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姉、知識を総動員させる

2023/04/12誤字修正をおこないました。教えてくださった方ありがとうございます。


「姉様、姉様」


愛おしい子の声が聞こえる。


「大丈夫ですか」


宝物のように丁寧に大切に優しく何度も頭を撫ぜててくれる。


くすぐったくて、でも嬉しくてつい頭を擦り付けてしまう。


大きな手が自分という存在を愛してくれているのだと言ってくれいる様で、このまま身を任せても良いのではと思える。


ゆらゆら

ふわふわ


体が暖かくて、全身守られている安心感が嬉しくてずっと此処に居たいと思うが、それはできない事だと否定するように体が上下に揺さぶってくる。


やだ

このままここにいたの。


むずがる様に身を捻れば、大きな手が落ち着くように頭を撫ぜてくれた。


ディランの手が好きだな。

小さくて柔らかく短い指に最近は剣だこなのか手の平の皮膚が固くなってきている。


日々大人へと変化する手はディランの努力が出ていて大好きなのに、いつの間に大人のように大きな手になってしまったのかしら?


気付いてしまった疑問に慌て意識を取り戻せば、


「お嬢様お目覚めか」


現状把握ができずぼんやりとする中、かけられた声に視線を向け頷き返す。


ゆっくり深呼吸を何度か繰り返し見える範囲で目を動かせば、昨日で見慣れた青年に抱き込まれていた。


「あまりにもぐっすり寝ていて起こすのも可哀想になってな」


抱き込まれた体制から太腿の上に座る体制にかえられ、未だ動きが鈍い脳で考え込む。


昨日、屋敷の裏門で助けを求めてた人達。

そして、その人達の村へ行く途中で野宿したんだっけ。


昨日からのできごとを思い出し、そうだったと納得し、


「申し訳ありません、重かったですよね。」


失礼にならいよう体を動かし太腿の上から降り隣に座り直す。


寝起きだけではなく寝顔も見られてしまった。


家庭教師から幾度となく繰り返し言われた淑女としての行動とは程遠く、取り返しのつかない失態に恥ずかしくなり下を向いていると、


「ほら、これで顔を拭くといい」


濡れた手ぬぐいを差し出され、礼と共に受け取ると目尻を中心に顔を拭き手ぬぐいを返せば次に固いパンが差し出される。


ゆっくり齧り口の中で水分を含ませてからの噛み音に気をつけながら慎重に砕き飲み込んだ。


食事はスマートかつ優雅に。


家庭教師の教えを思い出しゆっくり慎重に食べればあっという間にお腹が膨れ、


「ありがとうございます」


食事への礼を告げ、幌の間から見える小さな空を見上げれば太陽が真上近くにいる事に気づき、

自分の失態を心の中で恥じる。


いくら疲れていたといえ、この方々が優しい人々だとしても流石に血の気が引き慌て謝罪をするも、


「大丈夫だ。お嬢様が寝ている間に悪いが馬を早めに走らせたから逆に寝ていてくれ助かった」


気にする事などないのだと誰もが笑い見守ってくれる。


誰も淑女としての失態を怒らない。

優しい人々の力になりたい。


助けたい。


その気持ちが大きくなる。


「今日の夕方には村に着くだろうから、もう少し我慢してくれ」


昨日、梟の話や様々な話を教えてくれた年配男性の言葉に返事を返し、


「村に着いたら、小麦畑とヤギに会えるの楽しみです」


微笑みながら告げれば、


「期待に応えられるか分からんが案内はするさ」


青年の返事にもう1度


「楽しみしています」


偽りない言葉を返した。


本でしか知らない風景が観れるのは本当に楽しみで、未知なる動物に会えると思うと心が躍る。


でも、人助けに行く事は忘れてはいない。

日照りで作物が育たないと言われた。

雨を降らせて欲しい、助けてくれと願われた。


私は、この方々の願いを叶え助ける。


方法を考えなければ、水を撒く方法を。


昨日に引き続きたわいのない話で笑い合いながら頭の片隅で必死に考え続ける。


確か乾いた土に水を巻いても吸い込みにくいので時間をかけてゆっくり水を撒いていくしか無い。

その時だけなら村だけでも良いのかもしれないけど、広範囲に魔法をかけるしかない。


どうすれば。

どうすれば良いのだろう。


案が思い浮かばず焦りばかりが募る中、


「やっぱり雨は降ってねぇか」


御者席から聞こえた言葉に、


「期待するだけ無駄だって」


「だからお嬢様にお願いしてるんだしな」


次々聞こえる言葉に我に返り、1つの考えに囚われていた事に気づいた。


農作物が育たないと聞き、薔薇の世話をしていた時の様に水を撒くものだと思っていた。

確かに撒く事も間違いではないがそれは一時凌ぎしかない。


長期に渡り畑に水を、土に水を含ませるのなら雨が1番だ。


そうだった。どうして思い付かなかったのかしら。


踊り出したくなる程嬉しくなるも、淑女として堪え1人心の中で絶賛する。


雨が降らないのなら作り出せば良い。

心躍る中、記憶をたどり雨の発生方法を思い浮かべ、


村の近くになったら、気づかれない程の水魔法を空へ向けて放出させ、雲を発生させる。

勿論、雲が動かなければ意味ないので状況によっては風魔法で移動させる。


うん、大丈夫。

本で読んで雲の発生方法も雨が降る原理も知っている。


後は、時を待てば良い。


力の入りすぎた体を落ち着かせるため細く息を吐き、


「村は後どれぐらいで着くのですか?」


全員空を見上げている中の問いかけにいつもの様に


「もう少ししたら着くさ」


青年が教えてくれる。


もう少しの距離なら魔法を使っても大丈夫よね。


皆と同じように幌から見える小さな空を見上げながら水魔法を使う。


幌の隙間を通し、真っ直ぐ空へ向ける。

もっと、もっと高く。


箒で飛んだ時、急に寒くなったあの高さまで。


慎重にゆっくりと空へ向け続ける。


後少しと評された距離は中々遠い様でまだ着く事はないが、雲を作るには良い距離かもしれない。


青年始め皆が浮足だち、嬉しそうな雰囲気に不思議に思うも、


「すぐ着くからな」


笑顔で言われた言葉に釣られ嬉しくなり笑顔で頷き返した。


第11話

ようやく村に着きました。長々と申し訳ありません。

次回、小麦畑見学と雨の続きを進めて行きます。


ブックマークに評価、そして誤字報告ありがとうございます。

本当に嬉しいです。そして申し訳ありません。御心使い感謝しております。


連日雨が続く予報の様で、危険と感じたら間違っていても良いので命を守る行動をお願いします。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。

よろしけれお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/


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