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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第八章:魔王と魔王城再開発計画 湯煙編
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魔王とダウン追い討ち

:魔王とダウン追い討ち


「はああああああああああああ!!!???」


温泉の男湯にソーマの叫び声が響き渡ったその時

壁の向こう側では


「にゃ!?」


その声に驚き、反射的にお湯の中に身を隠すミケ

他の皆も男湯の方を見ながら話す


「ん?おとうさんの声」

「あっちも何か話してるんでスかね?」

「ミケちゃん大丈夫ですよ。声が聞こえたのは、壁の向こう側からですから」

「つい思わず・・・」


その時、フィーリスの脳裏に一つの疑問が浮かび上がった


「そう言えば皆さんって、魔王さんの事どう思ってるんでスか?」


フィーリスがそう言った直後


「にゃ!?どうって・・・!!!それは・・・!!!」


そう言って、温泉で火照った顔をさらに火照らせるミケ

フィーリスはそのミケの態度で全てを察する


「まあ、ミケちゃんはもう分かったっス。他の二人は?」


続けて、アリアとティスの方へ質問するフィーリス


「ソーマさんですか?良い人だと思いますよ」

「おとうさんは良い人」

「ああ、えっとそういうのではなくて・・・」


色々な意味であっさりとしすぎた答えに、困り顔を見せるフィーリス

その質問の意味を、なんとか言葉を濁しながら説明しようとするが

アリアとティスは、キョトンとした顔で首をかしげるだけだった


(これは・・・脈があるのはミケちゃんだけっスかね)


そこで、フィーリスは少し違った切り口から攻める事にする


「じゃあ、変な意味じゃなくて。純粋に魔王さんってどんな人っスか?」

「ソーマさんがどんな人か・・・ですか?」


その質問に考え込む三人、彼女達から見たソーマという人間は


「正義感が強くて」

「真っ直ぐで」

「優しくて」


割と高評価・・・


「いつも仕事の事ばかり考えてて」

「お金が大好きで」

「ちょっと・・・じゃなくて、かなり鈍感で」


と思いきやダメな所も多々ある様子

3人は他にも、色々とソーマを表した感想を言葉にしていくのだが


「・・・なんかまとまりが無いっスね~。多重人格者みたいになっちゃってるっス」

「おとうさんも私と一緒だった?」

「違いますよ~」


どれもソーマを表している様で、どこか違う様な言葉

そんな言葉を聞きながら、アリアはソーマについて考えていた事を話し始める


「ソーマさんはこう・・・自分の本心を見せたがらない人の様に思えます」

「本心を隠してる・・・っスか?」

「正義感があって真っ直ぐで優しい。けどそれは、ソーマさんの本当の心の底では無い様に見えるんです」

「じゃあ、本心では何を?」

「それは分かりません。ソーマさんはそれを見せないように、いつもどこか一線を引いているみたいで」


ソーマが隠している、彼の本当の心の底に秘めた物

誰にも見せていない本心


(もしそれが邪悪な考えだったなら、その時は・・・)


宇宙の秩序を守る為、自分は行動しなければならない


(もしそうなった時、自分は迷い無く引き金を引けるのだろうか・・・)


真面目な顔で考え込むフィーリス

だがアリアは、そんなフィーリスに向かって


「でも大丈夫です。ソーマさんはいざって時は絶対に仲間を見捨てない人です」


笑みを浮かべながらそう言った

ミケとティスもそれに同意する


「にゃ!そうですミケの事も助けてくれましたし!」

「私もおとうさんに助けられた」

「そうなんでスか?」

「はい、だから・・・」


そしてアリアは、自信を持った表情で言い切った


「私達はソーマさんを信じています!」


その言葉に、三人の顔を見回すフィーリス

ティスとミケも同意見だとその表情が告げていた


「そうっスね・・・はい、参考になりましたっス!」


フィーリスはそう、晴れ晴れとした表情で言った






そして、引き続き女子トークが続く女湯


「それにしても参考になったって・・・まさか!フィーちゃんもソーマさまの事を!?」

「え?それは無いっス」


そんなとりとめもない話をしていたその時

ティスがいきなりスッと立ち上がった、アリアがその背に声をかける


「ティスちゃん、もう上がるんですか?」


湯から上がったティスは温泉の入り口に向かって歩いていき、そしてその途中で一言


「おとうさんの所に行く」


と告げて去っていった

ピシャリと温泉の入り口のドアが閉まった音が鳴り、しばらくして・・・


「「えっ!!!???」」


とアリア、ミケ、フィーリスの声が女湯に響き渡った






そして、男湯の方では


「・・・!(キュピーン!!!)」


何かを察知するウラム

それに気付いた俺はウラムに質問する


「ん?何かあったか?」

「いえ、なんでもありません。面白い事が起こる予兆を感じ取っただけです」


面白い事?コイツが言う面白い事って大抵ろくでもない事の気がするんだが

だが俺が考え込む間も無く、ウラムは湯から出る


「では私はそろそろ上がるとしましょう。魔王様はどうぞゆっくりしていって下さい」

「・・・?おう」


そしてウラムが去っていき、一人残った俺は温泉でゆっくりしようと体を伸ばす


ガラッ


その時、入り口のドアが開く音が聞こえた


(ウラムが戻ってきたのか?)


