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五十五 とりあえずは
私は私を見つめるハルベルトの瞳に、彼が私に一緒に考えていこうと伝えているのだと理解した。
結婚して閉じこもるんじゃなくて、別の道を模索したいと言った私の言葉を彼は受け入れるどころか一緒に考えてくれて、さらに一緒に考えて行こうとまで言ってくれているのだ。
大変だったら周囲の力を借りようとも。
ええ、あなたの奥さんに今日なったとしても、私は大学を通いきるつもりだし、休みの度にあなたに会いに行けるようにアルバイトだってして見せる。
ええそうよ!
エコノミークラスの席だって私は平気な女じゃ無いの!
私は壇上の婚約者に、彼だけわかるように、愛している、と唇を動かした。
「あなた。結婚式は早い方がいいかしら。」
「そうだね。鴨が逃げる前に捕まえておかなければ。」
「そうね。グリロタルパに納まっているならば心配は無いけれど、今後はミモザに会いにこっちに頻繁に来るらしいものね、彼は。ええ、カーンぐらいに素敵な外見ね。これはがっちりと囲い込んでおかないと。」
私は両隣の両親がいつもの両親で本当に嬉しいと、苦笑いするしかなかった。




