姉、従者と共に弟を甘やかす
儀式が終わり明るかった日差しがオレンジ色に代わりだし、ステンドガラスから入る日差しも少なくなり神殿の中が薄暗くなる、中
「ごめんなさい。もう1回言って貰っても良いかしら?」
ディランの言葉は一言一句聞き逃すことはないけれどどうしても理解したくない言葉が聞こえ、聞き間違いであって欲しくて尋ねれば、
「3日後に僕とフレディは王都へ行きます」
硬った表情に普段よりかたく低い声に、ディランの言葉を理解しようと数度瞬きをしたのち、
「みっかご」
口から出た言葉は力なくこぼれ落ちた。
「はい。本来なら早く姉様にお伝えしなければならなかったのですが、どうしても言葉にできず申し訳ございません」
呆然としながらも、眉間に力を入れているのか立て皺が深く刻まれ、何かを耐えている姿に、
「謝らないで。私がお祭りに浮かれていて言えなかったのよね」
鈍いながらの頭を動かしディランに返事を返すと、
「いいえ。僕が姉様の元を離れがたく、先延ばしにしていたのです」
情けない弟で申し訳ありません。
頭を下げてしまったディランに思わず抱きつき、
「ディランは何も悪くないわ」
肩口に顔を埋めるディランの抱き締め、
「ディラン大丈夫よ。大丈夫よ」
初めて弱さを見せるディランにどう言葉を作り伝えれば安心して貰えるのか思いつかず、抱き締めた
太陽沈み空に月が登ると暗かった神殿は月明かりが入り夜を迎え
「ディラン様、エスメ様。屋敷に戻りましょう」
普段より低くゆっくりのフレディの言葉に顔をを上げると、微笑まれ、
「このままではお身体が冷えてしまします。お屋敷に戻りお話をませんか?」
従者の顔ではなく兄の様な表情に頷き、
「ディラン。屋敷に帰ろう」
フレディの声にも顔を上げないディランに告げるも、反応は無く馬車へ移動する為にディランの背中に回していた腕を緩めると、反対にディランの腕に力が入り、
屋敷に戻れば次期当主として顔を作り態度を示さなければならない。
できればディランの願いを聞いて上げたい。
でも、神殿にいると冷えて体調を崩すかもしれないし、ノア様達にご迷惑をお掛けしてしまう。
この手しかないけど、許してねディラン。
フレディと目を合わせると、意図を気付いてくれたのか苦笑しながら頷いてくれ、
「ディラン。そのままで居てね」
少し膝を曲げ、ディランの太ももの付け根辺りに手を回し、勢い良く抱き上げた。
「あ、あねさま」
驚きと戸惑いの声と、急に体が浮いた事への驚きに背中に回っていた手が首へと回り、少し不安定に体を揺らしたものの、なんとか持ち直す。
「ディラン。重くなったわね」
想像以上の重みが微笑ましく笑いながらの言葉に、
「姉様、危ないですので降ろしてください」
慌てながらも、落ちないように首に回した腕に力を込めながらの言葉に
「嫌よ。こんな機会2度と来ないかもしれないもの、存分に堪能ししたいわ」
笑いながら答えると、ため息の後、
「では、馬車の前までお願いします」
聞こえた言葉に
「任せて頂戴」
頷き、少しよろめきながら歩き出すとフレディが半歩後ろを歩き馬車へと向かい歩いてゆく。
安全に気をつけ、ディランを落とさない様に腕に力を込め1歩1歩慎重に歩く。
祭神の時はあっという間についた馬車も、慎重に歩いているからか長く感じ、歩くたびにディランの心配する気配が濃くなり、
「大丈夫よ。お姉ちゃんを信じて」
安心させるために告げると、
「どんな時も僕は姉様を信じておりますし信頼もしております」
聞こえてきた言葉の後に恥ずかしかったのか左肩に重みを感じ、
「ありがとう。私もディランのことはどんな時でも信じてるし、信頼しているし大好きよ」
ディランの可愛い一面を感じ、微笑ましくなる。
ディランの重みを全身で受け止め、
大きくなったなぁ。
これから身長も抜かされ、声も低くなってもう首を下にし顔を見るなんて事もできなくなってしまう。
男の子としての成長はとても嬉しい。
それ以上に寂しさが溢れる。
腕の重みでしんみりしていると馬車が見えて、足早にフレディが追い向き馬車の扉を上げて待機してくれた。
