姉、弟とお揃いの物を持ちたい
青い空には白い雲を浮かび、足元を見れば青い花が先程一面を青に染め上げ、風が吹くとワルツを踊っている様に動いた。
シートが引かれた上にディランとフレディに挟まれる様に真ん中に座り、
「姉様、汚れると行けませんのでこちらをお使いください」
ディランから膝の上に広げたハンカチーフが置かれ、
「エスメ様、ナプキンに包んである所をお持ちくださいね」
持つ場所を伝えてくれながら手渡してくれるフレディに頷き、落とさない様に気を付けて持ち
「いただきます」
食事の挨拶を済ませると、一口食べると、キュウリのサンドイッチで数回噛むとお酢の酸味とワインのふんわりとした香り、バターの塩分がきゅうりに加わるとさらにキュウリの旨味を引き出してくれ、
「美味しい」
飲み込み、サンドイッチと膝の上に置きフレディから差し出された紅茶を飲み、ポツリと呟くと、
「外で食べるキューカンバーサンドイッチは格別に美味しですね」
ディランの言葉に頷き
「キュウリは滅多に手に入らないのに、私達だけ食べていいのかしら?」
気商品で本来ならお茶会の時に出るキュウリのサンドイッチを3人だけで食べている事に首を傾げると
「大旦那様からのいただきましたので、沢山食べてください」
手に持っていたカップをフレディが受け取ると共に告げられた言葉に、
「お祖父様にお礼を伝えないとね」
微笑みながら伝えると、
「先立ってお伝えはいたしましたが、改めてお礼をお伝えしますね」
ディランの言葉に
「お願いね」
頷き返すと、膝に置いたサンドイッチを手に取り再び食べ始めるが、
「フレディ、私達の事はいいから、食べて」
ディランだけではなく自分にも給仕をしてくれていたので、まだ食べていないフレディに声をかけ、サンドイッチの入っているカゴを自分の前に引き摺りながら置き
「ここならディランも取れやすいし好きな物を選べるでしょ」
にっこり笑いながら告げれば、
「そうですね。フレディ、気づかず申し訳なかった。一緒に食事を取ろう」
ディランの頷きと言葉に
「では、お言葉に甘えていただきます」
カゴの中のサンドイッチに手を伸ばし、食べたのを見た後、新しいサンドイッチに手を取ると同じくディランも自分で選び取り口に運んだ。
あっという間に長所が終わり、口直しの紅茶飲み終え、3人でたわいも無い話をする中、優しい日差しと時折吹く風が心地よく、視界に入る満開のネモフィラに自然と微笑み、
「あら、スミレも咲いてるわ」
ネモフィラの中にひっそり咲いているスミレを見つけ言葉にすると、
「本当ですね」
頷いた後、ディランが手を伸ばしスミレを1輪摘むと、先程ディランの耳の上にネモフィラを乗せた様に、スミレを乗せてくれ
「お揃いですね」
はにかみながらの言葉に、
「ええ。お揃いね」
嬉しさのあまり抱きしめると、すぐさま背中に手を回してくれには、心ゆくまで堪能し、
だったら。
ディランから離れた後にネモフィラを1輪摘み、右隣に座っているフレディの耳の受けに置き
「これで3人お揃いね」
すお告げると、少し驚いた表情の後、少し照れくさそうにはにかみながら
「ありがとうございます」
お礼を言われると、同じようにフレディからモネフィラが右耳に乗せられ
「どういたしまして、お花、ありがとう」
両耳にディランからのスミレとフレディからのモネフィラを飾りって貰うと、そろそろ良い時間ではと3人で片付けをし、再び馬車に乗り込んだ。
流石に人前では恥ずかしいというディランの言葉に頷き、耳に乗せていたモネフィラを取ると大事そうにハンカチーフに包みポケットに入れるのを眺めていると、馬丁さんから到着したとの知らせに、身支度を整え馬車を降りた。
家の前にはご迷惑になるので、街の入り口で止めてもらいそこからは3人で歩きルイの家を目指す。
街を歩けば、3日前にあった祭りに使用したミモザが飾られたままで、微かに余韻が残る雰囲気を楽しみ
「ごめんください」
3人を代表してノックと共に声をかけると、中から女性の声で返事が聞こえたので数歩後ろに下がりドアを開くのを待つと、
「どちら様ですか?」
快活な印象の声と共にドアが開き姿を見えたので、
「エスメと申します。お祭りの時にルイさんにカバンをお借りしたお礼で来ました」
貴族の微笑みとお祖母様の教えを思い出しながら来た理由を告げると、目と口を大きく開け驚いた表情のまま
「あら、やだ。そんな」
少し大きくなった声に、慌てたお母さんあるあるだよね。私も良く子供達に驚かされたわ。
頭の片隅に頷き、親近感が芽生える中、
「手持ちが無かったので弟共々、大変助かりました」
フレディから手渡された裁縫道具を差し出し、
「こちらはお礼です」
慌てふためくルイのお母さんの手にさりげなく手渡すも
「そんな大したものでは無いので、お礼はいりません」
言葉と返される行動は予想済みであったので、
「いいえ、遠慮なく受け取ってください」
微笑みに少しの圧をかけるも3度程、同じやり取りをするも
「そんなに仰って下さるなら」
と、受け取ってくれたので心の中で安堵の息を落とすも、
「その、大変不躾で申し訳ないのですが」
これから言う我儘なお願いを告げるのに枕詞を入れ、不思議そうにするルイのお母さんを見ながら
「お借りしたカバンを売っていただきたいのです」
打ち合わせもなし告げた言葉にディランとフレディが微かに驚きの空気を出すもすぐさま消し去り、見守る体制に入ってくれたのを感じ、そのまま続ける
「ミモザの刺繍がとても気に入りまして。勿論、お代は支払いいたします」
どうか、叶えていただけませんか?
どうしても、ディランとのお揃いの物が欲しくてお願いをすると
「あんなので良ければ貰ってください」
申し訳なさそに眉を下げ返ってきた言葉に
「お母様はお針子の仕事をしていると聞いております。その技術を無料でいただく訳にはできません」
力強く告げると、どまどいながらも頷いてくれたので、
「後にお代を持ってきますので、その時にお代を告げてください」
売ってくれとお願いをしているにもかかわらずお金を手持ちが無い我儘に頷いてくれたルイのお母さんに感謝し、ルイの家を後にした。
再び馬車に戻ると、
「姉様」
ディランからの呼びかけに
「我儘を言ってごめんなさい」
頭を下げ謝ると、
「ルイに代金を持っていく様に言いますので、気にしないでください」
僕もお揃いが持てて嬉しいです。
そっと抱きしめられながら耳元で告げられた言葉に顔をあげると、優しく見守っているフレディの顔を見え
「良かったですね」
双方良い意味が取れる言葉に微笑みディランの背中に腕を回した。
第130話
桜吹雪が降り注ぐと花弁キャッチがしたくなります。取れた事はあまりありませんか、挑む心だけは消えずにあります。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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