姉、弟の可愛さを表現する言葉が出てこない
意識が朧げなまま屋敷に戻り、気が付くとイルさんがティーカップを手に持ち立っており
「お気づきになりましたか?」
我に返り周りを見渡すと、お祖父様とお祖母様が上座に座り右隣にはディランが居る。
記憶があるのは子供達と別れた広場で、今はテーブルの上には貰ったお菓子が並べられ、イルさんとフレディが給仕でお茶を楽しんでいる。
「姉様?」
様子を伺う様に顔を覗き込み声をかけてくれるのゆっくりと視線を合わせ、
「ディラン?」
目の前に居るディランに恐る恐る名前を呼ぶと、手を握ってくれ
「お気を確かに」
心配の色を濃くし、握ってくれた手に力を込めてくれる。
落ち着いて。
状況を整理り把握しなきゃ。
お祖父様とお祖母様の前で失態をする訳にはいかにないわ。
小さく、そして細く深呼吸をしゆっくりと記憶を掘り起こす。
夕方と夜の間の時間に広場に到着したけれど、遅くなってしまったことに親御さん達が心配をし迎えに来てくれていたのは覚えている。
そこから、1人また1人お別れの挨拶をしてディランとフレディ。そしてディランに抱っこされたミラとミラと一緒に帰るルイが残った。
ミラがディランから離れる事を嫌がった姿が可愛くてずっと見ていたかったけど、間も無くくる夜の闇になる前に家に返してもあげたかった。
だからディランとフレディで説得したら、ミラも納得してくれ笑顔でお別れの挨拶をした。
けど、
「フレディに可愛いお嫁さんができた」
お嫁さんにしてねとミラはフレディの頬にキスをした姿を思い出し、勢いよくフレディに顔を向けると苦笑しており、
「フレディ、ミラはどこ?」
普段出さないような低く固い声で訪ねると、
「ご自宅にお帰りになりましたよ」
困った様に微笑み告げられた言葉に
「実家に帰してしまったの!?」
驚き、大きな声を出してしまったことに慌て両手で口を塞ぐも、
「面白いことがあったみたいだな」
楽しそうに笑いながらのお祖父様の言葉に慌て正面に向き直し恐る恐る視線を向けると、口元に左手を当て小さく笑うお祖母様の姿が見え、体の中に安堵の息を落とすも
「フレディ。貴方の可愛いお嫁さんはいつ紹介して貰えるのかしら?」
お祖母様の揶揄う言葉に、申し訳なく思いながらフレディを見ると、
「私には勿体無く。お気持ちだけ頂戴いたしました」
真剣な表情の中に少し困った雰囲気が混じった言葉に、心の中で謝り再び正面を向き自分の前に並べられているお菓子に視線を落とすと、
砕けてしまったクッキーに形を崩したマフィンが見え、ミラの転けた勢いを物語っていた。
ミラ大丈夫かしら?痛みに泣いてないと良いけど。
両膝の擦り傷を思い出し、息を落とすと、
「大丈夫です。ご両親もご一緒ですし、ルイにフォローを頼んでおります」
心配の色をを宿したままのディランの言葉に頷き、
「そうね。ルイがいるのから大丈夫よね」
微笑み返すと、同じ様にディランも微笑み返してくれた。
「楽しいことが沢山あった事は分かったわ。どうして子供達と一緒にいたのか経過を聞いても?」
小さく笑っていた表情から微笑みに変えたお祖母様の言葉に頷き、街での出来事をディランと共に話していく。
「そう。ルイに誘われたのね」
時折、紅茶で喉を潤しながら、屋台での見た商品、クックの友達の店で食べたご飯とプリンの話。
ルイに誘われ街中を歩きお菓子を貰った話をし終えると、お祖母様の頷きと共に零された言葉に表情を伺うと怒っている雰囲気は感じられず、
「とても楽しく、貴重な経験をいたしました。ルイには感謝しかありません」
ディランの嬉しそうに微笑みながらの言葉に、子供達に困りながらも接していたディランの可愛さと微笑ましさを思い出し、頷き
「街の方々を挨拶をし短い会話でしたがお話できた事はとても嬉しかったです」
お祖父様とお祖母様に伝えると、
