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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第八章:魔王と魔王城再開発計画 湯煙編
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魔王と制御不能の轟炎

:魔王と制御不能の轟炎


ソーマ達が温泉で羽根を伸ばしていたその頃

時を同じくして、メルヒェンス山の火口に一つの影があった

六枚羽根の天使、ジョシュアである


「チッ、上級天使の俺がわざわざこんな事を・・・」


本来こんな仕事は下位の天使が行うべき仕事であり

上級天使の自分が手を患わせられる事態は、彼にとって屈辱とも言える物だった

とは言え、上の立場からすればこの作戦に大きく人員を回すわけにもいかないのだろう


(今回の作戦はあの方が強引に推し進めている物だ、天界のルールからすれば限りなく黒に近いグレー)


その様な作戦を、大規模な人員を使い表立って行うわけにはいかない

あくまで内密に、最少人数で最大の効果が求められる

だからこそ自分が駆り出されたという訳なのだが


(つまりはいつも通りの汚れ仕事・・・不満は無いがね)


ジョシュア・レドヴァインという天使は、上級天使の中でも異質なカテゴリーに属している

天使以外の存在を虫けら同然に考えている潔癖とも呼べる程の異常な排他主義

更に、天使の中でも特別際立った暴力性の持ち主でもある

六枚羽根というエリートであったにも関わらず、これらの性質から彼が天界という組織で優遇される事は無かった

だが時として、その性質が求められる非公式な場も存在する。それがジョシュアの現在の立場

「悪」を断罪し粛清を行う裏の機関、その実働部隊長が彼だ


「何か使えるかと思ったが、これは駄目だな・・・この火山は完全に死んでやがる」


火山を噴火させれば奴等の拠点を潰せるかと思ったが・・・

だがその時、ジョシュアはわずかな違和感を見つける


「これは・・・?」


そう呟いてジョシュアは火口に向かう

そして、その体がマグマの中に沈んでいく。しかし


「やはり幻覚か・・・」


そう、火口に見えていたマグマは本物ではなくただの幻覚だった

そしてジョシュアはその下、本当の火口へと降りていく。そしてそこにあったのは・・・


「なんだコレは・・・?なんでこんな物がここに・・・?」


本来こんな場所に在るはずのない存在、目の前のソレに疑問を抱くジョシュア

だがすぐに、彼の顔には笑みが浮かぶ


「だが、コイツを使えば・・・クックック」


そしてジョシュアは、次なる作戦の行動を行うのだった






そして、その頃

温泉旅館の廊下を歩く3人の猫娘の姿があった


「ふいー、いい湯でしたにゃ・・・」

「城のすぐ近くに温泉を作るなんて、あの魔王もたまにはいい仕事をするにゃ」


そして3人で談笑をしながら廊下の角を曲がった先、その視界に入ってきた物は


「お・・・ぐぅ・・・」

「・・・うぅ・・・」

「・・・うにゃぁ・・・」

「皆さん!ちゃんと聞いてますか!?」


正座させられたままアリアに説教を食らっている、俺とティスとミケの姿だった

その罪状はもちろん、俺の女湯への侵入及びその原因を作った罪だ


「にゃ?まだやってたんだにゃ?」


風呂上りのウナ達が遠目からその光景を見ながら言う

俺が意識が戻ってからかれこれ一時間程ずっと正座のまま、いい加減足の感覚も無くなってきた頃だ

だがその時、ようやく助け舟が入る


「皆さん、そろそろ会議を始めますよ。アリアさんもそれぐらいで」


俺達を呼びに来たウラムの言葉に、アリアは渋々従う


「そうですか・・・じゃあ仕方ありませんね。みなさん!ちゃんと反省して下さいね!!」

「・・・はい」

「ごめんなさいですにゃ・・・」


そしてよろよろと立ち上がる俺達3人、ウラムが俺を助け起こしに来る


「災難でしたね、魔王様」

「お前・・・こうなるのが分かってて逃げやがったな」

「さて、何の事やら?」


あの時、俺を残して早々に温泉から撤退したウラムは

それを糾弾する俺の言葉に、すっとぼけた笑みを浮かべていた

その後、旅館の大部屋に魔王軍の全員+フィーリスが集まり


「うーし、じゃあ会議を始めるぞー。とりあえずスキーはどうだった?」


そう、部屋に集まった全員に対して俺は告げた


「慣れるまで大変かもしれませんが、それも含めて楽しいと思いますよ!」

「ボードの方もなかなか良いのではないかと」


そう答えるアリアとウラム

他の幹部達の意見も好意的な物が多い、とりあえずスキーは好評の様だ

さて、それでは仮にスキー場の建設を行うとなるとだが・・・俺はギガスに意見を求める


「スキーやボードの量産についてはどうだ?」

「素材の調達に関しては問題ありません。構造に関してはまだまだ改良の余地はあるかと思いますが」

「致命的な欠陥なんかがあるわけじゃないんだろ?普通に遊べるなら問題ないさ。それじゃあ、リフトやなんかの建設だが・・・」


そして建設にかかるコストや日数等について話し合っていく

そんな俺達の様子をフィーリスが興味深そうに眺めながら呟く


「皆さん、ただ遊んでただけじゃないんスね・・・」

「そりゃそうだ。温泉もスキーも商売にならないと意味無いからな」


プルルルルル・・・


その時、フィーリスの端末が呼び出し音を鳴らした


「あ、すみません。ちょっと席外しまスね」


そう言って部屋を出て行くフィーリス

俺達は更に詳しい話をする為に会議を続けていた、その時


「それで次の議題について・・・デ・・ス・・・」


突然、ギガスの様子がおかしくなった

目の代わりのカメラがせわしなく動き、発していた言葉が途切れ途切れになる


「ん?端末の故障か?」

「ギガスの端末が故障・・・?まさか、これは!」


そのギガスの様子から何かを察するウラム、その時


「キンキュウジタイ・・・フウイン・・・」


ギガスが何やら呟く、さらに


「セイギョフノウ・・・シキュウタイヒ・・」


ブツッ・・・


そう言ってギガスは、電源を切ったように動かなくなった。その時!


