姉、弟のお願いを叶えたい
ぼんやりしながら意識がゆっくり覚醒しだし、
瞼を開けるとほんの少しの違和感を感じるも、動き出した記憶が昨日の出来事を思い出し視線を動かすと
気持ち良さそうに寝ているディランの顔を眺める。
3日後、僕とフレディは王都へ行きます。
泣き出しそうで辛そうな表情に思わず抱きしめ、ディランの声に出せない願いを汲み取り一緒に過ごした。
起こさない様に動かないとね。
見飽きることのないディランの寝顔を堪能し、寝ている事を再確認した後、気配を消すつもりでゆっくりと慎重に動き、ディランから離れようとするが、
「あねさま」
動いてしまった事で目が覚めたようで、寝ぼけながら呼ぶ声に
「まだ、夜だから寝ていても大丈夫よ」
目の上に掌を乗せ、明るくなるつつ空が見えない様に隠し夜を作り出し、言葉でお思い込ませる。
「おやすみなさい」
空いた手でゆっくりと髪を透くように数度撫ぜると、寝息が聞こえ、慎重に瞼の上から手を離し撫ぜていた手を止め離すし、再びディランの寝顔を確認し、
ゆっくりと慎重に体を動かし、ベットから降りると、足音を縦に様に忍足で1歩1歩壁沿いを伝う様に歩き、
音を立てないように、慎重にかつゆっくりとドアノブを少しづつ回しそっと扉を開け、
よし。起きてないな。
3度目の確認をし、慎重に音を立てない様に集中しドアを閉めた。
良かった。起こさずに出れた。
前世で行ってた子供の寝かしつけの時みたいで懐かしいわ。
安堵の息を落とし、自室に戻りメイド服へと手早く着替え髪を結い上げて、室内帽に髪を入れ手早く結ぶと小走りにキッチンへ向かう。
ディランの寝顔を堪能していた為にいつもより遅くなってしまい、時間を取り戻すように手早く釜に火を入れ、足早に井戸から水を汲み湯を沸かす。
パンに発酵具合を確認しつつ、釜の火を調節し野菜を洗っていると、
「おはようございます」
キッチンメイドさんから挨拶を貰い、
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
笑顔で挨拶を返せば、次々とキッチンに人が集まる。
クックの朝食のメニュー説明を聞きつつ自分の動きを想像し組み立ててゆく。
邪魔にならないようにしないと。
皆が一斉に動き出し、自分はお祖父様のお祖母様が使うカトラリーの準備する。
ナイフにフォークは曇りがない様に磨きあげ、お皿は汚れや欠けがないかの確認。
細かな事を見逃さないように確認し終えると、次は使用した道具を洗う。
よく似たことの繰り返しだけど、違う事がある。
気を抜かずキッチンの作業を終えるが、今日はクックにお願いを伝える。
快く引き受けてくれた事へ感謝の礼を告げ、食堂へ移動し、
「おはよう。フレディ」
待っていてくれたフレディに朝の挨拶を交わし、正面に座ると
「おはようございます。エスメ様」
穏やかに微笑みながらのこ挨拶を貰えたので、
「ディランの様子はどうだった?」
昨日の事と早朝の事もあり、尋ねると
「いつもと変わらず。ですね」
さらりと返ってきた言葉に、
いつものディランに戻っている。と、言う事ね。
少し心配になるが、この後はランドリーの仕事がある。
「そう。いつもの様にランドリーの仕事が終わったらディランの部屋にお邪魔するわね」
意図は伝わったと頷き、ディランが普通通りに過ごすなら自分も従うまでと毎朝伝える言葉を言えば、
「分かりました。お迎えに行きますね」
毎日、伝えてくれる言葉をフレディが伝えてくれるので、いつもと同じ様にたわいも無い話をし、フレディと別れ、ランドリーで洗濯物をする。
昨日着た洋服は、生地が違うと言うことでランドリーメイドさんが洗ってくれるらしく、
「よろしくお願いします」
言葉と共に昨日着ていた服を渡し、自分はナプキンやシーツを洗う。
中々取れないソースの汚れを叩き洗いともみ洗いでなんとか落としすも、いつもより時間がかかってしまい、
シーツがいつもより洗えていない状態での退出となった事へ詫びをし、フレディと共にディランの元へ向かった。
ディランと共に朝食を取る為、昨日同様に早足でフレディと共に歩き、
「おはよう。遅くなってごめんねディラン。お腹空いたでしょう」
イルさんが開けてくれた扉を勢いを殺さずディランに向かい歩きそのまま抱きつけば、
「おはようございます。大丈夫ですよ」
挨拶と共に抱き返してくれ、心ゆくまで過したかったが
「ディラン様、エスメ様。朝食が冷めてしまいますよ」
やんわりとイルさんの切り上げを望む言葉に互いに苦笑し、ディランのエスコートで着席し、フレディのエスコートでディランが座ると、仲の良いメイドさん達から給仕が行われ、
「今日も美味しそう」
テーブルに並べられた食事の感想を告げると
「本当に。クックにはいつも美味しい食事を作ってくれ感謝しなければいけませんね」
ナイフとフォークを手に持ったディランの言葉に、同じくナイフとフォークを持ち
「明日、伝えておくわね」
嬉しくなり言葉を返すと、
「いえ、実は姉様にお願いがありまして」
食事をしながらの突然の言葉に驚くも
「私にできる事なら叶えたいわ。遠慮無く言ってちょうだい」
叶える気満々で伝えると、
「姉様が行ってる朝の仕事の様子を見学したいのです」
予想もしていない事をお願いされ、叶えてあげたいが自分だけではなくクックやランドリーメイドさん達の許可もいる。
でも。
「分かったわ。もし許可が出たら早起きすることになるけど大丈夫?起きれる?」
説得し叶えて貰うつもりではいるので、尋ねると
「大丈夫です。起きます」
力強く頷いてくれたので
「寝ていたら起こしに行くから安心してね」
むしろ起こしに行きたい気持ちを伝えると困ったように笑われ
「その時はよろしくお願いします」
お願いをいただいたので
「任せて」
笑顔で引き受けた。
ディランがお祖母様からの呼び出し中に、キッチンに向かいクックにディランのお願いを使えると、
「こちらの事はお気にせず。ディラン様のお心のままに」
すぐ様、許可を出してくれたのでお礼を伝え、その足でランドリーへ行きランドリーメイドへお願いを伝えると、
「この様な場所で恐縮ではございますが、いつでもお越し下さい」
こちらも許可を貰え、良いのかと首を捻るも、
「皆、エスメ様のお願いを無碍には致しませんよ」
微笑みながらのイルさんの言葉に、
「でも、居るだけで気になるし、もしかしたら邪魔になることもあるわ」
反対されるだろうと説得できる言葉を考えていたからか拍子抜けした気持ちで話せば、
「エスメ様とディラン様のの頑張りが信頼されても事でございます」
手早くハーブティーが置かれ、イルさんの言葉に嬉しくなり
「そうね。ディランの事を皆が認めてくれていると言うはとても良い事よね」
笑顔で頷き、ハーブティーを一口のみ、ディランが笑ってくれる顔を思い浮かべながらルイさんの給仕を受けながらディランとフレディの帰りを待った。
第126話
暖かくなり桜が満開にな咲き乱れております。これから桜前線は北へ向かうとのこと。SNSでの桜の写真を見るのが楽しくて止まりません。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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