「貴重な体験をしたのだな」
お祖父様の慈しみの表情と言葉にディランと共に頷くと、
「子供達と神殿に姿を見せた時は驚きましたが、良い経験だできて良かったわ」
お祖母様の言葉に申し訳なく思うも、フッと浮かんだ疑問が急に気になり
「あんなにディランと離れたくないと言っていたミラはどうしてフレディのお嫁さんを希望したのかしら?」
首を傾げ、ディランを見るも
「そればかりは、ミラに聞いてみないと解りませんね」
驚いた表情からすぐにいつもの表情に戻し、返してくれたが
「乙女心というものはそう言うものなのよ」
笑みを深くし教えてくれたお祖母様の言葉にディランと共に首を傾げると
「貴方たまにはまだ早いかしら」
慈しみを深くし目を細め微笑んでくれたお祖母様に分からないながらも頷き返すと、
「確かに俺も今だに乙女心というのは解らんな」
カラカラと笑いながらのお祖父様の言葉にお祖母様は呆れた表情で見ているも
「だが、ソフィアの事なら何を考え何も思っているか解る」
お祖父様のお祖母様の事ならなんでも解るという言葉にお祖母様が顔を赤らめ恥ずかしそうに両手で顔を隠してしまった姿を見て、ディランと共に顔を見合わせ
「お祖父様はお父様によく似てると思うの」
内緒話をするように声をひそめて話すと、
「そうですね。お祖母様もお母様と良く似てらっしゃいますね」
同じ様に声をひそめてく、返してくれた言葉に
「似たもの夫婦と言うことかしら?」
首傾げ伝えると苦笑され、
「お祖父様、お祖母様。そろそろ部屋に戻ります」
ディランに手を取られ、立ち上がるディランに軽く引っ張られるように立ち
「おやすみなさい」
慌て、お祖父様とお祖母様に挨拶をしディランにエスコートされ部屋を後にする。
急な退室をしてしまい戸惑い部屋がある方向を振り返るも
「あれ以上いると、かえってお邪魔になってしまします」
ディランの言葉になんとなく理解ができ
「そうね。お父様とお母様にもあんな雰囲気になった時があったものね」
王都にいた時を思い出し笑っていると、
「姉様。明日に備えそろそろ休みませんか」
心使いを感じる言葉に、
「今日は沢山歩いたものね」
予想外な出来事と体験を沢山し眠気などはやってくる気配はないが、明日は神殿で祭りの最後を告げる儀式を行う。
だからと言って、早朝のキッチンやランドリーの仕事を休む気はない。
寝れなくてもベットに横になれば疲れは取れる。
ディランの心使いをありがたく受け取り部屋までエスコートして貰い、
「ディラン、フレディ。おやすみなさい」
挨拶をし
「おやすみなさい、姉様」
「おやすみなさいませ」
ディランとフレディからも挨拶を貰い部屋に入れば朝準備を手伝ってくれたメイドさんを居り、
「お帰りなさませ」
3人同時に挨拶を貰い
「ただいま帰りました。遅くなってしまいすみません」
挨拶と共にお詫びをすると、
「とんでもございません」
微笑みながら詫びたことを否定してくれ、手早く服を脱がせて貰い湯浴みの手伝いをしてくれナイトウェアまで着せてくれ、
「おやすみなさいませ」
あっという間にベットへ運ばれ布団に包まれてしまった。
「仕事ができる。と言うのはこう言う事を言うのね」
見習わなければ。
お風呂で温まりマッサージを受けた体は、気が付けば眠気がやってきており微睡に身を任せると、
あっという間に夢の中へ入って行った。
早朝の目覚めも良く昨日の疲れも無く、明るくなっている空を横目にキッチンへ行き窯に火を入れ、外にある井戸へ水を汲む。
毎日同じ事を繰り返すもメニューが違うので同じ様に見えて同じではない作業をし、フレディと共に朝食を食べる。
「おはよう、フレディ」
「エスメ様、おはようございます」
互いに挨拶をし、白パンとその日のスープをいただきながら
