魔王とドラゴン
:魔王とドラゴン
騎士団演習の翌日、魔王城に帰った俺は今後の方針を考えていた
(騎士の時代の終わりか・・・)
時代の流れに飲み込まれ失われていくもの、それに抗おうとするのはただの個人的感傷に過ぎないのだろうか?
(・・・いや、今はそんな事より)
だがそれはそれとして、魔王軍の財政を立て直す為、あのヒーローショーに客を呼ばなくてはならない
俺は頭を捻るのだったが
「うーむ」
こんな時、どこぞの天才主人公ならば起死回生のアイデアでも思いつくのだろう
しかし、生憎俺は天才ではない
そこで、思いついた事をとにかく口にしてみる事にした
「とりあえずもっと派手な演出とか出来ないだろうか」
その俺の言葉にウラムが聞き返す
「といいますと?」
「もっとこう魔法でバーッ!とかドカーン!みたいな」
「魔王様・・・表現力なさすぎですね」
「うっさいわ!」
だがその時、ウラムが俺にある提案をした
「ですが、そういう事でしたらギガスに相談してみるとよいのでは?」
「あのロボ将軍か。確かにそーいう装置とか作れそうだな」
とりあえず他に妙案も浮かばない
俺はウラムの言葉に従いギガスの元へ向かうのだった
・・・という訳で、魔王城にあるギガスの私室、通称ラボに俺は来ていた
俺は早速ギガスに先程の提案について意見を伺う、すると
「ええ、作れると思います」
「ホントか!」
「魔法の爆発の破壊力はゼロに抑え、派手な演出効果のみ残せばいいわけですね」
「そうそう!そういう感じ!」
ギガスの回答は思った以上に良い物だった
さすがは開発部長、頼りになるロボだ!
しかし、そういったホログラムの様な物を作れるならばもっと・・・
「じゃあドラゴンを作れたりはしないか?」
「ドラゴンをですか?」
「本物じゃなくていいんだ。ホログラム・・・つまり一種の幻影の様な物というか」
「そうですね、不可能ではないと思いますが」
「おお!」
またもや色よい反応、と思いきや
「ですが本物のドラゴンの資料がほとんどありません」
「そうなのか?」
「はい。ドラゴンはかなりの希少種ですし、その大半が山の奥深くに隠れ棲んでいる為、滅多に見れる物ではないのです」
「そこは想像でどうにかならないか?」
「動かないハリボテくらいならともかく、幻影とは言え動かすとなるとなかなか難しいでしょうね」
「よく分らんがそういうものか・・・」
そうそう何事も上手くはいかないか、とりあえずドラゴンは諦めるとしよう
そこで俺は演出装置の作成のみを依頼しようとした、その時
「そんな魔王様に吉報です!」
「凶報の間違いじゃねーだろうな?」
ラボの入り口が開きウラムがあらわれた
「いえいえそんな事はありません。ティス」
よく見るとティスも一緒だったようだ
ウラムに促され、ティスが口を開く
「ドラゴン・・・居る」
「ほんとか!?」
「うん、ステビアの近くの山に住んでる」
「おお!」
希少種と聞いていたが、これは有力な情報だ
「ティスは様々な生物と意思疎通が可能ですからね、山の生物に伝え聞いたとの事ですよ」
「なるほど、ありがとなティス」
ティスの頭をわしわしと撫でながら礼を言う
「・・・あっ!」
・・・って反射的に頭を撫でてしまった!気安すぎだったか!?
「・・・うん」
しかし、ティスはどうやら悪い気分では無いようだ
ポリス沙汰にならなくて良かった
「にしてもステビアの近くのドラゴンか」
赤竜騎士団の話に出てきたドラゴンだろうか
全く同じ個体という事はないだろうが巣が残っていたという事か?
「資料さえあれば動くドラゴンの幻影・・・えっとホログラムを作れると思いますよ」
そう言ってギガスが何かの機械を俺に手渡す
何かよく見た様な形、ビデオカメラか?これ?
