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姉、おやつを作る


いつもより早い時間に起き、扉の音と足音に気を付けながら館の中を歩いて行く。


そろそろ使用人の皆の住む館に引っ越した方が良いような気がしてきた。


柔らかな絨毯に足裏に感じながらキッチンに向かう。


以前クックからキッチンを使っても良いと許可を貰ったので、誰も居ない早朝の時間を使っておやつを作る為にいつもより早くに来て窯に火を入れ外の井戸から水を汲む。


あらかた朝の準備が終わると、今度はおやつの準備に取り掛かる。


卵に牛乳に砂糖。


バニラが無いのは残念だけど我儘は言ってられない。


ある材料で作る。


前の人生で1人暮らしやお母さんだった時の月末の時を少し思い出して懐かしい思い出に気持ちをはせるも、


ゆっくりしている時間は無いんだった。


手早くフライパンに水を5センチほど入れ窯にを乗せ、ボールに入れたミルクを人肌に温めながら、お湯が沸くまでにボールに卵を割り入れ丁寧に解してゆく。


「卵を解す時は切る様に左右もしくは上下に動かす」


奥底にある記憶の思い出すために手順を声に出して行ってゆく。


「できたら、砂糖を入れ解けるまでかき混ぜる」


本当なら卵液ができたら漉すのがいいけど、茶こしが見当たらないので丁寧に解してゆく。


「できたら牛乳を入れ馴染むまでゆっくりかき泡立てないよう混ぜて」


ほんのり温かい牛乳を何度かに分け、卵を解いたボールに牛乳を入れ、


「本当ならここでバニラエッセンスだけど無いから」


顔を上げ左右に動かし代わりになりそうな物を探すと、ブランデーが目に入り、


「数滴程度なら大丈夫よね」


ブランデーを手に取り慎重に数滴入れ、馴染ませる為にゆっくりとかき混ぜる。


容器となるココットは無い為、ティーカップを代用し、4個のティーカップに卵液を入れ、フライパンに入れ蒸している時にカップが揺れないように洗ってある布巾をお湯に入れ、火の当たりが弱い所へ移動させカップを2個慎重に入れ、


「アルミはくもサランラップも無いからソーサーで代用するけど」


一抹の不安を覚えつつ、


「ま、何とかなるでしょ」


作ってみないと成功か失敗か解らないので考えずに実行する。


ダメだったらその時に原因と代品を考えればいいしね。


沸騰近くまで温まったお湯に卵液が入ったカップを入れ、ソーサーで蓋をし体感で15分程待つ。


「どうかな?できてるかな?」


熱くなったカップの持ち手を気を付けながら持ち揺らしてみると卵液は固まった様で動く気配もなく、


「いい感じにできてる」


2個入れていたカップをフランパン取り出し、残りの2個を入れソーサーで蓋をした。


最初に持ったカップにデザートスプーンを入れると中まで固まっているのがわかり、1口分掬い取り口の中に入れ噛む。


「うん。大丈夫。ちゃんと美味しい」


満足し、残りの2個も作り上げると、お湯を卵液を入れていたボールに入れ、布巾は熱くて絞れないので冷まし、水分を飛ばすためにフライパンを窯に乗せた。


熱で乾いたフライパンに今度は砂糖と水を入れ、急ぎかき混ぜカラメル色になったら、コレもティーカップに入れ粗熱を取っている間に、使用したボールやフライパンなどを洗ってゆく。


濡れた手を拭き、固まった卵液にカラメルをかけ食べれば


「久しぶりのプリンだ。美味しい」


甘くほろ苦い味噛み締めていると、キッチンメイドやクックが姿を見せ、

いつもの通りの朝食の準備が始まる。


慌ただしく終えた朝食の準備の後は、休憩も兼ねての朝ごはんの時間。


キッチンメイド達と食べていたが、最近は


「フレディ、目を閉じてから口を開けて」


前に座るフレディにお願いをすれば、視線はソーサーが乗せられたカップから離れないが困惑しながらも、目を閉じ、口を開けてくれてのでカラメル無しでプリンを掬い口の中に入れる。