「昨日のディランは全てに置いて、可愛く、カッコ良く、愛おしくて、誰よりも可愛かったわ」
つい力を入れ伝えると
「ええ。ミラを抱っこしていたディラン様のお兄さんの対応に成長を感じ微笑ましく思いました」
フレディの言葉と頷きに、
「解る。ミラとディランの組み合わせは最高に可愛いく愛くるしかったわ」
深々と頷き、
「ミラとの組み合わせも良かったけど、ルイとの瞬間に友達となり信頼関係を築いた事も楽しそうに笑い合っていた事も可愛かったし困りながら女の子の質問に答えていたのも本当に可愛くて時々戸惑ていたのも可愛いいし男の子達と話しているのも可愛いかったディランは可愛いでできていると本気で思ってたけど本当だった可愛かったし愛くるしいしお兄ちゃんするのもっと愛でたかった」
一気に溢れ出る感情と、それを表現できる言葉が思いつかずもどかしさを感じるも
「可愛いって本当に可愛いのね。改めてディランの可愛さを確認したわ」
ほんの少しフレディに昨日の気持ちを話す事ができて嬉しく思うもまだまだ話足らないが、フレディと別れランドリーで自分の服を洗う。
毎日着ているメイド服を中心に自分のシーツも洗い終わる頃、声をかけられフレディと共に廊下を歩く。
昨日同様小走りでフレディを追いかけるも
「やっぱりディランは、世界で1番可愛いくてカッコよくて愛おしい事に間違いはないわ」
息が軽く上がるがそんな事は気にぜすフレディに話しかけると、
「その通りですね」
頷き返してくれ、さらに話をしたいが自室に到着してしまし、昨日同様メイドさんとお針子さんにお世話になり着替えを行い、
「遅くなってごめんなさい」
部屋まで迎えに来てくれたディランとフレディに謝りと入れると、
「いえ、まだ時間に余裕がありますので大丈夫です」
正装のディランは見惚れるほどカッコ良く、気分が上がり溢れ出る感情を言葉にするために口を開くも、
「姉様。こちらを受け取ってください」
勢いを削がれてしまったものの、少し歪なリボンで飾られた箱を差し出され、不思議に思いながら受け取り
「開けてもいい?」
尋ねると、どこか恥ずかしそうに頷いてくれたので、ゆっくり丁寧にリボンを解くとミモザのリースが入っていた。
「可愛い」
慎重に箱からミモザのリースを出すと空になった箱はフレディが受け取ってくれ顔の前に持っていくと自分の顔と同じぐらいのリースを眺め、
「ありがとう。ディラン」
お礼を告げ、あまり使っていない机からよく見える場所に飾ろうとするとメイドさんがさりげなく受け取ってくれ、
「お帰りまでに部屋に飾っておきます」
微笑みながら告げてくた言葉に頷き
「お願いします」
頷き、返事を返した後、手に残したミモザ色のリボンをディランに差し出し、
「ディラン、このリボンを手に結んでくれる?」
左手を差し出しながらお願いをすると、頷き返してくれ、辿々しくも慎重に結んでくれた。
自分の動くと揺れ動くリボンに嬉しく思い、
「お願いを叶えてくれて、ありがとうディラン」
「いいえ。僕にできる事でしたらどんな事でもいたします」
ディランから返ってきた言葉に驚くも、
「私も、ディランが願う事をなんでも叶えたいわ」
手を伸ばし、ゆっくりと抱きしめながら伝えると、
「ディラン様、エスメ様、そろそろお時間が迫っております」
フレディの申し訳なさそうな言葉に2人で頷き、
「ディラン、今日は頑張ろうね」
「はい」
お互い心を引き締め励まし合い、馬車へと歩き出した。
第121話
3連休最終日ですね。皆様どのように過ごされましたか?連休中に積雪のSNSも拝見しました。寒暖差に気をつけご自愛下さい。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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