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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第十章:魔王と決着のセレンディアグランプリ
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魔王とMAO-6C

:魔王とMAO-6C


そして、あっという間に2週間が過ぎ

その会場、GAサーキットは熱狂に包まれていた


「さあ!間もなく始まります、第一回セレンディアグランプリ!!!本日は、予選第一組のレースとなります!!!」


実況の声に湧き上がる観客席

まだ予選にもかかわらず、観客席は満員となっている


「本大会、参加チーム数はなんと120組!本来の予定を大幅に超えるエントリーの数となりました!そこで本戦の前に24チームづつ、5回にわけて予選が行われ。各予選上位4組、合計20組が決勝に進む事となります!」


実況の解説の間にも着々とレースの準備は行われ、各車スタート地点に移動していく


グォンッ!ドドドドドッ!!!


そのまま各車アイドリングを始め、後はスタートシグナルを待つだけの状態となった

そして・・・シグナルが点灯する

5秒前、4、3、2、1・・・


「「・・・!!!」」


0!!!

シグナルが全て消灯したと同時に全車一斉に走り出す!


「さあ!各車一斉にスタート!!!まずは・・・!おっと!ここでいきなり大きく加速するマシンが一台!あれは・・・!!!」


スポーツタイプの車体をベースに改造が加えられた、漆黒の車体が先頭集団に襲い掛かる!

そのマシンは・・・!


「あれは!チーム魔王軍の、登録車両名「MAO-6C・魔王号改」だーーー!!!」


ゴオッ!!!


猛然と突撃を開始する黒い影!

そのハンドルを握るドライバーは他でもない・・・!


「しゃあ!まずは先手必勝!!!」


そう、魔王号の操縦は俺自らが行う事となった

トップに出るべく、俺は更にスピードを上げる!

そして、前方の車両の隙間を縫うようにしてかわし順位を上げていった!


「くそっ!行かせるか!!」


その時!追い抜こうとした横の車両のドライバーが魔法の詠唱を開始する!そして!


「ファイアボール!!!」


ドライバーが叫んだと同時に!


ボウッ!!!


こちらに向かってかざした手の平から火球が放たれ!魔王号に向かってきた!


「・・・!」


ドオンッ!!!


回避する間もなく!高速で飛来した火球が魔王号に直撃する!

爆風に包まれる魔王号!


「おーーーーーっと!!!ここで魔法攻撃が炸裂ーーー!!!ですがこれは反則ではありません!繰り返しますが、これは反則ではありません!!」


そう、この攻撃はセレンディアグランプリのルールに則った行動なのだ


「速さだけではない!並み居るライバル達を打ち倒し自らが先にゴールする!速さと力!!これこそがセレンディアグランプリなのです!!!」


ワアッ!!!


レース開始直後の派手な展開に、観客席のボルテージも上がっていく!


「さあ!ファイアボールの直撃を受けてしまった魔王号!果たして無事なのか!?」


そう実況が叫んだ瞬間!


ギュンッ!!!


爆風の中から飛び出してきたのは!


「なんと!魔王号無傷だーーー!!!ファイアボールの直撃を受けたにもかかわらず、全くの無傷ですーーー!!!」


その実況の声に答える様に、マシン内部に搭載されていた小型のカメラが動き出す


「当然です!この程度の攻撃で、私が開発した魔王号の装甲が抜けると思わないでいただきたい!」


そう、メインドライバーは俺が担当しているが

その他様々な機能を制御する為、ギガスの端末もこの魔王号に移植してあり

ギガスの走行補正のお陰で、素人の俺でも熟練のドライバーの様にマシンを操れる

つまり魔王号は、俺とギガスの二人で操縦するマシンという事だ


「さすがだぜギガス!」

「お褒めに預かり恐悦です、魔王殿」


見た目はただのスポーツタイプ、俺が元の世界から持ち込んだ車両と大差無い

だが、中身は全くの別物だ

特にこの黒塗りの車体は、ギガスが開発した装甲材に加え

魔術的な攻撃を防ぐコーティングも施されている

魔王号の防御は完璧と言っていいだろう。そして・・・!


