姉、必死に祈る
石を積み上げ作られた家の1つに案内され、促されるまま入室をすれば驚き声と体での表現に苦笑しながらも、
淑女らしくスカートの両手でつまみ、膝を少し折り
「エルメと申します」
挨拶をすれば、慌てすぎて言葉にならない声に後、
「アンタ!一体何考えているんだい!?」
爆発的な大きな声に体を震わし驚く中、大きな声を出した女性が青年を掴みかかり、
「貴族様を連れてくるなんてどういうつもりなの」
早口で告げた言葉に、
「あの、私が勝手について来たのです」
女性に負けにぐらいの気持ちで声を出し告げてみるも聞こえないのか、青年の胸元の服を握り
前後に揺らし、
「こんな年はもいかない女の子を連れ去ってくるだなんて、母さん悲しすぎて涙も出なてこないよ」
さらに言葉が続き、どうすれば良いのか分からなくなり持っていた箒を両手で握り締め、女性の怒りが収まるのを待つ事にした。
「自分なりに村の事を考えているんだ」
揺さぶられながら自分の意見を告げる青年に
「今だけじゃなのくて後の事も考えないでどうするの」
女性の言葉が返ると、
「覚悟はできてる」
どこか硬く真剣な声と言葉に
「意味も解っていない覚悟なんていらないんだよ」
大きな声に紛れ声が震えている音に気づくも、
「やっちまったものは仕方ない」
大きなため息の後に告げられた言葉は落ち着いた音をしており、女性の感情が冷静に戻ったのだと知れる。
「あの」
自分が来た事での喧嘩に居た堪れなさと居心地の悪さに思わず遠慮がちに声を掛ければ、女性と目が合い
「こんな田舎によく来てくれたね。疲れただろ、今何か作ってあげるから待っててね」
申し訳なさそうに微笑み告げられた言葉に、首を振り
「皆様には大変良くしていただきました」
少しでも愁が取れればと微笑み返せば、
「そうかい?粗忽者ばかりだから怖かっただろ」
変わらぬ表情と声に、青年に申し訳なく思うが本人は何も思っていないのかダイニングテーブルの椅子を勧められ、
「いきなり母さんのお小言でびっくりしただろ?飯は上手いからさ許してやってよ」
馬車の中より気軽な雰囲気に戸惑いながらも勧められた椅子に腰掛けた。
失礼にならない様に周りを見渡せば、玄関入ってすぐにキッチン、左右1つ扉がある。
自分の住んでいる屋敷に比べれは随分小さいがどこか暖かくて居心地の良く出会い頭にあった言い合いで強張っていた体が解れていく。
「口に合えば良いのだけど」
言葉と共に出された木の器に入ったスープとスプーンが置かれ
「昼間食べたパンより美味しいと思うから」
青年からも食べるように促されスプーンを手に取り一口食べれば青豆の風味と塩味が合いとても美味しく、もう1口と自然と手が進んだ。
止まることなく食べている姿に安堵の息を吐き出し、青年も同じように食べ始め何口か食べた後、
「ここにいる間お嬢様は俺の部屋で寝てくれ」
突然の提案に淑女として頷くことが出来ずにいれば、
「年頃のお嬢様になんて事言うんだい。安心おし、私のベッドを使ってもらうからね」
呆れの音を含んだ言葉に、
「それではご婦人の寝る場所が無くなってしまいます」
思う言葉を告げれば、
「いいんだよ。私は息子のベッド使うからさ」
代案を告げられ、更に
「俺はじいさんの所に行くから気にすんな」
青年からも告げられ申し訳なく思いながら頷けば、
「明日は村の案内をしてやるから今日はゆっくり休めよ」
頭に軽く触れ、食べ終えたのか2人分皿を持ち持ち外へと出ていった。
「さ、疲れただろ、ゆっくりおやすみ」
背中を押され、案内されるまま部屋に入るとどこか母の部屋と良く似た雰囲気にホッと息をこぼした。
知らない間に体が疲れていたようで、ベッドに倒れ込むように横った瞬間、眠りへと意識が入っていった。
夢など見ない程、深い眠りから覚めてぼんやりする頭で眺め、
「見慣れない天井」
ポツリとこぼすもゆっくり意識が覚醒してくれば、
