五十二 ちっこい破壊魔
居候となった私に与えられた子守という仕事。
初めましてと挨拶したミィナという名の幼女は、なんていうか、ガブリエラのミニチュア版という天使のような美少女でしか無いのだが、カーンを彷彿とさせるような壊し屋でもあった。
いや、これこそ母親譲りなのかもしれない。
部屋にある彼女の玩具は粉々に分解されており、なんと、お人形はずらりと並べられているが全て腹の部分に数字の書いてある腹巻が巻いてあり、穴が空いている所から射撃か何かの的に使ったのだろうと想像できた。
「あなたはカオルーン大学の学生さんなのよね。わたくしにお勉強を教えて下さるそうだけれど、あなたは何を教えることができるのかしら?」
とっても憎らしい物言いだが、少々ビクついている様子もあり、私は自分が子供らしくないとクラスの子達にスポイルされた過去を思い出していた。
「うーん。あなたが何を学びたいかによるわね。あなたは何が知りたいの?それが私の知っている事だったら教えてあげられるし、知らない事だったら一緒に調べましょうか。」
ミィナはうーんと子供らしく顎に手を当てて考え込み、そこで何かを思いついたのかひょいっと顔を上げて見せたが、今度は少しだけ友好的な顔つきであった。
「えと、爆弾は作れる?フレイは肥料から爆弾が作れるって言っていたわ。カーンは日常生活で手にできるものからでも簡単に作れるって言っていた。」
ガブリエラが二人を悪魔の双子呼びをする理由が分かった。
彼らは何を子供に教えているのだ。
「そうね。作れると思うけれど、爆弾は危険だから爆発するの。爆発させたい時に爆発させられるものでないと意味がないだけだから、私は爆弾を手作りするよりも軍用のシート式の小型爆弾を手に入れることをお勧めするわ。」
「そんなものがあるの?」
「ええ。あるわ。でもね、爆弾は効果的な所に仕掛けなければ意味が無いものだし、その効果も計算しておかないといけないものなの。爆弾のスペシャリストになるために、数字の計算の仕方をお勉強してみる?」
「私は二桁の計算もできるわ。」
「素晴らしい。では、三桁四桁の計算が出来る様になってみましょうか。」
ミィナはニヤリと私に笑って見せた。
「合格よ、あなた。」
「あら、光栄だわ。」