そう思った俺の耳に聞こえてきたのは・・・


「おとうさん居る?」

「ティス!!??」


それはティスの声だった!


(って何でだ!?)


思わず返事をした俺の声を聞いてこっちに近づいてくるティス

何故かやたらと濃い湯煙のせいでハッキリとは見えないが、ティスはハダカの様に見える


(いや、そりゃ温泉なんだからハダカに決まってるだろ・・・ってそんな問題じゃねえ!!!)


これはマズイ!ポリス案件だ!!!

今度こそ懲役か!?もしくは!!!



ポリス「ロリコンだ!!撃ち殺せーー!!!(ズキューン!!!)」



なんて事になるかも!?

顔を青くした俺は叫ぶ!


「ティス、こっちに来たら駄目だ!!!俺の懲役がポリスでヤバイ!!!」


幸いまだ距離もあるし、湯気のせいでティスのハダカは覆い隠されている!

なんとかして、このままティスに帰ってもらう他無い!


「何か問題?」


だが、ティスを俺の意図には気付かずそのまま近づいてくる!

そしてその時!


ヒュッ


っと冷たい一陣の風が吹いた

その風はティスの体を覆っていた湯気を払い、そして・・・


(あ、終わった・・・)


俺の視界にティスの一糸纏わぬ姿が・・・


「うにゃあああああああああああ!!!!!」


だがその直前!

どこからか現れたミケが咄嗟にティスの体にタオルを巻いた!


「・・・ん?」


タオルを巻いた姿でキョトンとするティス、そして俺とミケは


「「セーフ・・・」」


二人で安堵のため息をつく

どうやらポリス沙汰は避けられた様だ


「サンキューミケ、お陰で助かっ・・・」


そこまで言いかけた所で、俺の視界にそれが映った


「いえ、お役に立てて何よりです・・・ってどうしました?」


その時、ミケも自分の体の違和感に気付く


「・・・・・・」


そう。ミケのお陰でティスのハダカは隠され、ポリス沙汰は回避された

ミケが咄嗟に「自分が巻いていたタオルを」ティスに巻いたお陰で・・・だ

つまり、今がどういう状況かと言うと・・・


「にゃ・・・にゃ・・・!!!」


顔だけでなく、足の先から全身真っ赤になっていくミケ。そして!!!


「ギニャアアアアアアアアアアアア!!!!!」


そう叫び右手を振り上げるミケ、その右手に魔力が集中し巨大な猫の手を形作る!

そして!その巨大な猫の手を横に振り払った!!!


ゴウッ!!!


「ぐえ!!!」


その手の直撃を食らい吹っ飛んでいく俺!


ガシャーン!!!


そして温泉の壁をぶち抜いて吹っ飛んでいく!


「おぐっ!!!」


そして地面に叩きつけられる俺


「ぐっ・・・おおおおお・・・」


痛む全身に耐えながら俺は目を開ける

だが、また湯気か何かでよく見えない


「魔王さん!?大丈夫っスか!?」


その時フィーリスの声が聞こえてきた、ってまさかここは・・・!

同時に湯気でよく見えなかった視界が晴れていき、俺の目の前にあったのは


「・・・・・」

「あ・・・・」


目の前のアリアと目が合う

二人ともタオルすら身に着けていない状態で身動きも出来ず固まる

その傷一つ無い白い肌に、俺の視線は吸い寄せられ動かす事が出来ない


・・・・・・


それは数分か、それとも一瞬の事だったのか

だがしばらくして


「・・・!!!」


状況を把握したアリアの顔が赤くなったかと思うと!


キィィィィィンッ!!!


同時にその左目も赤く輝き始めた!

アリアが握った拳がわなわなと震えている、これはマズイ!!!


「いや、待てアリア!これは事故で!!!」


俺は必死に釈明しようとするが!


「問答・・・!!!」


そしてアリアは、倒れている俺に向かって拳を振り上げると!


「無用です!!!!!」


ドガァッ!!!


俺の顔に向かってその拳を放った!


(理不尽・・・いや、当然の報いか・・・)


そしてその一撃で、俺の意識は一瞬で途絶えたのだった

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