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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第九章:魔王と休暇と里帰り
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伝説の始まり・魔王の誕生

:伝説の始まり・魔王の誕生


そして、数日が経ち


「忘れ物はしないようになー」


あっという間に、俺達がセレンディアに戻る日になっていた


「えーっと、こっちの世界の野菜の種にソーマさまに買ってもらった服に、あとそれから・・・」

「大丈夫、問題無い・・・」


今は、それぞれ荷物をまとめて帰り支度をしている最中である

一週間程の滞在だったが色々買い込んだせいで、皆結構な大荷物となっていた

だがその中で、一人だけ手ぶらの奴が居た


「お前は荷物まとめないのか?」

「ええ、問題ありません。これで全てです」

「そうなのか?結構な量の本を買い込んでた気がするが」

「ああ、それでしたら・・・」


そう言ってウラムは、自分の頭を指差す


「全てココに入っておりますので」

「全部覚えたのかよ」


まあこいつの人間離れした行動には今更驚く事もない、人間じゃないし

俺が一人で納得していた所に、ウラムが質問してきた


「ですが、そう言う魔王様もあまり荷物が無い様に見えますが」

「ん?まあそうだな。大体必要な物はあっちにあるし」

「元の世界に来たのですから、あれもこれもと持っていきたい物が多いのではと思っていましたが」

「そうでもないぞ。あれば確かに便利だが、無いなら無いで諦めがつく」


さらりと言う俺に対して、ウラムは少し考えた後続けた


「こちらの世界に未練・・・残りたいとは思わないのですか?」

「そうだな・・・」


俺は、少し悩んだ後答える


「あの日お前に召還されて、半ば強制的に魔王させられ状況に流されまくってここまで来た。まあそれに関しては別に恨んじゃいない。楽し・・・くはなかったが、やりがいだけはあったからな。この部屋で一生腐ってるよりは、随分マシな生き方だったと思う」

「そう言っていただけると幸いです」


俺に頭を下げるウラム

だが、それに対し俺はハッキリと告げる


「だがこれからは違う」

「と言いますと?」

「これからは、俺は俺の意思で行動する。俺は俺がやりたい事だけをやる」

「では・・・」


そしてウラムは、神妙な顔になった後言った


「契約を破棄し、こちらの世界に残られますか?」

「え・・・!?」


ウラムの言葉に、側で荷物をまとめていたアリア達の動きが止まる


「おとうさんこっちに残る・・・?」

「そんな・・・でも・・・」


不安そうに見つめてくるアリア達、そんな皆に対し俺は


「んなわけねーだろ」


そう、あっさりとウラムの言葉を否定した

予想外の言葉に、ウラムがキョトンとした様子で聞き返す


「そうなのですか?では・・・?」

「俺は俺の意思で異世界に行き、俺の意思で魔王をやる。これが、今俺がやりたい事だ」

「ソーマさん・・・!」

「うん。これからもおとうさんといっしょ」

「はい!ミケも精一杯お仕えしますにゃ!」


俺の言葉に、嬉しそうな反応を見せるアリア達


「そうですか・・・」


そしてウラムも、先程の神妙な顔から普段の表情に戻る

いや、少しだけ口元に笑みを浮かべている様に見えた


「まあ俺も不思議に思ってるけどな、あんなに帰りたがってたのに」


異世界に行くまでは、この超快適空間である家で暮らす以外の人生は考えられなかっただろう

だが半年以上も手放してみると結構あっさり諦めがつく

無いのが当然になっていたせいだろうか

あんなに帰りたがっていたはずなのに、俺にとっての日常はすでにここには無いらしい


「そう言うわけだからゲートを開け、セレンディアに戻るぞ」

「承知しました、魔王様」


そしてウラムが、セレンディアへのゲートを開く

俺はそのゲートの前に立ち、ゲートをくぐろうとし・・・その途中で振り向いた


「俺の残りの契約期間は三ヶ月程しか残ってない、三ヶ月経てば俺は魔王じゃなくただの人間に戻る」


俺の言葉を黙って聞いている皆、そして


「だが契約が終わるまでは俺が魔王だ!誰にも文句は言わせねえ!お前等全員俺について来い!!!」


そう、俺は全員に向かって叫んだ!


「もちろんです!ずっと着いていきます!」

「当然、おとうさんの側が私が行く場所」

「私も、最後までご一緒しますにゃ!」

「貴方が魔王をやると言うのなら私は当然従いますよ、どこまでもお側に」

「よし・・・!なら行くぞ!セレンディアへ!」


そう言って、俺はゲートをくぐる






長い間立ち止まっていた、だがようやく走り出す時が来る


もう迷いは無い、失敗も後悔も全て受け入れた


ここからはただひたすらに真っ直ぐ行くだけ


俺が俺を貫くだけの物語だ






「俺が・・・魔王ソーマだ!!!」


そう言った俺は笑みを浮かべる、その笑みは不遜にして傲慢

世界の全てを意のままにしようとする者の顔

正に魔王になった男の顔だった

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