お世話になっている部屋だわ。
昨日の出来事を思い出しゆっくり起き上がり大きな音を立てないよう慎重に窓の外を眺めれば、太陽が真上近くに居りベッドから飛び降り扉を開ければ、
「おや、もう起きたのかい?もっと寝てて良いんだよ?」
昨日会った夫人が声をかけてくれた。
「あの、ベッドありがとうございますご迷惑をおかけしすみません」
本当なら早く起きて何か手伝える事を手伝うつもりだった。それなのに昨日と同じ失態に落ち込み謝罪するも、
「良いんだよ。あんな小さな馬車に2日も閉じ込められてここまで来てくれたんだ疲れてるのは当たり前だからね。もっと遅くても良かったんだよ」
柔らかい音の声に怒っていない事と本心での言葉だと分かるがそれでも申し訳なく思うが、水の入った桶と手ぬぐいが渡され、
「太陽の光で少しは温かくなってるだろう。これで体を吹いておいで」
昨夜同様に背中を押され部屋へと戻され、そう言えば土埃を落とさず寝てしまった事と顔を拭いていない事を思い出し、夫人に感謝しワンピースを脱ぎ顔と体を拭く。
ほんのりとした温かさと水で拭いた事で体だけではなく心も軽くなった気がし手渡された桶と手ぬぐいを持ち部屋をでれば、ダイニングテーブルの上には昨日食べたスープが置かれ、
「お腹空いたろ。昨日と同じで申し訳ないけど食べておくれ」
自然とせきに促され、礼を告げスープをいただく。
昨日には入っていなかったパンがスープを吸い込み柔らかい状態で入っており噛むとじゅんわりとスープが口の中に溢れるのがとても美味しく残さず食べることができた。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです」
作ってくれた婦人に告げれば、嬉しそうにまた照れ臭そうに笑い、
「それは良かった。さ、食事も済んだしあの子の所へ案内するよ」
使った食器を持ち、外へ促され前を歩く婦人の後に着いていくと、寄り道をするからと断りを入れられ移動した井戸で食器を洗い、謝りとの言葉の後に案内されたのは、小麦畑だった。
見渡す限り実が重いのか頭を下げている小麦畑に思わす声を上げれば、微笑ましそうに笑われた後、手招きされ着いていけば数人が腰を曲げ、小麦を刈っている姿が見え、さらに近づけば馬車で一緒だった人達だった。
婦人と自分が来た来た事に気が付いたのか手を振ってくれ、青年が作業を止め近づいて来てくれた。
「おはよう、体は大丈夫か?」
鎌を片手に聞かれた言葉に頷き、
「すごい小麦畑ですね」
感想を告げれば、
「まぁ、だだ広いだけだがな」
どっか呆れながらの言葉に、
「初めて見ましたが風が吹くと音を鳴らすのですね」
興奮が抑えきれず、相手の反応などお構いなしに告げれば、
「乾燥した葉が擦れてる音だけどな」
お嬢様が言うと楽器か何かすごい音に聞こえるな。
カラカラと笑いながらの返事に、
「乾燥ですか?」
木々やバラは水が必要で乾燥は大敵だと聞き及んでいたが、真逆の答えに首を傾げれば、
「麦は水がそんなに必要ない。逆に言えば水が大敵とも言える。だから、こんな日照り続きでも実るんだ」
教えられた事に慌て、
「もし、雨が降ったりしたらどうなりますか?」
質問をすれば、
「量にもよるが、収穫は延期出し、雨の量が多いと根腐れを起こすから実は捨てる事になるな」
帰ってきた答えに、先程まで空へ向けていた水魔法を止め
雨、中止!
雨、止まって!
心の中で叫び、急いで風魔法で雲へと変化を成し遂げていた水魔法を消し去り、心の中で
雨が降りませんように。
必死に祈った。
第12話
これ以上、雨の被害が出ないように祈りながら。
秋雨前線さん「雨、中止」でお願いします。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
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