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姉、前世の生活に感謝を捧げる



これ程、前世の行った学校と先生と両親に感謝した程はないかもしれない。


数日前から始まった工房の経営の勉強は、成り立ち、従業員の人物に人柄、工房のある環境など数日に渡りフレディに教えて貰い、時に本を見ながらの勉強の時間だった。


でも今日からは、


「では、エスメ様。このインク壺が5つと羽ペンが4本あります。合計でお幾つになりますか?」


算数の基本中の基本


足し算を習っている。


「5+4だから9個ね」


考えるまでも無く答えは分かるので戸惑う事なく答えるとフレディは嬉しそうに微笑み


「エスメ様は飲み込みが早くいらっしゃる」


とても優秀な生徒の様に褒められ、ほんの少し罪悪感を感じつつ、ゆっくりと置かれるインク壺と羽ペンの数を答える事を繰り返えす。


もっと難しい事を勉強をするのだと身構えていた分、拍子抜けをしてしまったがよくよく考えると王都で習ったのは、


言葉の発音

文字の読み書き

食事のマナー

カーテシーの腰の角度と足の動き


優雅に綺麗にできるかを徹底的に教えて貰い、見苦しく無い程度にできた後は


魔法の勉強が中心だった。


思えば、数字を考えたりする事は王都では無かったのを思い出し、フレディが足し算から始めた事が理解できたので、出された問題を答えていく。


「エスメ様、今度は引き算をいたしますよ」


止まる事なく数十回の問題を解けた事で次へ進む事を決めたフレディは再びインク壺と羽根ペンを使い


「先程は数が増やす計算をいたしましたが、次は、減らす計算を行います」


インク壷を3個に羽根ペンを2個使用します。残るインク壷はいくつかお分かりになりますか?


