姉、屋台を攻める
街の事を話しているとリズムの様に馬の蹄の音が段々ゆっくりになり、窓から見えていた流れる風景がゆっくりとなると、静止画の様に止まり、
「到着したようですね」
ディランの言葉に大きく頷き、フレディが先に降りディランが降り手を差し出してくれているので、手を取り慎重に馬車から降りた。
「ありがとう」
ディランの手に乗せていた自分の手を動かし手を握ると、同じ様に握り返してくれたのでお互いに目を合わし、
「楽しみだね」
「はい」
互いに馬車を降りる時に視界の端に見えた街の雰囲気はとても賑やかで楽しそうで見えた瞬間に心が浮き立ち、心が早く行こうと急かしてくる。
ディランと同時にフレディに視線を向ければ微笑みながら頷いてくれたので、
「さっき話した通り、まずは大通りの端から端まで歩いて気になる屋台があったら覚えて、復路の時に買う。で、行きましょう」
ディランと手を繋いだまま意気揚々と歩きだす。
お肉が焼ける匂いは空腹を刺激し、以前買い物でお邪魔したカフェの焼き菓子や御祖父様ご贔屓のレストランも屋台を出していた。
他にも、見慣れないアクセサリーや魔法具や魔法石もあり、つい立ち止まりディランとフレディに気を使わせてしまうも
「ありがとう。通った時に立ち寄るから大丈夫よ」
左右にある屋台を長め、興味が引かれるお店を見つけながら、歩き続ける。
少し早く歩いていた為、難なく端まで歩き終えたので、
「ディラン、フレディ何が気になる屋台はあった?」
端により話しかけると、
「そうですね。魔法具と魔法石の屋台と後は古書がありましたので此方にも寄りたいです」
ディランが少し視線を斜め上に向けながらの言葉に、
「古書の屋台!行ってみたいわ」
食べ物ばかり目に行っていたので見落としていたらしく、声を上げれば、
「では、まずは古書の屋台へ行きましょう。その後に魔法具と魔法具の屋台ですね」
フレディの提案に頷くも、
「フレディは気になる屋台は無かったの?」
顔を上げ視線を合わせ問うと、
「そうですね。果実を絞った飲み物の屋台がありましたので、そちらが気になります」
視線が合ったまま告げられた言葉に
「割りとこの近くの屋台よね?」
記憶を辿りながらの言葉にフレディが頷いてくれたので、
「まずは、果実の屋台の寄ってから古書の屋台へ行きましょう」
寄る屋台が決まったので往路同様ディランと手を繋ぎ復路を歩き出た。
まずは果実の屋台。
「いらっしゃい」
大きながらだの男性の挨拶に
「こんにちわ。どうすればいのかしら?」
微笑み、挨拶を返した後に問うと
「好きな実を選んでくれれば、こっちで絞ってジュースにするよ」
笑いながら教えてくれるので、
「ありがとうございます。では」
ベリーの様な赤い実に、オレンジの様な橙色の実、ヤシの実に似ている自分の顔を同じ程の大きく固そうな実もあり目移りをするが、
「あの、この大きな実も絞って飲むのですか?」
店主である男性に問うと、
「これは、中に果実水は入っているから、こじ開けて飲むんだ」
にっかりと笑う男性の言葉に興味が惹かれ、
「私、この実にします」
指で指し注文をすると、
「では、僕もそちらをお願いします。フレディはどうする?」
ディランも同じ実を注文し
「では、私も同じ物を」
3人同じ実を注文を終えるとフレディが店主さんに代金を支払う姿に、
あ、お金持って無い。
自分が無銭であることに気付き慌てるも、
「お待たせ。重いので落とさ無いように両手で持てよ」
顔程大きな実を手渡され、切られた箇所に口を付け実を傾けるも、上半身も同時に知って動いてしまうので中々飲めずにいると、
「やっぱり無理か。嬢ちゃん貸しな」
声を上げ笑う店主さんに言われた通り実を差し出すと片手で持ち上げ、果実水を木のコップに注いでくれた。
「最初からコップに注いでくだされば」
小さな声でこぼしたフレディの言葉に、
「何言ってんだ。子供に挑戦させずなんでも大人が手を出せば良いてもんじゃないぜ。挑戦させてできなければ考えさせて、それでも無理なら少し手を貸してやれば、自分で答えを出すだろう」
カラカラ笑ながらの言葉にフレディは言葉を返すことができ無いのか無言のまま微笑実返していた。
そうね。
どんな事も、やってみなければ正しい事か失敗なのか解らないわ。
手渡された木のコップに口を付け一口飲むと、
「甘い」
蜂蜜の様な濃厚な甘さではなく、さっぱりとした甘さに驚き感想を溢すと、
「僕は少し塩に近い味がしますね」
自分とは真逆のディランの感想に驚きフレディを見ると
「味があるような、無いような、不思議な味ですね」
苦笑しながらの感想に3人顔を見合わせ、ディランのコップと交換し互いに飲むも先程と同じ感想で
「人によって味が変わる飲み物なのかも」
出した答えに3人で納得し、店主に木のコップを返し
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
ディランと共にお礼と感想を告げると、
「どういたしまして」
笑い手を振ってくれたので3人で振り返し、古書の屋台へと向かった。
「不思議な果実水だったわね」
不思議な体験ができたことに心が躍り感想を言うと
「水の様にさらりとして飲みやすかったですね」
ディランも満足そうに頷き、
「椰子の実というそうですよ」
いつの間にか情報を仕入れていたフレディの言葉に、驚き
「ディラン、屋敷に帰ったら調べてみましょう」
「はい。是非、お祖父様、お祖母様にも飲んでいただきたいです」
