第五話:いざダンジョンへ
次の日は、朝からダンジョン探索に向かった。
ダンジョン探索とはいうが、目的はカナメのレベル上げである。
主に、前衛を自分が務めて、カナメは後方支援という陣形である。
勇者はパーティーメンバーが倒した分も経験点としてもらえるらしい。
また、逆に勇者が倒した時の経験点もパーティー全体に入るようになっているそうで、勇者パーティーの人気が高いのは、その点も大きいとの事だった。
正直、レベルが見えない我々からするとよく分からない所ではあるが、十数回の戦闘をこなした後、カナメに確認した所、現在はLV.10との事で、攻撃用魔法も習得したらしい。
その後の戦闘で、実際にその魔法を使って見せてくれたので、順調に成長出来ているのだろう。
本来、ダンジョン探索時のパーティー人数は5人以上推奨である。
しかし、さすがは初級者御用達のダンジョンという所か、2人でも問題なく対応できていた。
その日は、地下5階まで到達したところで切り上げてダンジョンを出た。
帰りの道中で聞いてみると、カナメはLV.13になり、僕はあいかわらずLV.55との事。これは、カナメのいた世界の『ゲーム』というものでは、割と当たり前で、レベルは高くなるほど上がりにくいという。このダンジョンでは、僕のレベルはそうそう上がらないのかもしれない。
そういうものなのかと思いつつ、本日の入手品を換金するために、村の冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドとは、この世界で冒険者を名乗る場合、必ず所属しなければいけないものである。
この冒険者ギルドは、どの国にも属さないという性質を持っている。
そのため、誰でも希望するものは簡単な審査のみで登録する事が可能である。
これに登録する事で、冒険者ギルドを通して、物の売買や、ギルドに寄せられた依頼等を受ける事ができるため、現状、何の後ろ盾もない僕らが旅を続けるためには、冒険者になるのが、最善だった。
ちなみに、勇者パーティーの場合、手続き無しで登録され、依頼の優先度や報酬に補正がかかるらしい。
「本日の報酬はこちらです」
受付の女性からお金を受け取る。
ダンジョン内で入手したものをギルドのレートで換金してもらう。
手数料をいくらか取られるもののダンジョン探索でお金を得るには一番ポピュラーな手段である。
――あまり深くまで探索できていないから得られる金額もそれなりですね。
本日得た金額では、1人分の1日の宿代に満たないだろう。
「少し危険かもですが、明日はもう少し下まで探索しましょうか」
「了解です」
カナメは意気込んで了承してくれたが、正直、2人という人数で、地下6階以降を進むのは危険かもしれない。
自分も冒険者としての経験はカネメと同等しかないのだが、知識としてダンジョンは、5階ごとに遭遇するモンスターの強さがはね上がることを知っていた。
この村にあるダンジョンは、最下層は地下20階で、並みの冒険者でも、しっかりパーティを組んでいれば、踏破可能という触れこみのため、初級者に最適とされていた。
しかし、それは人数が足りている前提であって、数的不利はなかなか覆せない。
今日の感じでは、自分1人であれば、あと5階くらいは行けそうな気がするのだが、守りながらだと自信はない。
――やはり、2人では限界がありますね。しかし……
ギルドでは、パーティーメンバーの募集も可能である。
しかし、今朝、冒険者登録しに行ったときに事情が変わったことが分かった。
『先日、旅立った『緑の勇者 芙蓉カナメ』をその権限をはく奪し、今後は一切国は関与しないものとする』
という文章がプルトニア国王の印付きで村の掲示版に貼られていた。
今まで、勇者が称号をはく奪された例はない。結果のみが貼りだされた事により、憶測が憶測を呼び、ギルド内での僕らの印象は最悪となった。
これでは、仲間を募ることもままならない。
冒険者達は境遇も立場も様々なため、比較的寛容ではあるのだが、誰もわざわざ国から見放された者達のパーティーに加わる者はいないだろう。ましてや、この状況でパーティーメンバーに名乗りを上げてくる奴にまともな奴がいるかという疑問も出てくる。
とりあえず、この件は現状保留にするしかないだろう。
その日は、村の食事処で夕食をとった。
所持金から贅沢は出来ないので、1番安い物を2人前頼んだ。
正直、あまり美味しくない。しかし、カナメには美味しかったらしく、喜んで食べていた。
食事後に改めて、疑問に思っていた所を聞いてみた。
「レベルが見えると言っていましたが、他に何か見えたりするんですか?」
「自分のだけですが、各能力が数値として見れますね」
「各能力の数値?」
「例えば、私の『力』は20ですね」
「それは高いんですか?」
「比較対象がないので分からないですね」
「他にはどんな数値があるんですか?」
「あとは、『魔力』、『素早さ』、『体力』、『運』、『MP』ですね」
「MP?」
「マジックポイントでしょうか? これを消費する事で、魔法が使えるようです」
『魔力』については、どこかの国では測ることが出来ると聞いた事がある。
『MP』は何となく感覚であと魔法が何回使えるか分かる事から自分達にも備わっているものなんだろう。
「数値として見えるのは良いですね」
「でも、残りの『MP』が分かる以外は使い道ないですけどね」
「成長が数値で見えるじゃないですか。個人的には羨ましいですよ」
「そうですか? まあ、分かりやすくはありますね」
そんな事を話して、その日は宿に戻った。
心無しか宿の人の目が冷たい気がする。
仕方ない。払うものは払っているから文句を言われる筋合いはない。
払えなくなったらすぐに追い出されそうだが……。
部屋に戻るとカナメは、風呂に入ってくると言って出て行ってしまった。
この宿の客室には風呂はなく、宿の大浴場を利用するとの事だった。
彼女を見送った後、僕は自分のベットに体を投げ出すと、この村でのカナメのレベル上げの進め方について改めて思案を始めた。
ダンジョン内は、外とは大きく事情が変わっている。
まず、宝やアイテムが、様々なところに生成される。それは、仮に一度誰かが手に入れたとしても、また一定時間を経過することで、またどこかに生成されるのである。
次に、ダンジョン内のモンスターという存在は、ダンジョンで生成される魔素というものが変化したもので、外にいる動物や魔物とは決定的に違っている。倒しても死体は残らず、煙のように消えてしまう。そして、その代わりに武器や道具をドロップするのである。それは必ずではないが、レアな物以外は結構な確率でドロップしてくれる。
そのため、僕はダンジョンにて、カナメのレベルを上げながらお金を稼ぐつもりであった。
しかし、今日1日探索をしてみた結果、地下5階まででは継続してこの村に留まることすら困難であることが判明した。
――レアドロップを狙うにも、運に左右されてしまうので、ジリ貧ですね。
レアドロップの確率は下の階層ほど高くなるので、どちらにしても、より下の階層を目指すしかない。地下5階までで、滞在費を稼ぐのは現実的ではない。
――とりあえず、明日行ってみてですかね。それで、ダメだったらどうしましょ……。
僕の思考は急に来た睡魔に負け、そのまま眠りに落ちた。
とりあえず、1話のみ更新致します。
次のUP時には、キリの良い所までUP出来るかと思います。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
と思っていただけましたら、下にある☆☆☆☆☆から作品への応援お願いいたします。
面白ければ星5つ、つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちで大丈夫です。
至らぬ点も多いと思いますので、ご意見、ご感想もいただけますと幸いです。
また、ブックマークいただけますと励みになります。
モチベーションも上がると思いますので、何卒よろしくお願い致します。