姉、着せ替え人形となる
後数日と迫ったお祭りの準備に入り、館の中もミモザが飾れ、ふんわりと香る優しい香りにメイドさん達が時折、足を止め香りを楽しんでいる姿を見る。
春を告げるミモザ
春の神さまの訪れを喜ぶお祭り
空を見上げると灰色の雲が少なくなり、青空を見る事が多くなった。
積もった雪の量が日に日に厚みが無くなり土が見える場所が増えてきた。
気が付くと木々に、小さな芽が出ていた。
時折、寒さが戻り雪が舞う日もあるが、
毎日違う冬景色が雪で遊び楽しかった日々が終わりを告げていた。
いつもの様に早朝からキッチンとランドリーへ出向き、仕事が終わるとディランの部屋で勉強をする。
昼食をはさんで、再び勉強をしたり、生活魔法道具の案を出したり、日によって様々過ごし方をする中、今日はディランと共に読書を楽しんでいると
ノックが聞こえ、ディランが返事を返しフレディが対応し扉を開けると、以前お茶会をしたメイドさんが入室し
「エスメ様、お祭りに着る洋服の試着をお願いしたいと、お針子達が申しておりますが、いかがいたしましよう?」
以前ディランが祭りの準備を手配すると言っていた事の1つだと思い出し、
「今からでも大丈夫ですのでそのように伝えてください」
頷き問われた答えを返せば、
「かしこまりました。準備できましたらお声がけをさせていただきます」
礼をしたのち部屋を退出する姿を見送り
「ディランもお祭り様に洋服を作っているのよね?」
先程まであった雰囲気が少し変化したことで、互いに本を閉じ顔を上げ
「はい。間も無く仕上がると聞いております」
待つ時間を本を読むのではなく会話を楽しむ時間へと変える。
「楽しみね」
特別なのはミモザ色の小物を身に付ける事。
春の到来を喜び、春の神様の到来を喜んでいる事を表すためにミモザを身に付けていたが、ある年、春の訪れが遅くミモザが花を開かない時期もあり、その時の領主様と祭主様がミモザ色の小物を身に付ける事への代替えを許可してからは小物へと変わったとディランが教えてくれた。
「お互いに、お祭りまで内緒にして当日にお披露目しようね」
本を膝の上に置き、当日着る衣装に思いを馳せながらディランへ告げると、
「分かりました」
頷き返事をくれた事にさらに楽しみが増え、
「フレディも着るのよね?当日まで内緒にしてね」
壁側に控えているフレディにも声をかけると
「かしこまりました。そのようにいたします」
ディラン同様に頷きと共の賛同の言葉がもらえた事にさらに楽しみが増えると、再びノックが聞こえたので本を持ち、立ち上がり
「ディラン。このままお暇するわ」
自室に戻った後はそのまま過ごす事を伝えると、ディランも立ち上がり
「分かりました。明日もお待ちしております」
見送りをしてくれるディランと共に対応をしているフレディの元へ行くき、迎えに来てくれたメイドさんに礼を伝え、
「ディラン。フレディ。また明日ね」
手を振り隣の自室へと入た。
数時間前には無かったトルソーが来た洋服と初めて会う数人の女性が視界に入り、
「お忙しい中、我儘を叶えていただきありがとうございます」
お伺いがあったものの、自分の意見で今からと決めてしまった事への詫びと対応してくれた事への礼を告げると、
「いえ、こちらこそ迅速にお返事をいただけた上に、対応をしていただきありがとうございます」
お針子さんからも対応への礼の言葉を貰え、自分の対応が間違ってなかった事に安心をしながら、
「こちらがお祭りの日に着る衣装ですか?」
2体のトルソーの正面に立ち、体の正面に立ち同じワンピースの型だが生地が違うのか光沢の出方に違いがあり、水兵が着るセーラー襟のワンピースと、大きな丸襟のワンピースの違いもあり眺めていると
「エスメ様が以前お作りになりましたプリンが船乗りの食べ物お作りになったとお聞きしました。海にご興味がお有りなのか思いまして、1着はセーラー襟で作りました」
お針子さんの説明を聞き、デザインの可愛さと、白い生地にセーラー襟には細い黄色の糸でミモザが1本のライン状に刺繍されており、胸元には大きなミモザ色のチーフでリボンに結ばれてる。
もう1着はシンプルに生成り色で丸襟のワンピースでどこにもミモザ色が無く不思議に思っていると、
「こちらはシンプルにいたし、髪にミモザ色のリボンをお使いいただく様になっております」
なるほど。リボンやチーフでは無くても良いのね。
頷き、
「ありがとうございます。どちらも可愛く、当日が楽しみです」
微笑み感想を告げるとお針子さん達も安堵の表情と柔らかくなった空気に
「エスメ様、御試着を」
メイドさんの促す言葉に、目的を思い出し、
「よろしくお願いします」
メイドさんやお針子さん達が動きやすい様に、絨毯の上に広げられた布の上に立ち真っ直ぐと立てば、
早速、着ていた洋服を脱がされ、トルソーから外されたセーラー襟のワンピースを見に纏う。
肩幅や襟の大きさ、洋服の不自然さがないかあらゆる箇所を確認し、修正が加えられる。
2着目も同様だったが、こちらは更に細かく確認され、
「こちらを2日目に着ていただく予定をしております」
前に膝を付いて、スカート部分を確認していたお針子さんの言葉に、頷き返す。
1日目は街歩き用の洋服で生地は綿を使っていた。
今着ている洋服は光沢もあり柔らかな肌触りで上等な布なのだと着た時にわかってはいたが、話を聞き納得ができた。
2日目はディランと教会へ行き春の神さまへ来てくれたお礼を告げる役目をするのだ。
ディランと共に行う大役
その為の衣装に緊張は走るも、
「ディラン様より動きやすい型でとお話を頂きましたので、着慣れた型でお作りいたしましたがいかがですか?」
緊張で体が硬ったの感じ取ったのか、柔らかく気遣う言葉に小さく体を動かし
「大丈夫です。動かしやすいです」
伝えれば、微笑まれ
「初めてお祭りで不安もございましょうが、とてもお優しい祭司様ですのでご安心いただけると思います」
気遣う言葉に
「そうなのですね。ディランと一緒に頑張って努めますね」
微笑み返し、お役目であることをすっかり忘れてしまっていたことを思い出し、内心焦りながら返事を返した。
そうだった。
お祭りの終わりを告げる役目をディランと一緒にするんだった。
「教会へ出向き、祭事の練習があります」
頭の中で思い出したディランの言葉とすっかり忘れていた自分に反省し試着と当日行うメイクや髪型の調整が続いた。
第107話
寒の戻りで雪が積もりました。暖かかったり凍えたりと体調管理が難しい日々ですね。
ご自愛ください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
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