姉、ストレス発散方法は食べ物です
春うらら
太陽の光が暖かく、時折吹く風も優しく頬を撫ぜてくれる。
心地良く思わず誘われるように目を閉じ、感じる暖かさに身を任せるとふんわりと眠気がやってくる。
誘われるように眠りに身を任せかけるも、
「エスメ様、心地良い事は分かりますがこちらではお風邪をひいてしまします」
手伝いにと仲の良いメイドさんの一人が手伝ってくれながら、バケツに残ってる紙を漉き乾かしている最中だった。
灰色の紙は手紙にも使う事ができず、でも、何もせず捨てる事は勿体無いと思い折角なら何か使えないかと頭を捻り、ならば漉く為に使用している糸を柄として、残してみればどうかと様々な色の糸で漉き続けた。
縦糸と横糸の色を変えてみたり
太さの違う色の糸を使ってみたり
使えるがどうか分らないが何枚も作り続け、乾かしている最中、いつの間にか用意されていた椅子に腰掛けると眠りへのお誘いだった。
「ごめんなさい」
慌て目を開け謝りを入れ、周りを見渡すも太陽の位置も変わりがない様に見えホッと息をつくと、
「お疲れの様でしたら、お部屋に戻り眠られてはいかがですか?」
心配そうに眉を下げ伝えてこれた言葉に、首をゆっくりと振り
「体は大丈夫です。ただ、暖かくて眠気に負けそうになってしまって」
申し訳なく思いながら告げると、
「気持ちの良い日ですもの。エスメ様のお気持ちも分かります」
2人同時に空を見上げると、青い空に白い雲がゆっくり流れる風景はいつまでも見飽きる事がく、ぼんやりとしていると、
「1度お部屋に戻り、休憩を取りませんか?」
苦笑と共に提案に、頷き、
「そうですね。そろそろ喉も乾いてきましたし」
チラリとまだ雫が落ちている紙を横目に入れた椅子から立ち、メイドさんに誘導され自室へ戻った。
事前に準備されており、テーブルにはティーフードであるスコーンが焼きたてなのか湯気が見え足早にソファに座ると、さっと紅茶が置かれ、
「ありがとうございます。いただきます」
スコーンを横に割り、たっぷりのクロテッドクリームと木苺のジャムをのせ、大きな口を開けほおばる。
すぐさま紅茶を少量飲み、数度噛んだのち飲み込む。
その間にもスコーンに残ったクロテットクリームがスコーンの暖かさに柔らかくなってしまい、慌てもうひと口食べる。
紅茶を美味しく食べるために作られてティーフードとは前世だったか今世だったかそれとも思い込みか。
小麦の甘さ、バターの塩見と油分。
たっぷり乗せるクロッテットクリームのミルクの甘みとコク。
同じくクリームに負けないぐらいたっぷり乗せる木苺のジャムは甘酸っぱく、口の中を楽しませてくれる。
カロリーなんて気にしない。
これが、王道で鉄板の食べ方なのだ。
食べた後は運動すればいい。
前世と今世も体型に一喜一憂するのは女性に生まれたからか。
子供といえ気になる所は気になるが、今は野暮ということで頭の片隅なんかに残さず、
捨て去り、目一杯楽しむ事にした。
このクロッテットクリームでパンケーキが食べたいな。
生クリームより濃い味だから絶対美味しいはず。
クレープにものせて食べても良いよね。
あ、パンの中に入れて焼いても良いかも。
プリンをカスタードに変えてクリームを入れてもいいし、ジャムと一緒でも良いだろうし。
あ、食べたい。
絶対美味しい自信ある。
作ろう。
絶対に時間を空けて作る。
紅茶を飲みつつ、生まれた野望を胸に刻み、さっと出された白い紙と羽ペンを受け取り、先ほど考えた事を乱雑に書いてゆく。
メイドさんの小さな声の歓声が聞こえ、嬉しくなり、さらに次々とクリームに合いそうな食事を考え、一通り考えた尽きた所で顔を上げ、
「どうでしょう?合うと思いますか?」
給仕をしてくれているメイドさんに紙を見てもらい意見を求めると、
「とても美味しそうで、今からいただけるのが楽しみです」
微笑み頬を染めながらの返事に、
「クックとキッチンメイドとお祖母様にご相談してますね。試作を作る許可が出たらお声がけしますのでお願いします」
やる気が出てきたので、お祖母様に会う許可を貰えるように手紙を書き、メイドさんにお願いをすると一礼を貰い、背中を見送った。
紙の試作はほんの少しづつ進んでいる。
目の前の課題は、出来上がった灰色の紙の利用方法だ。
白が良いとされている為、灰色は敬遠される。
試作だし、再生紙だからと捨てるのは勿体無いので何かに使いたい。
が、使用箇所が見つからない。
牛歩並みの進みでも、進んでいる事ないは変わりない。
課題は山の様にある。
ディランとフレディがいれば、あっという間にできたであろう紙も一人だとつまづいてばかりだ。
「誰かに相談した方が良いのかなぁ」
ソファの背もたれにもたれ全身の力を抜き、天井を見上げる。
もう少し一人で頑張ろう。
目を閉じ、体の奥底から空気を吐き出した。
第72話
同じくストレス発散方法は食べる事です。夜中のラーメンは最高に美味しいですよね。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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