ドオォォン!!!


突然!激しい揺れが俺達を襲った!


「な、なんだ!?地震か!?」

「にゃ!にゃあ!!!」


突如として起こった大きな地震!

そしてその揺れは数分続いた後、ようやく収まった


「どうやら収まったみたいだな・・・」


ホッと胸を撫で下ろす面々、だが


「いえ、これは予兆にしか過ぎません。本番はこれからです」


どういう事だ?俺はウラムに問いかける


「予兆?ギガスの事といい、何が起こってるんだ?」


そして、ウラムはいつもとは違う真剣な口調で告げた


「端的に起こる事実だけを述べるなら・・・あと数時間もしないうちに、メルヒェンス山が噴火します」






メルヒェンス山の噴火

ウラムが告げた言葉により、突如として緊急事態を迎えた魔王軍


「噴火って!どういう事だ!?」

「申し訳ありませんが詳しい説明をしている時間はありません。まずは事態の対処を考えるべきです」


焦る俺に対して冷静に告げるウラム、その言葉に俺も落ち着きを取り戻す


「ああ・・・そうだ、そうだな」


そして、俺は深呼吸を3度繰り返し


「メルヒェンス山が噴火した場合の被害は?」

「まあ、見ての通りの一面の荒野ですから噴火した所で大した被害はありません。我々魔王軍と、魔王城を除いてですが」

「魔王城の被害予測は?」

「飛来する岩石、及び噴出すマグマに飲み込まれ、跡形も残らないでしょうね」

「そんな!」


ウラムの被害予測を聞いた俺は今後の対応を考える


「噴火を止める手立ては?」

「ありません。正確には手段ではなく、時間が足りないと言うべきでしょう」


だとするなら取れる手段は二つに一つ、逃げるか迎え撃つかだ。しかし・・・


(あまりにも無謀だ・・・リスクが大きすぎる・・・)


俺が選ぶのは・・・


「魔王城を放棄する・・・それしかない」


迎撃ではなく撤退

つまり、魔王城の放棄だった


「・・・!?」

「この城を!?」

「・・・」


魔王軍唯一の拠点である魔王城を失うのは痛い、俺達にとってかなりの痛手と言えるだろう。だが


「命あっての物種だ。たとえ城を失っても、生きてさえいれば再起は出来る」


そう、この状況で守るべきは城ではなく皆の命だ

それだけは失うわけにはいかない


「・・・魔王様がそう判断されるのであれば」


苦渋の決断を下す俺に従うウラム

そして、俺が全員に退避命令を出そうとした・・・その時


「私は・・・反対です」


アリアが小さく、だが決意を込めた声で言った


「アリア、言いたい事も気持ちも分かる。だけど・・・」


俺はアリアを諭す様に告げる、しかし


「いいえ!分かっていません!」


アリアはそう大きな声で反論し、そして俺に向かって言った


「私は魔王城に住み始めて半年程しか経っていません、それでも!魔王城には色んな思い出が詰まっているんです!私だけじゃありません!魔王城はみんなの思い出が沢山詰まった場所なんです!それを捨てるなんて出来ません!!!」


そう真剣な眼差しで告げるアリア

もちろんアリアの言い分も正しいのは分かる、それでも・・・


「それでも命の方が大事だ!俺は魔王として全員の命を危険に晒すような決断は出来ない!!!」


俺はそう叫ぶが、アリアは一歩も引かず言った


「命は大事です!でも魔王城に詰まっている思い出も命と同じくらい大事なんです!!そして私はこれからも今日みたいな思い出を一緒に作って行きたいんです!あの城で!!!」


アリアの決意は固い、しかし・・・


「だが・・・城を守る手段は・・・」


そう言う俺に対して、アリアはゆっくりと言った


「大丈夫です、ここには勇者わたしが居ます。そして他のみなさんも居ます、私達に出来ない事なんてありません!だから・・・命令して下さい!」

「命令・・・?」


俺は周りを見渡し全員の目を見る

皆が俺の言葉を待っていた、「その命令」が下るのを待っているのだ


(そうか・・・だとするなら俺が取るべき行動は・・・一つしかないな)


アリアの言葉に目を伏せて考える、そして俺は皆に向かって静かに問いかける


「全員、覚悟は出来てるんだな?」

「はい!」

「私もアリアちゃんと同じ気持ちです!」

「大丈夫・・・失敗はありえない」

「まあ、無茶はいつもの事ですしね」


皆のその言葉を聞き俺も、覚悟を決める

相手は最大規模の自然現象、それに立ち向かうなんて考え自体が無謀

だがそうだ、こんな当たり前の事を俺は忘れていた


(そうだ、たとえ相手が何であろうと俺達なら!)


だったら!もう悩むのは止めだ!


「さあ!命令して下さい!ソーマさん!」


俺は顔を上げると、全員に向かって大声で叫ぶ!


「方針変更だ!魔王軍の全力を挙げて魔王城を防衛する!噴火だろうと何だろうと俺達の力で返り討ちにしてやる!!!」

「「了解!!!」」


そして俺達は、一丸となって噴火に立ち向かうべく行動を開始した

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