姉、お祖母様とお茶会をする
23/01/28 誤字修正をおこないました。教えてくださった方、ありがとうございます。
ディランとフレディが王都へと旅立って数日たってもまだ、
「ディランはどう思う?」
自室で一人だった事もあり無意識に意見を求めてしまい、言い終わった後は言葉にしたくない気持ちが心を占める。
いつまでたっても切り替えができない自分が情けなくもなり、ついには
「エスメ、呼ばれた理由は分かりますか?」
お祖母様から呼び出され、一言目に言われた言葉に頷き
「はい。自分の行動についてです」
聞かれた言葉に答えを返すと、
「分かっているのなら良いのです。ですが、改めて言います」
凛とした声と女主てしての威厳の中、
「貴女は公爵家の娘です。朝食時の場所は使用人達と許しましたが晩餐まで許したつもりはありません」
告げられた言葉に返事を返すと、
「ディランやフレディが居ないだけで自己管理ができなくなるのはどういうことですか?」
怒っている雰囲気は無いが、座っているお祖母様が前世の学校の先生に見え立たされている自分は生徒の気持ちになり、奥底にある記憶に気持ちが引っ張られながら
「申し訳ありません」
思わず頭を下げかけるがお腹に力を入れ耐える。
「ディランが1番心配し貴女に伝えたと聞いていたけれど違ったかしら?」
圧を感じる微笑みに、
「はい。十分に気を付けるよう注意を受けております」
身を縮め返事を返すと
「エスメ」
ため息とともに名前を呼ばれるも
「すみません」
謝る事しかできず、申し訳けなさが心を占める。
原因は自分の行動で自覚もある。
目を背けたくて、お祖母様も独りの生活が日常になるまで時間をくれていたのも解っているし、お祖父様やイルさん達が見守ってくれたのも理解していた。
直さなければならないのも、解っている。
でも、ディランとフレディが居ない事を受け入れられなかった。
フッとした瞬間にディランがため息をつきながら注意をしてくれるのではないか。
フレディがひょっこりと勉強途中に迎えに来てくれるのではないかと。
心のどこかで期待して、待ってしまう。
日が暮れ夜が来て、ベットに入ると脳が2人が居ない事を理解し心が訴えてくる。
小波のようにやってくる感情から逃げたくて、ベットに入れば直ぐに本の世界に没頭する。
何日も繰り返していれば、寝不足で集中力も散漫になり、キッチンメイドやランドリーメイド達から心配され、クックやメイド長からも注意を受けている。
それも、やってくる感情を認めたくなくて逃げてしまう。
「エスメ。これ以上、こんな状態が続くようなら独り立ちの練習を中断させます」
そのつもりでいなさい。
ため息と共に告げられた言葉に下を向いていた顔を勢い良く上げたが、
「今の所各部署からの報告は来ていませんが、貴女に残る傷ができれば、その場の責任者に罰を与える事になります。この意味は解りますか?」
女夫人のお祖母様の言葉に視線を下げ、
「はい。十分に理解しております」
小さな声で力なく返すと、
「ディランもフレディも貴方から離れた事を後悔し悔やむでしょう」
告げられた言葉に目の奥が熱くなり瞬きを繰り返す。
溢す訳にはいかず力を込め瞼を閉じると、布が擦れる音が聞こえ、両肩に暖かな温度を感じ目を開けると
お祖母様の微笑んだ顔が見え
「私もあの子が王都の学園へ入学した時にとても寂しくて辛かったから、貴方の気持ちは解るわ。暫くは様子を見ます。頑張りなさい」
女主人から孫を思うお祖母様の表情と言葉に頷き、返す。
そっかぁ。お祖母様もお父様が学園に行ってしまったら中々会えなくて寂しかったんだ。
自分だけが苦しんでいる訳では無いのだと分かると、少し心が軽くなり、下がっていた口端が上がったのが分かった。
「少しお話をしましょうね」
庭にお茶の準備をして頂戴。
聞こえて来た言葉に、淑女教育のお茶会かと身構え体に力が入ると
「今日は普通のお茶会よ」
あからさまに反応してしまった事に小さく笑うお祖母様を眺めていると、釣られる様に口角が上がり
「お祖母様。お父様がどのように過ごしていたか教えて下さい」
先程ではお父様の話が気になり尋ねるれば
「ええ。赤子の頃から順を追って話て上げるわ」
お祖母様の微笑みが笑みに変わり、優しく背中を押されお祖母様の私室から庭へと出た。
柔らかな日差しに時より吹く風が咲いている花々を踊らせるのか視界の端に見ながら、
「子供の頃のあの子はやんちゃで良く旦那様と泥だらけになっていたわ」
懐かしそうに目を細め、優しい声の紡がれる思いで話に頷く。
「私、生まれも育ちも王都でしたから、旦那様の教育方針に日々驚きの連続でした」
時折ため息も混ざる話でも、お祖母様にはとても大事な思いでの様で怒っている様に告げる時も目の奥は優しさがあった。
お祖父様の婚約から婚儀。お父様の誕生から少年期。青年期の話をゆっくり聞き、
「あの子が王都へ行った後は本当に寂しくて、ついひょっこり現れるのでは無いかと無意識に探してもしまったわ」
頬に手を当てため息と共に零された言葉に、今の自分と重なり消えてきた感情がざわめき出す。
「居ないと分かっていても、心が求めてしまうのよね」
苦笑しながらの自分を思っての言葉に返事が返せずにいると、
「乗り越え方は人ぞれぞれよ。私の行動が参考になるのなら真似をしてみるといいわ」
じんわりと心に染みるお祖母様の優しさに頷き
「ありがとうございます。試してみます」
お礼と返事を返すと、暗くなってしまった雰囲気を変えるようにお祖母様の話は続き、お父様の初舞踏会デビューにお母様との婚約と婚儀の話で盛り上がっていると、
「お楽しみ中に失礼いたします」
イルさんの声と姿に話を止めると、
「あら、何かしら?」
気分良く話していた所を止められた事にお祖母様の言葉が少し棘があるように聞こえたが、イルさんは微笑みを崩す事なく、
「先程、旦那様から許可をいただけましたので急ぎ参りました」
柔和の声で告げられた言葉に首を傾げるもお祖母様は知っていたらしく
「貴方も、旦那様も甘い事」
指先で口を隠しながらの言葉に何かあるのかと好奇心が芽生えるイルさんの顔を見つめると
「エスメ様。この老耄と街へ参りませんか?」
胸に手を当てながらの言葉に
「はい!行きたいです」
驚くも、嬉しくてすぐさま返事をすると、
「エスメ、なんです?その言葉使いは」
お祖母様の注意を受け、
「お誘いいただきありがとうございます。ご一緒させてください」
改めて言い直しをすると、
「こちらこそ、お受けいただきありがとうございます。日時は改めてお伝えしてもできればと思います」
笑みを深くしたイルさんの言葉に心の中で大きく息を吐き、伺うようにお祖母様を見ると、
「日にちが決まり次第教えて頂戴」
怒っている様子はなく、女主人としての対応をしており、
お祖母様、素敵だな。
瞬間に切り替えができるお祖母様となんでもできるイルさんの会話を聞きながらも、
イルさんがお祭りの時に約束覚えてくれてた事への嬉しくなり、にやける顔を誤魔化すように紅茶を一口飲んだ。
第133話
桜前線が北へと向かっていると聞きましたが一緒に夏日にもなっているとも。寒暖差が大きい時期ですので皆様ご自愛ください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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