「その記録装置を渡しておきます。なるべく多くドラゴンの映像を記録してください」
「ドラゴンの撮影か。なんというか危険な予感しかしないんだが」
「まあ滅多な事をしない限り襲いかかってきたりはしないと思いますよ」
そう、俺を安心させる様に言うギガス
しかし、その時ウラムが俺に向かって言った
「ご安心を魔王様。その時は私も同行いたします」
「危険度が倍に膨れ上がったわけだが?」
というわけでドラゴン撮影をするべく俺とウラムはステビアの近くの山に向かう事となった
そして翌日
「キツイ・・・」
ドラゴン撮影の為、山に入った俺達だったが。山登りは想像以上のキツさだった
どこぞの観光スポットのように登山道のような物があるわけでもなく
俺達は木々の生い茂る森の中をひたすら上へ上へと歩いていた
「だらしのない魔王様ですね」
「元ひきこもりなめんな。というかお前らファンタジー世界の住人と一緒にすんな」
「それにしても魔王様の体力は平均的な人間の体力より低いように思われますが」
「なっ!?一応俺昔は陸上部だったんだぞ!県大で優勝した事だって!」
「と言うより、まず服装からして山登りに向いていないのでは?そういえば、魔王様の部屋から色々取り寄せた時からずっと着ていますよね、その服」
「これか?」
そう言って俺はビシッとスーツを伸ばす
「どうよ?」
「いや、どうよと言われても」
しかし、ウラムはその様子を冷めた目で見ていた
「くっ・・・このスーツの良さがわからんとは。一着50万のオーダーメイドだぞ、靴は10万した高級ブランドの革靴で」
「さっぱりわかりませんが、山登りに向いていない事はわかります」
ウラムのバッサリな意見に俺は項垂れる
(くっそう、だが確かに山登りするのに着てくるべきではなかった・・・)
過酷な山登りの結果、50万したスーツは汗と泥で汚れきっていた
異世界にクリーニング屋はあるだろうか?
俺は息を切らせながらビデオカメラを片手にひたすら森の中を歩いていく
そして、数時間後
「どうやらここのようですね」
俺達は山間にある洞窟の入り口にたどりついた、慎重に中を伺う
洞窟はさほど奥行きはなく、入り口からすぐの場所が広い空間になっているのが見えた
そしてその中央に・・・
「居た!あれがドラゴンか」
「ええ、そのようです」
洞窟の中央で丸まっている巨大な生物
大きな翼に強靭そうな爪、鱗に覆われた皮膚はさながら鎧のようだ
爬虫類の様な口とそこから見える牙、そして頭の二本の角
うん、まさしくドラゴンだ
「どうやら眠ってるみたいだな」
「そのようですね。とりあえず撮影を開始しましょう」
俺はギガスから渡されたビデオカメラのスイッチをオンにすると、ドラゴンの撮影を開始した
そして、撮影開始から更に数十分後
「・・・動きませんね」
「・・・動かないな」
ドラゴンは洞窟の中央で眠ったまま一向に動く気配がなかった
俺はウラムに質問する
「これで撮影OKだと思うか?」
「まあ駄目でしょうね、もっと動いてる所を撮らないと意味がありません」
「とは言っても・・・起こしたら襲い掛かって来そうだしな」
「ふーむ。何か策を考えなければなりませんね」
さてどうしたものかと考えていた所に、ウラムが名案を思いついたといった調子で言った
「そうだティスに頼むというのはどうでしょう?」
「ティスに?」
「ええ。ティスは言葉の通じない魔物とも意志を通わせる事が出来ます、ですのでティスを通じてドラゴンにお願いして色々な動きを撮影させてもらうのです」
「おお!」
オー!グドアイディア(Oh! good idea)!
ウラムにしてはなかなかに素晴らしい案だ!
「よしその案でいこう!」
「分かりました。では私がティスを連れてきましょう、空を飛べば魔王城まですぐです」
こいつ空飛べたのか、ここまでの苦労は一体・・・
まあ今はそれより
「なるべく早く頼むぞ」
「なるべく早くですか?」
「他のモンスターが襲い掛かってくるかもしれないからな。俺一人じゃどうしようもできん」
「魔王様がそう仰るのであれば、この暴嵐のウィズ=ウラムの本気の速度を見せるとしましょう」
「・・・何だって?」
ウラムがそう言った直後!大気が揺れ、魔力のような物がウラムに集中し始める!
それは発射直前のロケットか、もしくは爆発寸前の爆弾を思わせた!
「ってヤバイヤバイ!待て待て待て待て!!!」
慌ててウラムを止めようとする俺!こんな所でそんな事をしたら!!!
だが!!!
「ウラムジェット!!」
ウラムがそう叫ぶと同時に轟音が轟く!!!
ドオォォォォォンッ!!!
そしてウラムは一瞬で遠くの空に消えていった・・・
「・・・えーっと」
残された俺はそーっと洞窟の中を伺う
「・・・・・・あ」
「・・・・・・グルゥッ」
その時、丁度俺とドラゴンの目が合った
・・・・・・・・・
お互い見つめあったまま数秒、そして!
「あのAHOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
俺は脱兎のごとく走りだした!!!