姉、未知なる生物と対面する
見える限り頭を下げ風に揺れる小麦畑に小さな声の歓声を上げればそれに答えるように小麦が風に揺れ擦れる音をあげる。
小麦狩りをして居る人達を眺め、時折、空へと視線を向ける。
自分が作り出した雨雲がやって来ないかを確認しながら案内されるまま歩き、小屋へとやって来た。
「お楽しみにしていたヤギだぜ」
掘っ建て小屋に簡易な木の柵の中には少し黄褐色の4足獣と鳴き声に驚き、動きを止めてしまう。
メイメイと鳴き動く獣を観察しゆっくりと青年側へ寄りながら近づく。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だって」
急に歩幅が小さくなり身を固くする姿に笑いながら告げれるも、どうにか心を持ち直しても怖い気持ちが取れず青年の隣に立つ事が精一杯だった。
気を決し恐る恐る手を伸ばす。
後、少しで触れるその時、
「噛むかもしれないから気を付けろよ」
青年の言葉に慌て手を引けば、声を上げ笑い出し
「そんなに怯えなくても大丈夫だって」
自分の怯えた反応に腹を抱ええ爆笑する青年の顔を見、
「騙したのですか?」
怒りが込み上げ問えば、笑いが止まらないのか
「騙しては居ないさ。噛むも噛まないもヤギの機嫌次第だからな、気を付ける事に越したことはないぜ」
目尻に溜まった涙を指で拭き取りながらの言葉に唇を尖らせていれば、
「動かない様に捕まえててやるから」
笑いがおさまったの慣れたようにヤギの顔を撫ぜた後、足元に生えていた雑草をむしり取り、
「ほら、こうやって草をやれば怖くないだろ」
ヤギに差し出せば美味しそうに食べ始めるのを眺め自分も足元に生えている雑草をむしり取り、恐る恐るヤギに向けさし出すと奪い取るかのように手から力尽くで取られた。
想像をしてなかった力と行動に驚くも何度か繰り返すうちに面白くなり自然とヤギの距離も近づき、ゆっくりと手を伸ばし頭を触る。
硬い
指先が触れる程だったが毛も硬く本で知った通りだった。
たが目の前のヤギには書かれていた角がなく、小さな耳が忙しなく動くのを眺めれば、何かを訴えるかのようにひと鳴きした。
なんだろう?
よくよくヤギを見て観察をすると更に訴える様に鳴き続ける。
どうして鳴いているのかさっぱり分からず途方に暮れていると
「そろそろ家に戻るか」
青年からの言葉に顔を向る。
「また明日見に来ればいいさ」
頭をひと撫ぜされ促されるようにヤギから背を向け来た道を戻って行く。
「さて、村の案内は終わったがこの後どうする?疲れただろう、昼寝でもするか?」
青年の歩きながらの提案に、首を振り
「お邪魔になるのは分かっているのですが、小麦の収穫の手伝いがしたいのです」
今朝から思っていた事を告げれば、困った表情に、
「お嬢様に農作業なんてさせられないなぁ」
首を掻きながらの返事に、
「ご迷惑になるのは分かっております。ですが何もしないのも嫌なのです」
美味しいお食事もいただきました。何かできる事をやりたいのです。
言葉を重ね願いを訴えれば、
「そこまで言うなら。ただし絶対に鎌は持つなよ。これだけは守ってくれ」
ため息の後、言われた言葉に
「必ず守ります」
頷き告げれば、仕方がないと言わんばかりの表情に
「1回、家に戻って着替えないとな」
ぽっつりと零された言葉に改めて自分の服を見るが気慣れた動い易いワンピースのどこがいけないの不思議に思えば、
「そんな良い服を汚したら取れなくて着れなくなっちまう」
困った様に言われ、確かにお気に入りなので着れなくなるのは困るが
「そうですね。ですが私この洋服しか持っておりません」
事実、急に担がれこの村まで着のみ着のままやって来たので変えの洋服など準備している事など無く仕方ないと気持ちを切り替えるが、
「流石にそれはダメだ。母さんのか年頃の似た子の服を借りよう」
代案を告げられ、それでしたらお願いしますと返事を返し昨日お世話になった青年の家へ足を踏み入れ、青年が洋服の案を婦人に告げれば、驚きの声の後、呆れながら外へ出ていく姿迷惑をかけてしまった事に申し訳なく思うも何もできないので、朝同様の場所に座り待っていると帰宅の言葉と共に手渡されたのは萌黄色のワンピースだった。
「これに着替えて。後、今来ている洋服は洗濯するから脱いだら持っておいで」
礼を告たえ、昨日借りた部屋で着替え終わると言われた通り来ていた洋服を手渡せば、
「よく似合うじゃないか」
満遍の笑みで褒められ、嬉しくなり顔中が熱くなる中
「ありがとうございます」
お礼を伝えるも
「洋服も着る人間によってこんなに変わるもんかね」
どこか釈然をしない雰囲気の声に改めて自分の姿を見るもよく分からず戸惑うも、
「気にしなさんな。お嬢様はどんな服を着ても似合うってことだよ」
婦人の言葉に分からないながらも頷き、
「ほら、行っといで。暗くなる前に帰ってくるんだよ」
畑に行く姿を見送られ、青年と共に歩けば頭に何か布がかけられると顎下で結ばれた。
「あの?」
視線を下げ、布を触れば、
「お嬢様は日焼けしちゃ駄目なんだろ?日除けとして被っとけ」
青年からの気遣いに、外に出る時はマルチダに日焼け止めを沢山塗られ日傘も差してくれていた事を思い出した。
「ありがとうございます」
青年の気遣いが嬉しく礼を告げ、足取り軽く畑に向かった。
何故か畑に居た人達に驚かれ手伝いをしたい旨を伝えればまた驚かれ、そんなに驚く事だろうかと不思議に思うも、青年から狩られた小麦を台車へ運ぶ指示があり、意気揚々と小麦の束を持ち上げ何度も何度も畑と台車を往復する。
やっぱり体を動かすのは楽しいわ。
嬉しそうに小麦の束を持つ姿を凝視もされ、何度も振り返り心配そうに見られるも自分は役に立っていると言う充実感と達成感で周りの視線は気にならなくなった。
被せられた頬っ冠りは日除けの意味もあるが、顔を傷つけ無い様にと意味があったのには気づかなかった。
第13話
村の生活を満喫中です。
文章だけで知っている生き物に会うのは未知なる生物との遭遇なのでは無いかと思いました。
ブックマークや評価、下にある星を押していただき、さらに誤字報告もありがとうございます。
嬉しく思っております。
再び雨予報が続くみたいですがこれ以上何も起きないことを切に願います。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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