恐る恐る噛み締める姿に、


そんなに怖がらなくてもいいのに。


少し呆れながらも見ていると、


口に手袋をしていない手を当て、


「甘い。卵ですか?」


目を開けないまま舌で感じた事を確かめる様に言葉に出すので、


「そうよ。もう1度口を開けて」


答え合わせの言葉と共に、もう1度お願いをし口を開けて貰うと、今度はカラメルと共にプリンを口の中に入れ舌の上に乗せスプーンを抜き


「食べてみて」


嚙むの様に告げると、口を閉じ、ゆっくりと嚙み締め


「先程の甘さよりこちらは苦みがあり甘さも抑えられ美味しいです」


微笑んだ表情に安堵の息を落とし


「ありがとう。目を開けても大丈夫よ」


ゆっくりと瞼が開き新緑を思わせる緑の瞳を見つめていると、


「エスメ様、ご説明いただけますか?」


綻んだ表情から普段見慣れた微笑んだままの表情に変わり告げられた言葉に


「おやつを作ってみたの」


乗せていたソーサーをどけたティーカップを見せながら伝えると、


「最初にいただいたのはそちらの黄色い物だと分かりますが、2回目の苦みを感じた物と一緒ですか?」


納得ができたのか頷きと共に告げられた言葉に、もう1つのティーカップを差し出し、


「砂糖を溶かしてから少し焦がした物よ。美味しかったでしょ」


カラメルの説明をしつつ、フレディに新しいプリンにカラメルの入れ出しだし、


「これはフレディの分。良かったら食べて」


ティースプーンを手渡すと、数度瞬きした後、


「先程、自分がいただいたそちらのカップの物をいただきますので、エスメ様はこちらをお食べください」


新しく出したプリンを自分に向けて差し出してくれるが、


「これは私が味見をしたプリンだから、フレディはそっちを食べて」


半分以下に減っているプリンを一口食べ、フレディに新しいのを食べる様に進めると、


「では、お言葉に甘えいただきます」


少し嬉しそうに口元を上げプリンを食べる姿を見ながら、


甘いのが苦手なフレディの口に合って良かった。


美味しそうに食べる姿に嬉しくなりつつも、食べ終わるのを確認し


「フレディ、私、ランドリーに行ってくるわね」


椅子から立ち上がり使用していた皿を持ち上げると、


「畏まりました」


同じく、椅子から立ち上がったフレディに持っていた皿を取られ、


「終わり頃にお迎えに上がりますのでお待ちいただけますか?」


さりげなく手の届きにくい高さまで上げられ、


「おやつのお礼として皿洗いをお願いするわ」


怒っていますと大げさに唇と尖らせ、声を低くつげると、


「ありがとうございます」


嬉しそうにお礼を言われると、いつまでも怒っているように見せている訳にはいかず、ランドリーに向かって歩きだそうとするも言い忘れたことに気づきフレディに向かって振り向くと


「ディラン様とイルさんには内緒ですね」


解っていると微笑みと共に告げられて言葉に、頷きを返し


「行ってきます」


手を振り、キッチンを後にし足早にランドリーに向かった。


手早く洋服を洗い、シーツも洗い終え2人で洗い皺を伸ばしているとフレディが迎えに来たので、


「いつも途中ですみません。後、お願いします」


詫びの言葉告げると、


「お嬢様が分担の洗濯は終わっていますので気にしをないでください」


「いつも手伝っていただきありがとうございます」


お礼の言葉が返って、心がくすぐったく、また嬉しくなり、一礼をしランドリーを後にする。


フレディと再びキッチンに立ち寄り、ワゴンにハーブティー淹れるポットやカップを乗せ、朝作ったプリン2個とカラメルが入ったカップを乗せ、まずは着替える為に自分の部屋へ行き、メイド服からワンピースに手早く着替えディランの部屋へ向かう。


「おはよう、ディラン」


「おはようございます。姉様」


互いに挨拶をおえ、


「イルさん、おはよございます」


先に来ていたイルさんいも挨拶を済ませると、自然をソファに座り、ディランが自分に向かってハントクリームを塗る為に手を伸ばすのを


「待って。実はディランとイルさんい食べてほしい物があるの」


言葉で制し、慌て立ち上がりワゴンから2つのティーカップを差し出した。






第105話


時間ギリギリで本編を書き上げることができました。手動更新は緊張しますね。


ブッマークや評価やいいねボタンををいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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