頷き、よほど気に入ったのかディランの言葉にフレディが頷き返していた。
先程より道にも人が多くなり、時折ぶつから無いように気をつけながら古書の屋台へ到着し、ディランと繋いでいた手を離すと、ディランから近づき、
「こんにちわ。本を手に取ってもよろしいですか?」
白髪の店主へと、挨拶た共に声を声を掛けると
「こんにちは、好きなだけ見ていってください」
穏やかに微笑み挨拶と共に返ってきた返事に
「ありがとうございます」
お礼を返し、手前に置いてある本を手に取り表紙を慎重に捲る姿に、
「こんにちわ。私も拝見してよろしいですか?」
ディランの邪魔になら無いように小さな声で挨拶と共にお願いをすると、
「構いませんよ。好きなだけ読んでください」
どこか嬉しそうに頷き返事をくれたので、慎重に本を手に取りページを捲った。
あらすじを読み込み、気になる箇所を読み、本を戻し、違う本を手に取りまたあらすじを読む。
ディランと何度も同じ行動を繰り返すと、気になる本を数冊見つけるも、
もしかすると屋敷のあるかもしれ無いわね
題名だけ覚え、本を店頭に戻すがディランが本を手に取り
「この書籍と後あちら、その隣の書籍にこちらの数冊の会計をお願いします」
店主へと書籍を手渡し会計をお願いするので
「ディランもしかすると、お祖父様の書斎にあるかもしれ無いわ」
慌て、買う事を止めるも、
「いえ、ありませんので購入します」
はっきりと告げられるので助けを求めるようにフレディを見るも、お金を払い終わっており、
「申し訳まりませんがこの後、違う者が本を取りの伺いますのでそれまで預かっていただけますか?」
預かりまでお願いしている姿の唖然としていると、ディランに手を握られ、
「姉様、次に行きましょう」
数点先にある魔法石の屋台へと引っ張られた。
古書の屋台同様にディランが率先して店主に声をかけ、許可を貰うと手に取り、鑑定をしてゆく。
自分も習い、手に取り眺めると透明度が高く、少し上へと掲げると空の色は入り、魔法石が空色への変わった。
「きれい」
太陽の光を受けると七色の色彩を見せる魔法石に魅入っていると、気が付くと会計が終わっており、
「ディラン様、エスメ様。そろそろ昼食の時間です」
フレディの言葉にお腹に手を当てると、周りの屋台から流れてくるいい匂いに
「そうね、色々食べたいわ」
屋台の醍醐味である食べ歩きに頷くと、
「この辺りに、クックから腕を競い合った友達の店があると聞いております。行ってみませんか?」
フレディの言葉に、キッチンやランドリーの皆から沢山のお店を教えて貰ったことを思い出し、
「それは、是非行ってみたいな」
ディランの言葉に
「じゃ、お昼はそのお店にしましょう」
賛成し、3人で歩きお店を目指し歩く。
大通りより数本後に奥に入ったお店を見つけ、
「いらっしゃい!」
女性の元気な声で出迎えられると、少し驚いた表情の後、
「3人なのですか、空いていますか?」
フレディが代表して聞いてくれ、おかみさんの指示に従い1番奥のテーブルに腰をかけた。
すぐさま、女性が水の入ったコップとメニュー表を持ってきてくれ、フレディが一口飲んだコップをディランと共に手渡され、ゆっくりと飲んでゆく。
メニューは10個以上の中から選べ、迷いに迷って
「決めたわ。このオムレツにするわ」
意志固く力強く告げれば、
「では、僕はこのキッシュという物にします」
迷っていたのか、自分と同じく力強いディランの言葉に、
「では、私はこちらの魚のムニエルにいたします」
それぞれがメニュを決め、女性の店員にお願いし料理が届くのを楽しみに待ちつつ
「この後はどうしよう?行きに見たカフェの屋台も気になるし、さっき見た変わった甘い匂いの食べ物も気になるわ」
「では、行きましょう」
ディランの言葉に頷き、甘いものが苦手のフレディを伺うも、
「食べてみ無いと解りませんから、行きましょう」
苦笑しながらも賛成してくれた事に申し訳なく思うも、
「甘くない物もあるかもしれ無いわね」
ある事を祈って言葉にすると、
「お待たせ」
テーブルに置かれた出来立ての料理に釘つけになり
「姉様、はしたないですよ」
3人しか聞こえ無い程の小さな声で注意を受けるも
「こんなに美味しそうなんだもの。見惚れてしまうのは仕方ないことよ」
少し唇と尖らせ、反論すると
「そう言ってくれるのは嬉しいことです」
男性の声が聞こえ、顔を上げると、
「初めまして、この店の店主をしている者です」
大きな体でどこか居心地悪そうに男性が立っており、視線があうと自己紹介をしてくれたので挨拶をするために口を動かすも、
「友から話は伺っております」
自己紹介はしなくても大丈夫との意味する言葉にディランと共に頷き返し、
「お邪魔しております」
ディランが軽く挨拶をすると
ぎこちなく微笑み
「ゆっくりしていってください」
目礼をいただき、左手と左足が同時に動いて去る背中を見送ると、
女性店員さんかた取り皿と焼きたての白パンが置かれ、
「騒がしい店ですか、ごゆっくり」
女性店員さんがの言葉に頷き、フレディがそれぞれの皿から1口分食べ終わると、ディランと共に注文した食事を食べ始めた。
第116話
寒暖差が大きく日中は春らしくなってきました。桜の開花宣言が待ちどうしいです。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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