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姉、墓穴を掘る

数日前から灰色の厚みのある雲の切れ目から太陽の日差しが出る時間が多くなり、積もった雪が少しずつ溶け出し、井戸まで歩いていると靴が濡れスカートの裾部分が重く感じる事が多くなってきた。


ディランの心配も日に日に増し、ディランの部屋へ行く前に着替えの時間が入る様になった。


メイドさんのワンピースから、お祖母様が仕立ててくださったシンプルで上品なワンピースへと着替えディランの部屋へお邪魔する。


「おはよう。ディラン」


「姉様。おはようございます」


互いに挨拶をし、促されるままソファに腰を掛けディランが両手にハンドクリーム塗ってくれる。


ヘアケアとして使用しているラベンダーの香りがするオイルも気が付くと新しい品を用意してくれ、プレゼントしてくれる。


「ありがとうディラン。もうすぐ無くなる所だったから、すっごく嬉しいわ」


ヘアオイルの箱に結ばれていたラベンダー色のリボンを巻き取り、差し出されたフレディの手の上に乗せ、礼を告げた後、


「姉様は無くなっても買って欲しいと言ってくれませんから」


どこか呆れ混じりのディランの言葉に首を傾げると、


「エスメ様、普段使いをなさっている日用品はご遠慮無く、メイド達にお申し付けください」


イルさんの頷く以外許さないような強い言葉に、


「ありがとうございます。気を付けます」


曖昧な笑顔で返事を返すとディランからため息を落とされ、


「姉様、僕や姉様には年間予算がついております。予算を使っておりますので遠慮することはありません」


勉強をしている時とよく似た表情で告げられた言葉に、


「そう言うけれど、魔法石や魔法道具の試作品を作るのに職人さんや工房を作ったりしてお金は使っているもの」


むしろ節約をしないと。いけないと、思っているわ。


自分の考えを言葉に周りにいる3人に伝えれば、ディランは再びため息を落とし、フレディとイルさんは苦笑した。


「お金は大事よ。何か合った時に絶対必要になる物だもの。少しでも大いに越した事はないわ」


領の経営の絶対安定は無い。


自然災害だって、絶対怒らないで欲しいけど疫病だって出てくるかもしれない。


私達だけではなく街に住む人も被害を最小限に収めるならお金は必要品。


何かの被害があれば価格の暴走、暴落があればお金の価値も変わるのは当たり前。


もしかしてお金の価値が無くなる日が来るかもしれないけど、それは王都で政治を行なっている人達が頑張って貰うしかない。


クリームが塗られ動かせない手をぼんやり見つめ意識を考え事に沈めていれば、


「生活魔法道具は別予算で運営されており、現在は高利益を出しております。数年先を見ても利益は出し続ける見通しです」


こちらはお父様が筆頭に立ち管理を行なっておりますのでご心配なく。


お祖母様の元に帳簿の写しがありますがご覧になりますか?


ディランから告げられた予想外の言葉に目を瞬かせていると、


「魔法道具はもう無くてはならない必需品。流行りの柄や劣化に魔法石の損傷などでの買い替え必須ですからね」


フレディの補足も加わり、更に


「王都にいる王家、高位貴族の方々が我先にと購入する物ですから下位貴族も憧れの品ですし、商人も販売をする為には自分で使用しなければ品の良さ便利性は理解し説明できませんから、購入は必須なのです」


イルさんのこれ以上ない笑顔で告げられた言葉に、言葉の理解はできても実感ができず、曖昧に頷くと


「先日、姉様が発案し作ったお湯が沸くポットも発売はいつなのかと問い合わせが沢山きております」


ディランの言葉に驚き、


「アレを商品として出したの?」


何気なく前世で大変お世話になった電気ポットが欲しくて作った物がいつの間にか商品化まで進んでおり

慌て3人の顔を見渡せば、


「はて、エスメ様にはきちんと了承をいただいた記憶がございますが?」


イルさんの首を傾げた言葉に、


「いつですか?」


同じ様に首を傾げると、


「ポットの説明を聞いた後に商品化の有無をディラン様がお尋ねになっておりましたよ」


フレディの言葉にを記憶を辿るも、いまいち思い出せずにいると察したのか


「適当に返事をし聞き流しましたね」


ディランのほんの少し呆れと怒りの混ざった声と言葉に、


「ごめんなさい。ディランが嬉しそうに言うんだもの、間違いは無いと思って」


素直に謝りを入れ言い訳を言葉にしてしまうと、


「姉様から絶大な信頼をいたがけて見に余る光栄です。が、ご自身事です。次からはきちんと聞いてくださいね」


真剣に告げられた言葉に頷き、


「頑張るわ」


心意気を言葉に出すと


「では、エスメ様もお時間を作り、工房の帳簿の見方と経営を学んでいただきしよう」


イルさんの突然の発案に、驚き


「え?えっと、そこまでは大丈夫です」


戸惑いながら首と両手を左右に振り返事をするも、


「そうですね。独り立ちをするならお金の勉強も必要になりますのでこの機会に学びましよう」


ディランの一言で、ハーブティの淹れ方の時間がフレディとのお金の勉強時間へと変更になった。


お嫌なら独り立ちなどせずこの屋敷に止まれば良いのです。


3人の音の無い言葉が空気となり部屋に溶け込むも、好ましく思っていたハーブティ淹れ方講座がなくなってしまった事で落ち込み項垂れてしまったことで気付く事無く、


「勉強やだなぁ」


ポツリとこぼした本音に3人の苦笑した音が聞こえた。



第100話


気が付けば100話目。ここまで書けましたのは読んでくださっている皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。

これからも主人公共々よろしくお願いいたします。


ブッマークや評価をいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/


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