もう終わりなのね。
残念な気持ちで馬車の前に立つとディランが降りようと身じろぐが、腕を緩ませる事はせずフレディに視線を向けると、心得たとばかりに両手を伸ばし、ディランを受け取ってくれる。
「姉様。フレディ」
慌てる声を聞きながら1人で馬車に乗り込み、その後、ディランを抱き上げたままのフレディが乗り込み馬丁さんが空気を読んで扉を閉めてくれた。
恥ずかしそうに俯くディランを眺め
「お願いします」
馬丁さんに座ったことを知らせるとゆっくりと馬車が出す。
フレディの膝の上に座るディランよ横から抱きしめ、髪を漉くように撫ぜ、
「3日間、ずっと一緒に居ようね」
フレディの太腿の上に座るディランを少し首を上げ告げると、ほんの少し目が合った後、頷いてくれた。
普段よりゆっくりと進む馬車の中、誰1人口を開く事なくそれぞれがゆっくりとした時間を堪能し馬車は屋敷へと到着し、
「お帰りなさいませ、エスメ様、ディラン様」
出迎えに外で待ってくれてたイルさんの言葉に
「寒い中ありがとうございます。ただいま」
「出迎えありがとう」
ディランと共に挨拶をお礼をイルに告げると笑みを深めてくれ
「食事、湯のあみの準備が整っております」
全員で屋敷の扉を潜りながらの言葉に
「ありがとうございます。お風呂を先にいただいて、晩餐はディランの部屋でいただきたいです」
毛足の長い絨毯の踏み締め、階段を登りながらの言葉に
「畏まりました。ご準備いたします」
互いの部屋の前でイルさんと別れ、
「ディラン。お風呂に入ったらすぐに行くから待っててくれる?」
次期当主としての顔と態度をとっているディランを抱き締めながら告げると背中に手を当ててくれ
「はい。お待ちしております」
互いに1度力強く抱き締めた後、自分の部屋へ入り、手早くお風呂に入り、髪は魔法を発動させ乾かし、身なりを整え貰い、
「ありがとうございます」
手伝いをしてくれたメイドさんにお礼を告げ、足早にディランの部屋の扉をノックをすれば、フレディが対応してくれ、晩餐の席までエスコートされ、席に着き、
「遅くなってごめんなさい」
すでに座っていたディランに詫びすると
「いいえ。急がせてしまし申し訳ありません」
ディランからもお詫びの言葉が返り、
「気にしていないわ。さ、いただきましょう」
ナイフとフォークを手に取るとディランも同じように手に取り食事を始めた。
暖かい白いパン、野菜のスープにお肉が数種類。
自分の食べる速さに合わせディランも食べてくれるので、少し早めにたべ終え、フレディの入れてくれたお茶を手に、床に置いたクッションの上にディランと座り、ゆっくり、時折会話も楽しみながら過ごすと、
「ディラン。眠いたならベットへ行きましょう」
船を漕ぎ出したディランに声をかけるも、首を振られ
「大丈夫です。眠たくありません」
ぼんやりとした眠気の混じった声と言葉に、
「そっかぁ。でも、お姉ちゃんは眠たくなってきたらベットへ移動しない?」
頭を撫ぜながらお誘いをすると、頷いてくれ、再び抱き上げベットへと運び、2人で布団に入り
「ディランが寝るまでお話しようね」
横になりがら手を繋ぎ伝えると、ゆっくりと頷いてくれたもののすぐさまディランは瞼を閉じ夢の世界へ入ってしまい。
「フレディ、私もこのまま寝るて、明日ディランを驚かせるから」
ベットの足元で様子伺いをしてくれているフレディに悪戯心と共に告げると、
「畏まりました。朝食のご準備もこちらでいたします」
胸に手を当て従者として礼をした後、
「おやすみなさいませ」
挨拶をし終え、部屋を出ていく背中を見送った。
第125話
間も無く桜の見頃を迎えますね。楽しみですが花より団子が好きなので春の新商品の購入に手が止まりません。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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