「さて、効いてないにしても攻撃は攻撃だな?それなら・・・!」


ガシャンッ!!!


俺がハンドル近くのボタンを押すと同時に、魔王号の車体横から銃身が現れた!


「俺はやられたらやりかえす性質なんだよ!!!」


ドガガガガガガガッ!!!


そして銃身から弾丸が連続発射される!


ガガガガガッ!ドオンッ!!!


その弾丸は先程攻撃を仕掛けてきたマシンの装甲を貫通し、エンジン部を破壊した!


「うわあああ!!!」


エンジンを破壊されたマシンは回転しながらコースアウトしていく!

そう、魔王号には攻撃手段も多数装備されている

俺が魔法を使えない代わりに、魔王号には各種重火器が内蔵されているのだ


「おおーーーーっと!レース序盤でいきなりのリタイアだーーー!!!白熱のスタート展開となりましたーーー!!!」


ワアッ!!!


実況の声と同時に、観客席からも歓声が沸き起こる!


「くそっ!あの黒いのを潰す!!!」


その時!魔王号を最大の驚異と認識したのか

他のマシンからの攻撃が全て、魔王号に集中する!


ギィンッ!!!キィンッ!!!


だがそんな集中攻撃を受けながらも、魔王号の装甲はビクともしない!


「ギガス!」

「はっ!火器管制はお任せ下さい!」

「よし!行くぜ!!!」


グォンッ!!!


俺の掛け声と同時に魔王号は更に加速!

仕掛けてくる相手を返り討ちにしながら、一気にトップまで駆け上がる!!!


「つえーにゃ!魔王!」

「余裕だにゃ~」


その後、完全に周りのマシンを寄せ付けずトップを走り続ける魔王号。そして!


「ゴーーーーーーーーール!!!予選第一組をトップで通過したのは、チーム魔王軍の魔王号改だーーー!!!」


そのまま、魔王号は単独首位でゴール

予選レースを、俺達は圧倒的な力で通過した






「よし!あとは本戦で勝つだけだ!」

「お見事です魔王様」


戻ってきた俺に、ウラム達が駆け寄ってくる


「魔王号、すごいマシンですにゃ!」

「やっぱり私が運転したかった・・・今からでも交代する?」


初勝利に沸きあがる面々

しかし、素直に喜んでばかりはいられない。何故ならば


「だけど、GAは別の組だからな。奴等に勝たなきゃ意味は無い」


確かGAは予選最終組だったはず、予選最終組のレースは明日だ

いずれ来るであろう戦いに向けて緊張感を高める俺に、アリアが心配そうに尋ねる


「GAは予選を勝ち上がってくるでしょうか?」

「まず間違いなくな・・・」


そう、本番はこれからなのだ。まだ気を緩める事は出来ない

俺はGAとの決戦に向けて、マシンの調整を行うのだった






そして、同時刻

予選レースをVIP席から観戦していた男が一人

それは、上級天使でありGAのCEOでもあるジョシュアだった


「フッ。予選は勝ちあがってきたか・・・」


その表情には余裕の笑みが浮かんでいる

魔王軍の予選突破、ここまでは彼の想定範囲内と言う事


「で、お前はどう見る?」


ジョシュアは部屋の中に居たもう一人の天使、フィーリスに声をかける


「わずか2週間でここまでのマシンを仕上げてくるなんて、さすがギガスさん・・・。いえ、さすが魔王軍です」


そう答えるフィーリスの顔は、ジョシュアとは対照的に厳しい物となっていた

GAのマシンを担当するメカニックとして、油断や慢心は出来ない

真剣勝負に挑む者の顔がそこにはあった


「ですが・・・」


そこでフィーリスは、一呼吸置いてから続ける


「天界の最先端技術を集め、私がチューンした「GA-F-01・ガーディアンエンジェル」が負ける事は、万が一にもありません」


その答えを聞いたジョシュアはニヤリと笑うと、手元のグラスを傾けた


「決勝の日、それがお前等の最後になる・・・クックックッ・・・」


勝利を確信し、その天使は残忍な笑みを浮かべるのだった

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