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姉、弟と従者に感謝する


紙の作業を始めてから数日、バケツの中の紙も良い具合に水分を含み柔らかくなっているのでそろそろ頃合いかとバケツを手に持ち、裏庭へと移動した。


紙を作る為の道具は無い為に、考えに考え簀桁すけたの代わりに手の平サイズの木の枠に不要になった糸で目を小さめに十字に括り付け簀桁すけたの代わりに作った。


バケツの中に簀桁すけたを入れ左右に揺すり紙が均等の厚みになるように注意して引き上げる。


「よし。これで乾かせば出来上がるはず」


今世、初めてにしては上手くいたと思える出来上がりで、干せる場所を探し首を左右に動かすも、準備をする事を忘れており、


滴り落ちる水滴を手で受け止めながら、邪魔にならない様に端にある草むらへ移動し漉いた紙を簀桁すけたから外そうとするも、


「取れないように糸を止めてるから無理だわ」


零された言葉と共に中断を余儀なくされため息を落とすも、どうにか外れないかと隅を指でいじるも取れず、


「仕方がない」


上下をひっくり返し、大きく振り落とすと、草むらに落ちた瞬間に縒れてしまい形が崩れてしまった。


「失敗かぁ」


大きなため息を落とし、崩れた形を直すも綺麗にはならず、


「ま、初回にしてはこんな物かな」


心の中でモヤモヤとした気持ちはあるものの、簀桁すけたなどの改良点は分かったので


「先ずは簀桁すけたと干す道具に場所ね」


指折り、次にやらなければならない事を整理し、失敗に近い紙が乾くのを横に座りぼんやりと待った。


聞こえてくるのは複数の男性の声。


時折、指示を出す声に一斉に返事を返す声が聞こえ、


なんだが部活動みたい。


前世の記憶が頭をよぎり小さく笑っていると、


「こちらにおいででしたか」


上から降ってきた声に、首を動かし視線を送ればイルさんか立っており、


「何やら、お作りになっていると聞きしまして見学に参りました」


微笑みの中に少しの好奇心が混じった視線は自分の横にある紙を見ている。


失敗したのだとヘラりと笑いながら、乾きの甘い紙を持ち上げイルさんに見せれば、驚いた表情と共に


「紙でございますか?」


インクが落ち切らず灰色の紙の説明をすると、


「なるほと。紙の再生でございますか」


真剣な表情に小さな頷きながら話を聞いてくれたので、


「いつもなら、つまる事無く進められるのに今日は失敗が多いみたいで」


愛想笑いで誤魔化しながら話をしていると、フッと今まで事を思い出し、


「そっかぁ。ディランやフレディが準備不足を先回りして準備してくれてたのね」


今回の準備不足の原因が判明し肩を落とすと、


「さようでございますな。以前、アイロンの時もディラン様やフレディはそのように動いておりました」


イルさんの言葉に自分は考えが足らない事を改めて告げられ、


「ディランやフレディには気が付かない所で沢山助けて貰っていたのね」


王都へ向かう為に馬車で過ごす2人を思い浮かべ苦笑していると


「逆に言えば、ディラン様もフレディも手を出し過ぎたとのだとも言えます」


微笑みながら返ってきた言葉に、驚き言葉を返せないでいると、


「今回の事で、足らない事を知ることができました。エスメ様は今後どういたしますか?」


いつもの変わらぬ微笑みの表情での言葉に、


「こんな事では諦めないわ。いっぱい試作して失敗の原因を突き止めて絶対に成功させてるわ」


握り拳を天高らかに上げ胸を張り宣言すると、


「僭越ながらわたくしめもご協力できたらと思います」


微笑ましそうな表情と共に返ってきた言葉に、


「よろしくお願いします」


頭を下げると、


「公爵家たる者、そう簡単に頭を下げてはいけませんよ」


すぐさま返ってきた言葉に慌て頭を上げ、謝りを告げるも


「今回はわたくしの心に留めておきますが、次は奥様へご報告せねばいけません。お気をつけ下さい」


硬くなった声と鐵げられた言葉にお祖母様との淑女教育というなのお茶会を思い出し、瞬時に数度頷き


「気をつけます!」


勢い良く返事を返してしまい、慌て両手で口を塞ぎイルさんを視線だけで見上げると微笑んだ表情でどう捉えればわからず、戸惑っていると


「エスメ様、そろそろお部屋にお戻りになる時間では?」


いつの間にか傾き始めた太陽に温かさを無くし、冷たい風が吹き始めており、


「片付けをしてきます」


離れた所にあるバケツを取りに足早に向かうも、手を伸ばす前にイルさんの手によって持ち上げられており、


「では、戻りましょうか。お忘れ物はございませんか?」


イルさんの言葉に周りを見渡し、手に持っている紙と簀桁すけたを持ち直し


「無いです」


返事を返し、2人で自室へと戻ってい行った。


第136話


姉弟を離したらこんなに話が進まないものかと驚くばかりです。


ブッマークや評価、いいねボタンをいただきありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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