ことおさ……め?
ハルベルトはパーティの翌日は私に会いに来てくれた。
コトゥルニクス伯爵家に滞在する私に会いに来てくれて、ええと、私が与えられた部屋でちょっと仲良く最初は籠っていた。
大学ではなく私の部屋なのは、受講科目を申請するのはネットだからだ。
大学で貰ったパンフによると、教科書その他も選んだ授業のマスにチェックを入れれば購入できる仕組みとなっていて、私はハルベルトと並んでベッドに座って、少しだけきゅっとなって、スマートフォンのような携帯の小さな画面を覗いているのだ。
きゅっとなってチュウもしたけど、ええと、大事な授業選択のアドバイスだって受けているのだ。
彼の学部と私の学部は違うけど。
でも、でも、一般教養については教えてあげられるよ!ということだ。
私は彼のアドバイスが全く役に立たないとしても、彼の隣で彼にくっついていられるだけで嬉しいので、そこは全然問題ない。
チュウ、できるし。
問題は無かったはずだった。
登録を終わらせようと大学サイトにログインしようとしてログインできない、という事態に面するまでは。
「やっぱりだめ、か。」
「どうして私は大学のサイトに入れないのかしら。」
「アドレスなどは入学式の時に登録してあるんだよね。」
「ええ、そのはずよ。学生課の人が講堂に直々に来てくれたのよ。特別扱いで凄く気恥ずかしかった。」
「――そのことも含めて抗議もしておくか。」
結局私達は二人でくっついていられる部屋を出て、大学の学生課に向かうことにした。
このままじゃあ、私は授業を受けれないもの。
そして、大学の学生課に行き、そう、私達はこれが罠だったと気が付いた。
学籍課の応接セットには見覚えのある人物が座っていたという、つまり、真っ黒な軍服を着たカーンが私達を待ち構えていたのである。
「お前、仕事しろよ。」
「うん、だから仕事。優秀な人材を常に軍は必要としているからね、俺が講師として週一で学生に講義をするのさ。」
私も抗議してやりたい。
だが、これも仕事で、私達は義兄、義妹となる間柄なのだと、私はよろしくお願いしますと頭は下げた。
下げるんじゃなかったが!
「よし!よろしく一つ戴き!君は僕の生徒ね。講義に絶対出なきゃだめだよ。」
「え?」
「俺の講義を申し込むと約束しないと、なーんにも授業を受けれないぞ!」
「え?」
「だって君は昨日学籍登録していないでしょう。」
「え、だって、講堂にまで学籍課の人が来て登録を……。」
カーンは清々しい笑顔で私にスマートフォンみたいな端末を翳した。
私の顔写真付きの私のログインページが画面に輝いている!
「あ、あれはカーンの部下?だったの?」
「当たり!同期しちゃった。君の端末は僕の奴隷だ。そして、僕の端末から君の登録をしちゃったから、あら、どうしよう!」
「お前は!どうしてそんなことをするんだよ!」
ハルベルトは殴らんばかりにカーンに詰め寄ったが、カーンは愛の為だとフザケタ事を言い切った。
「愛だと?お前は過去の悲恋はどうしたよ!」
「あれは終わった。俺はミモザにもずっと恋をしているんだ。ようやく古い恋にはけじめをつけれた。これで心の赴くままミモザに向ける。俺にだってハッピーエンドになる権利はあると思わないかい?」
私は乾いた笑い声をあげるしかなかった。
このロリコンストーカーをどうしようか、と。