インク壷の上に羽根ペンが置かれ、余ったインク壷は1個


「1個インク壷が余るわね。そして羽根ペンが1本足らないわ」


余ったインク壺を手に持ち横に立っているフレディに差し出すと、


「さようでございます。これが引き算です」


微笑みながら受け取ってくれ、頷いてくれた。


それから引き算の問題を数十回答えると、今度は


「では、足し算と引き算を混ぜて問題をお出ししますのでお答えください」


フレディの思い付く計算を言葉にしているのか不規則にやってくる引き算に戸惑いながらも間違えずに答えを伝える事ができた。


危なかった。

急に二桁が来るから少し詰まったけど、間違えずに済んで良かった。


安堵の息を落とし、体から力を抜いていると、


「二桁の計算もできるとは、エスメ様の理解力に脱帽いたします」


あまり誉めら手慣れていないのと、前世の記憶もある事に少し罪悪感も感じつつ、


「ありがとう。でも、戸惑って答えるのが遅くなってしまったわ」


礼と感想を伝えると


「いえいえ。そんな気に止む程はありません」


小さく首を左右に振られ


「しかし、エスメ様がここまでできるとは知りませんでした。どこかで習った事がおありで?」


常に一緒にいるフレディの言葉に驚き、前世の知識などと答える訳にはいかずどう返事を返せば良いのか言葉を探すも、


「僕が習っていた時に覚えたのではありませんか?もしくは生活魔法道具の設計図を描いている時に覚えたのかも知れませんね」


イルと勉強をしているディランからの言葉に、


「なるほど。確かに王都にいた時も今の様に同じ部屋にいらっしゃいましたし、設計図の時は数字での会話も多いですから、自然と学ばれたのかもしれませんね」


納得ができた様でフレディが頷いたのを眺めながら


ディラン、ありがとう。


心の中でディランへの礼の言葉を繰り返す。


「では、明日はもう少し詳しい話を進めつつ計算の方法などを進めていきます」


今日は終わりだと告げる言葉に、


「ありがとうございました。明日もよろしくお願いします」


座ったままで頭を下げ、礼を伝えると


「こちらこそ、明日もよろしくお願いします」


少し困った様に微笑みながらの言葉だったが気にせず立ち上がり


「さ、ハーブーティーの練習をするわよ」


気持ちの切り替えと気合を入れ直し言葉に出すと、


「はい。頑張りましょう」


先程とは違う、嬉しそうに頷き微笑み返してくれたのを視界に入れ壁側に用意してあるワゴンの向かって歩いて行く。


毎日、何度も何度も淹れていれば渋味の少なく淹れる事ができ、今度は何度入れても味を均等に出す練習に進んでいた。


ハーブティーもそうだけど足し算も引き算も基本中の基本。


ここを何度も何度も繰り返しして理解をしないと後々、理解ができなくなって嫌になって拒否反応で脳が考えるのを辞めてしまうから頑張らないとね。


アレよね。


スポーツと一緒でどんなに高度の技をやりたくても基本ができていないと無理というのと一緒ね。


水を入れた火魔法石が付いたポットを抱え込み、考え事の行っていると


「エスメ様、魔法を発動中に考え事は危のうございますよ」


聞こえてきたイルさんの声に我に返り、抱き込んでいたポットをゆっくり離すと湯気が上がっており、コトコトと蓋が動き音を鳴らしていた。


しまった。沸騰させてしまったわ。


考えに集中してしまった為、80度程に温めれば良かったのだが高温になってしまい、ため息を落とすと、


「温めすぎたなら、冷ませば良いのです」


自然とポットを持ったイルさんの言葉に首を傾げると、差し湯用のポットに沸騰したお湯を注ぎながら


「ジャグとカップに先程のお湯を注ぎ、その間にティーポットにハーブを入れます。その後カップに入れたお湯をポットに淹れれば適温まで下がっておりますので美味しくできます」


話と同時に手を動かしハーブティーを入れてくれたイルさんに小さな歓声と拍手を送ると、胸に手を当て家令の礼をし答えてくれた。


「家令たるとも主人様がお困りの際はすぐさま機転を利かしお助けするのが役目」


礼を解いたイルさんの言葉に頷いたが、イルさんの視線が何故かフレディに向けられており気まずそうに視線を逸らしているフレディの姿に、


「えっと、イルさん。この淹れ方は初めて見たのだけど、イルさんが考えたの?」


少し日本茶の淹れ方だなぁなんて思ったものの、今まで見たことの無い淹れ方に問い掛ければ、


「はい。先程思い付きましたので、客人の前では行わない方がよろしいかと思います」


瞬時にイルさんの視線がフレディから自分に向けられ告げられた言葉に、


「そうね。私が沸かしすぎない様に気を付けるわ」


臨機応変、緊急用に覚えておくとして普段はお湯の温度にきを告げる様に心に刻み、イルとフレディの促されソファに座り、ディランと共に久しぶりのイルさんの淹れてくれた美味しいハーブティーを飲み、


「それでね。クックから何か思い付いたら話して欲しいと言われたの」


ここに来る前に行っていたキッチンとランドリーの話をいつもの様に話してゆく。


「後、時間が空いている時に限りだけどキッチンを使ってもいいとも言ってくれたの」


今朝あった1番嬉しい事を3人に伝えると、


「良かったですね。姉様の頑張りがクックに認められたのですね」


ディランも嬉しさを全面に出している自分に釣られる様に微笑みながらの言葉に、


「そうかな?そうだと嬉しいな」


上がり切った気持ちを落ち着ける為にハーブティーを一口飲みソーサーに戻すと


「そうですよ。誰もが敬遠する仕事を率先して行なった結果です」


フレディの嬉しさが混じった言葉に礼を告げ


「重要な皿選びからのキッチンの使用許可と、クックを始めキッチンメイドなど全員が認めなければ自分の重要な職場の使用許可など出しません」


誇って良い事です。


使用人を纏める仕事をしているイルさんの言葉に、じんわりと嬉しさが広がり、


「ありがとうございます。みんなの期待を裏切らないように気をつけ頑張ります」


頷き1つと新たに気を引き締め告げる、ティーフードであるスコーンにたっぷり木苺のジャムとクリームを塗り一口食べた。


「美味しい」


無意識の溢した言葉に3人が微笑んだがスコーンと


ディランが喜んでくれるお菓子は何かしら?

プリンなら、材料もあるし作れるからまずはプリンかしら?


考え事に夢中になり3人の反応に気付くことはなかった。



第102話


雪予報が各地で出ている今日、皆様の地域はいかがですか?梅の便りは届きましたか?


ブッマークや評価、いいねボタンをいただきありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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