子達にも相談できるよ様に話しを通しますから、必ず相談に行きなさい」
次々言われる言葉に戸惑いながら頷き、短く返事を返すと
「エスメ、とても良い着目点だわ。紙の色や質がよくなれば工房を作り街の人を雇える事になるし、特産物ができれば麦の育ちに左右されても、貧困になる事が少なくなるわ」
頑張りなさい。
思い付きで始めた事が自分の手の余る程大きな着地点を告げられ、心が怯んでしまうも
ディランが領主になった時に少しでも楽になるのならが頑張らなきゃ。
物心つく前からディランが領主としての勉強を精力的に行ってきた姿は1番近くで見ている。
「はい。頑張ります」
お祖母様の言葉に、力強く頷き返すと、
「頼もしいわね」
小さく笑ながら微笑んでくれ、心が軽くなるお祖母様に一礼をし退出をし自室へ向かう足取りも行きより軽く感じた。
紙漉きができ無いのならば、デザインを考えたり、素材を選別したりとやることは沢山ある。
そうと決まれば早速と意気込み本棚に立ったものの、自分の本棚にある書物は魔法関係や冒険記で装飾美術関係の書物が1冊も無く、どうすれば良いのか頭を抱えている中、ノックの音が聞こえ、
「はーい」
返事をしながら、歩き、扉を開けると、仲の良いメイドさんがおり
「奥様よりエスメ様のお手伝いをするよ申し使って参りました」
微笑みながらの言葉に、
「ありがとうございます。ちょうど困っていた所っだったので嬉しいです」
渡に船とばかりに手を引き、ソファに座ってもらい
「早速なのですが、この灰色を生かす色の助言をいただきたいです」
テーブルの上に置いてある紙を見せながら告げると、
「失礼します」
断りの後、手に取り裏表と何度も確認をした後、
「そうですね。やはり白が1番合う色かと思いますが、どの色みでも濃さの違いで合うかと思います」
さらりと出てきた言葉に、驚き、
「どの色でも合うのですか?」
予想外の言葉に思わず言葉をこぼすと
「はい。ドレスでしたら差し色として色を入れるますので、可能かと」
想像もでき無い言葉に返す返事が見つからずにいると、
「灰色のドレスは中々着用される方は少ないのですが、無いわけではありませんの」
自分の心と考えを汲み取ってくれたらしく、話しを進めてくれるので、相槌を打つと、
「実際にご覧いただいた方が早いかと思いますので、お針子の所へ参りましょう」
率先して話しを進めてくれるのに身を任せ、告げられるままにお針子さん達の所へお邪魔すれば、
「お話は奥様より伺っております。ご協力できることがありましたら遠慮無くお申し付けくださいませ」
快く迎え入れてくれ、メイドさんの話しをそのまま告げると、
「少々お待ちください」
一言告げた後、どこかへ行ったが布を持って帰ってきたと思うと、
「紙のお色は濃さも様々ですので、1枚1枚布を当てていくと理解がしやすいかと思います」
灰色の紙をテーブルに置くと上から様々の色の布を当てていった。
「確かに。色の濃さによって合う色、合わ無い色がわかりますね」
根気よく多種多様の布を当てると、無限といえる程の合う色が理解でいたので少し布の切れ端を貰い、
「忙しい中、ありがとうございました。またお願いします」
お礼と次も何かあった時に助けて欲しい事を告げれば、
「私どもの知識がお役に立てるのでしたら、ご協力は惜しみません」
笑顔で頷きと心強い言葉を貰え、やる気が漲ってきたので足早に部屋へ戻り自分の机に向かい貰った布から1本1本糸を抜き取る作業をし、紙の上に置いていく。
単純作業の為に集中しすぎてしまうと、程良い時にメイドさんが声をかけてくれ、休憩を入れたり、お茶を飲んだりし、小腹を満たしたりして再び机に戻るが、
数時間も同じ作業をしていると疲れが出はじめ、
糸が文字や絵柄に見えてきた
目の疲れからか焦点が合わなくなり、思考が明後日の方向へと向かい1人で小さく笑っていると、
フッと何かが記憶が頭をよぎり、
「刺繍をしてしまえばいいのでは?」
ポツリと呟いた言葉に
「刺繍でございますか?面白そうですね」
メイドさんの言葉が耳に届くと、頭の中で一気に前世の記憶が蘇り、
「あの、刺繍をするので、針と糸はどこにありますか?」
思いついたことを忘れない内にやりたくて、早口で捲し立てるように告げるとメイドさんも察してくれたのか
「急ぎ取って参ります」
足早に部屋から出ていった。
そうだった。
前世の親友の結婚式に紙に刺繍がされたカードを貰った記憶があるわ。
四葉のクローバーとてんとう虫が刺繍されてて可愛くて持って帰り大切に保管してたはず。
記憶を掘り起こすと、結婚式の準備に追われている友達の手伝いに行った時にオーダーメイドをしたと聞いた事を思い出し、
やってでき無い事は無い。
足早に戻ってきてくれたメイドさんから裁縫箱を受け取り、適当に目に入った糸を針穴に入れ、勢い良く刺した。
紙の厚みもあり、難なく刺す事はでき、糸も強く引っ張らなければ破れなさそうなので、なにも考えずに真っ直ぐ縫い
「どうですかね?」
メイドさんに意見を求めると、
「良い案だと思います。刺繍でしたら台となる紙は今の灰色で十分かと」
真剣な表情と返事に、
「お祖母様にお見せして意見を貰いたいと思いますので、空いている時間に会えるようにお願いしてもいいですか?」
いけるのでは?
心の中で踏み、善は急げとばかりにお祖母様に見ていただく為にメイドさんに縫った紙を手渡し、面会の約束を取って貰える様にお願いもすると
「畏まりました」
微笑みと共に一礼をし、部屋を出ていく姿を見送り、布から解した糸を見つめ
「相談すればこんなに早く打開策が見つかるものなのね」
1人で気負って、独り空回りしてて恥ずかしい
空笑いが溢れ、自分自身に苦笑した。
第139話
菜種梅雨でしょうか?雨予報が続くと聞きました。温度差にお気をつけご自愛くださいませ。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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